前回、前々回と、ワルサーを妙にけなすような内容になってしまいました。特に前回の「ワルサーvsモリーニ」では、「ワルサーのAPを使っているトップ選手なんかほとんどいない」とか言い放つドイツ人まで現れて、もうワルサーの立つ瀬がないような状態になる始末です。
ただ、前回のエントリーからは敢えて省きましたが、その「ワルサー使うトップ選手はほとんどいない」という発言には、何人もの人から反論がありました。そのやり取りの中で、「ワルサーの良い所」も少し見えてくる要素がありました。
今回はワルサーの雪辱をかけて、前回省いた「ワルサー使いの有名選手」についての話題をピックアップしてみたいと思います。
ワルサーLP400 vs モリーニ
引用元:Walther lp400 vs morini (TargetTalk)
- いま、新しいエアピストルを買おうといろいろ情報を集めているんですが、モリーニとワルサーLP400を使っている方、どんな感じなのか教えて下さい。(アメリカ・フロリダ)
→トップシューターの中に、LP400を使ってる人がほとんどいないって時点で答えは明らかだと思いますが。(ドイツ)
→>トップシューターの中に、LP400を使ってる人がほとんどいない
ロシアの「Vladimir Isakov」は、LP400アルミニウムで栄光を掴みました。写真は昨年のWCファイナルです。(ニュージーランド)
写真引用元:www.issf-sports.org
- →ウラジミール・イサコフがLP400をもって達成した偉業は、我々のような一般人にとってはほとんど意味のないことです。何年か前に「Nestruev」がBenelli Kiteで撃ったタイトルのほうがずっと多いくらいですし。(アメリカ・ニューハンプシャー州)
【Photo】GettyImages
- →>トップシューターの中に、LP400を使ってる人がほとんどいない
ウラジミール・イサコフはLP400でWCF2015を勝ちました。年間を通じてコンスタントにメダルを獲得しています(他のシューターの60%強がステイヤーを使っている中で)。
「Zongliang Tan」もLP400を撃っています。2012年からしばらくの間、競技の世界から離れていましたが、昨年復活してミランWCにて銀メダルを獲得しています。
GUOも短期間ですがLP400を撃っていたことがあります。2012年前後にメダルを獲得していたのが記憶にあります。
LP400の使用率の低さから考えれば、勝利数はずいぶんと高いように思えます。私はLP400を撃ったことはありませんが、同じ技術を使って作られたワルサーのエアライフル(LG400)が非常に良い出来だということは知っています。現時点でのエアライフルの世界記録はワルサーによって撃たれたものです。
ドイツでは、ワルサーは非常に人気があります。モリーニは見たことがありません。
LP400だけでなく、前期モデルになるLP300XTも数多くのメダルを獲得しています(Ekimov、Zlaticなど)。(国籍不明)
画像引用元:RecordChina
- →Tan選手についてですが、彼にとって最後のオリンピックに参加したときに彼は41歳、引退の時期でした。14歳のころから27年間も……とても長い期間、競技を続けていたことを考えれば、もっと早い時期、アテネ五輪後に引退を考えていてもおかしくなかったと思います。
彼が射撃をしているところの写真がちょうど手元にあるのですが、ステアーを使用しているようです。(国籍不明)
→Tan選手は使用銃をLP10からLP400に変更しています。
この動画(2012WCミラン)では1位
この動画(2012WCファイナル)では2位
この動画(2012WCミュンヘン)では2位
彼は、2012年をLP400でもって支配しました。
私は、ここの人達が、ISSFイベントのファイナルに残るのにどれだけのパフォーマンスが必要なのか、ちゃんと理解しているのか疑問に思います。
彼は、残念ながら現在は競技を終えてしまっています。ただこのことは、あなたがLP400を手にして世界の舞台で勝つことは十分に可能だということの証拠です。(国籍不明)
→>あなたがLP400を手にして世界の舞台で勝つことは十分に可能だということの証拠
いいえ、あなたが提示した事実によって示されているのは、世界的なトップシューターは何を使っても勝つことができるということだけです。(アメリカ・ニューハンプシャー州)
→>世界的なトップシューターは何を使っても勝つことができる
それはちょっと真実とは言いづらいものがあるのでは。確かに、世界で戦うエリートシューターの方々はまるで「どんな銃を使っても」我々よりは優れた点を撃つでしょう。ただそのことは、ワールドカップにおいて「どんな銃を使っても」勝てる、という言葉とはずいぶんと異なる意味を持つと思います。
使用する銃はとても重要です。その点において、LP400は最高のものの一つに分類されるでしょう。「遅れてやってきたジョニー(※)」としての不利な点はありますが、トップシューターにとって、ステイヤーやモリーニではなくこの銃を選ぶことが誤りになるとは思えません。(オーストラリア)
※訳者注……Johnny come lately(遅れてやってきたジョニー):「新参者」とか「新米」って意味の慣用句らしいのですが、なぜわざわざここでこんな妙な言い回しをしたのかがどうもわからないので敢えて直訳にしてみました。
- ワルサーは、現在上り調子です。
つい先日にブラジルで行われたワールドカップのファイナル(2016年4月16日)で3位に入ったスロバキアの「Jurej Tužinský」選手はワルサーLP400を使っていました。ウクライナの「Oleh Omelchuk」とセルビアの「Demir Mikec」も、(多分)LP300を使っていました。
この大会のファイナルは、スペインの「Pablo Carrera」が最終弾で大逆転をするという実にエキサイティングなものなので必見です。(ボリビア・サンタクルス)
→>(多分)LP300を使っていました
私の記憶が確かならば、それらはLP300XTです。(国籍不明)
いかがでしたでしょうか、少しはワルサーの復権ができたでしょうか。
ワルサーのエアピストルが、世界のトップレベルで戦えるだけの十分なポテンシャルを持っているということは疑いようもない事実です。つまり、ワルサーのエアピストルは「優れた、良い製品」なわけです。他のメーカーの製品、つまりステイヤーやモリーニと同じように。
我々みたいなシモジモのシューターにとっては、性能という観点では「どれを選んでも同じ」。結局、値段とか、たまたま掘り出し物があったかどうかとか、グリップを握った時にしっくり来たかどうかとか、見た目の格好良さとか、あとは憧れのシューターが使っているからとか、そんなことが選択の基準になってしまうわけですね。
ただし、ワルサーの欠点、というか「怖さ」は、少し古いモデルや生産中止になったモデルについては、容赦なくサポートが打ち切られてしまい、壊れたらもう修理ができなくなる(補修部品が手に入らなくなるから)というところにあります。昨日の記事をUPした直後にも、旧型ではあるもののそれほど古い機種ってわけでもないLP200が壊れたので修理に出そうとしたところ、「もしかしたら、修理できないかもしれない(部品が手に入らないから)」という意味のことを言われたという話を聞きました。
少し古めの機種がお買い得な価格で売りに出ているってことは良くあります。最新式だろうが10年前だろうが性能的にはそれほど差はないのだから、全国トップレベルで勝負するのならともかくまず最初に入門用として購入するなら、そういう銃は良い選択になります。ただワルサーの銃に関しては、「あまり長い間は使えないかもしれない」という覚悟が、もしかしたら必要になるのかもしれませんね。