先日、海外掲示板に立てられていたトピックから「モリーニさんにグリップカスタムしてもらった話」を紹介しました。元のトピックでは、パテ盛りに使われているパテはどこのメーカーのどんな成分のものなのかといったことについてもいろいろと情報がやり取りされていましたが、翻訳ではそこらへんは省き、グリップの形や、手に合わせるとしたらどこを基準にするべきなのかとか、そういう話をメインに紹介しました。
今回は、その省いた部分、つまりパテのメーカーや成分についての話をメインに紹介したいと思います。本当なら、「同等製品を日本で手に入れようとする場合は、どの製品が適しているか」といった部分まで合わせて紹介したかったのですが、うまい具合に「コレ」と言える製品が見つかりません。
私一人で探すのにも限界がありますので、もしこれをご覧の方でパテとか充填剤とかの業界に詳しい方がいらっしゃいましたら、「そういう条件ならこの製品が適しているんじゃないか?」という情報をお寄せいただけると助かります。
ホンモノのチェザーレ・モリーニにグリップを改造してもらった
The real Cesare Morini and his grips
- このディスカッションは非常に興味深いです。もちろんUPされている写真も。どなたかが私を助けてくれることを願って、一つ質問をさせてください。
私はLP10を所持しています。グリップは「スタンダード・ラージ」です。ここにUPされている写真を見たのですが、自分の銃のグリップの上部にある後方(サイトよりも後ろ)に伸びている「舌」のような部分が、写真にあるものに比べると随分と短いことに気が付きました。
他の部分ならば盛ったり削ったりして変更できますが、この場所をどうやって延長したらよいかが分かりません。単にパテを盛っただけでは、多分すぐに壊れてしまうんじゃないかと思います。小さなスチール製のプレートを使うとか、ドリルで穴を開けてスチール棒を埋め込んで骨にするとか、あるいは新しいグリップを購入するべきなのでしょうか?
もちろん、一番良い方法はイタリアまで行くことなのでしょうが、まずは私は自分でなんとかしてみたいのです。(ノルウェー)
- テール部分の延長は、カットした木片をロックタイトを使って接着していました。具体的には、ひとつまみの木粉にロックタイトを少量加えて混ぜたものを接着剤として使用していました。
グリップの形状変更に使っていたパテは2剤を混合して作るウッドエポキシ(訳者注……実はエポキシではなくポリエステル系のパテだということが後ほど判明して訂正されます)です。「Industria Chimica Reggiana」という製品名で、すでにこの掲示板でもいくつかのレビューが投稿されていたと思います。イタリアでは非常に安く手に入りますし、非常に頑丈です。(ドイツ)
- ちょっと訂正というかはっきりさせておきたいのですが、「ロックタイト」というのはブランド名であって、特定の製品を指す名称ではありません。青色のロックタイトは一般的に低強度のネジ止め剤として使われていますが、もちろんそれ以外にも多種多様の「ロックタイト製の接着剤」が存在します。
しかしチェザーレが使用しているのは、北米では「Krazy Glue」というブランド名で知られているシアノアクリレート(CA)系接着剤です。ロックタイトと呼ばれているネジ止め剤とは全く関係がありません。
このCA系接着剤のうち最高グレードのものは、「Lee Valley Tools」などのアウトレットで「Hot Stuff」という名前で販売されているので私にとっては馴染み深いものです。競技用ピストルのグリップのように油系広葉樹の素材を少ない面積で強固に接着するという目的においては、ロックタイトブランドの接着剤よりも適しています。少なくても私の場合は失敗が格段に減りました。(バンクーバー・カナダ)
- 北米での事情について、情報をありがとうございます。
私は「ロックタイト」という言葉を、イギリス的な意味で使ってしまいました。こちらには数え切れないほどたくさんのロックタイト製品があります。緑色(おそらく、あなたが青色と呼んでいるものでしょう)のネジ止め用ロックタイトも私のラボにあります。赤色のネジ止めロックタイトは非常に強固なネジ止め剤で、これを使ってしまうとネジを外すには破壊する以外の方法がなくなってしまいます。
チェザーレが使用していたものには400いくつかのナンバーが付いていたと思います…。ちょっと記憶がはっきりしないのですが、確か「401」か「402」だったと思います。ロックタイトのWebサイトにはとても詳細な製品説明がありますので、どんな目的であろうが適切な接着剤を見つけることができると思います。(ドイツ)
- >パテは2剤を混合して作るウッドエポキシです。
ちょっと興味があるので教えてください。モリーニ氏はあなたの手でエポキシをモールドする際に、あなたの手になにか塗るとか被せるとかしましたか? それとも素手のままで成型中のエポキシに触らせられたのですか?(イタリア)
- 彼は、私にはハンドクリームを渡してくれましたが、自分は何も使わずに素手のままエポキシに触っていました。(ドイツ)
- あらためて、どういった素材が使われているのかチェックしてみました。以前にエポキシだと書きましたがそれは間違いで、ポリエステルベースのものでした。(ドイツ)
- それは、木製品のリペアに使われる「stucco per legno」という製品です。全く同じものがモリーニブランドで販売されていますが、価格は3倍です。(スイス)
- スイスの人が言うことが正しいと思います。
「Industria Chimica Reggiana」の「SPRINT S30/S32/S33」について、スペックはこんな感じになっています。「ポリエステル2剤式、ウッドファイバー入り」これはウッドファイバー入りポリパテとしては数少ない製品の一つです。イタリアでは比較的安価に手に入るようです。(ドイツ)
グリップ後方のテール部分を継ぎ足し延長するために使ったのはアロンアルファで間違いなさそうとして、問題はパテ盛りに使ったパテの方です。やり取りを見ている範囲では、「木製品のリペアに使うポリパテ」というのがどうやら正解のようです。
以前から当ブログで「グリップのパテ盛り用」としてオススメしているのは、コニシのウッドエポキシです。こちらは製品名のとおり、エポパテ(エポキシパテ)です。一方、記事内でオススメされている(そして実際にチェザーレ・モリーニさんも使っている)のはポリパテ(ポリエステル系のパテ)のようです。
エポパテとポリパテの違いはいくつかありますが、ここで重要になる要素は3つあります。
- 固まる前の固さ(柔らかさ)
エポパテは「柔らかい粘土」といった感じ。そしてポリパテは「少し固めのペースト」といった感じです。ポリパテのほうがずっと柔らかいんですね。エポパテは、指で少し形を作った状態で盛り付けるという作業になりますが、ポリパテは指に少しとって対象になすりつける作業になります。 - 硬化するまでの時間
これは製品によっても異なりますが、基本的にポリパテのほうが早い傾向があります。エポパテは40~50分くらいで固まり始め、6時間ほどすると完全硬化します。ポリパテは20分くらいすると固まり始めて、1時間もすれば完全硬化します。ポリパテのほうがずっと作業効率が良いんですね。 - 固まってからの削りやすさ
エポパテのほうが遥かに頑丈です。これはもちろん製品としては利点の一つではあるのですが、そのおかげで固まってから削るのが少し厄介になるという問題があります。ナイフやヤスリを使っても表面の薄皮を剥いでいくみたいな感じでないと削れません。ポリパテはずっと簡単にサクサク削れます。
こうやって比較してみると、「グリップ改造用のパテ」ってことならポリパテのほうがエポパテよりも適しているように感じます。トピック内で紹介されているような、木製品リペア用のポリパテなんてものが販売されていたら、それこそまさに最適なのですが……。
というわけで、モリーニさんが使っている「ICR S30/32/33」と全く同じものというのは、ちょっと日本では手に入りそうにありません。海外通販してそうなサイトも見つからないので、業者として直接メーカーにコンタクトとって仕入れるとか、そのくらいの覚悟が必要かも……。