フロントサイトに、白とか赤とかのドットを入れるというのは、エアガンの簡単なカスタムとしては定番だったりします。ピンバイス使って軽く丸いくぼみを作ってやって、そこに面相筆とタミヤカラーを使って息を止めて一発勝負で色を流し込む! これだけでマルイの1900円エアコキが、ずっと値段が高いガスガンがウリ文句にしている「フロント&リアサイトにホワイトドット入り!」ってのを再現できるわけです。
実際に効果もあります。黒っぽいターゲットを狙うときや、暗いところでサバゲをするときなんかはノーマルのままの黒いオープンサイトだとサイトが背景に溶け込んでしまって良く見えなくなることがしばしばあります。ホワイトドットを入れると、そういう環境でも楽に簡単に狙えるようになります。
しかし、精密射撃用ピストルのサイトには、ホワイトドットは基本的には入ってません。入れれば狙いやすくなるはずなのに、なぜ入っていないのでしょうか?
精密射撃では、まずフロントとリアサイトのシルエットを決まった形(上辺が揃い、フロントサイトの左右の隙間が均一になる形)に揃え、そしてフロントサイトをターゲットの黒丸の下に持っていく……という狙い方をします。六時照準といいます。ここで照準の手助けになるのは、サイトのシルエットだけであり、サイトの中に何かが描いてあったりしてもそれは何の助けにもならないばかりか、かえって邪魔になってしまうこともあるからです。
シルエットがクッキリと見えるように、標的は十分に明るく照らされるようにルールで定められているのですが、実のところどんな射場でもルールを完全にクリアできるほどの明るさがあるかというと、そういうわけでもありません。ちょっと暗いところ、だいぶ暗いところ、さまざまです。「そうとうなコダワリがある人でもなければ射撃競技なんかやってない」日本であっても十分に設備が整ってない射場が多いのですから、たいしてコダワリもない人が大勢訪れるアメリカなんかだと、「ISSFルールなんか知ったこっちゃない」みたいな射場もたくさんあることと思います。
そういう状況では、やっぱり「サイトにホワイトドットを入れて目立たせたい」と思う人ってのが出てくるみたいです。だってその射場では、そのほうが狙いやすいんですからね。
海外の射撃競技専門BBSである「TargetTalk」において、前回エントリで紹介した「透明素材のフロントサイトって有り?」という話題を受けて、「白いサイトってのは有り?」という新しいトピックが立っていましたので、今回も簡単に抜粋して紹介してみたいと思います。
なんでサイトを白くしちゃダメなの?
Just wondering-why not white sights?
(http://targettalk.org/viewtopic.php?f=4&t=33038)
- 色付き透明素材で作られたフロントサイトについての別トピックを読んで、以前から長いこと疑問に思っていたことについて投稿してみます。
サイトを白く塗るというのは、駄目なんでしょうか?
サイトに目のフォーカスを合わせようと思う時、そのバックグラウンドが黒い場合には、サイトが白いほうがずっとやりやすいでしょう。フロントサイトのセンターを見出すのに、リアサイトとの左右の隙間を見る場合にも、黒いサイトのバックグラウンドに黒いターゲットがあるよりは、白いサイトが黒いターゲットによって縁取られている方がずっと簡単なはずです。(西ノースカロライナ州)
- フロントサイトの左右位置は、黒いリアサイトとの間に見える明るい帯状の部分によってジャッジされます。明るい帯と白いフロントサイトは見分けるのが難しいことでしょう。(グエルフ・オンタリオ)
- ほとんど全てのハイレベルな射手は、「6時照準」と呼ばれるやりかたで照準をしていると思います。これは、フロントサイトをターゲットの黒丸の下に接した状態で狙いをつけるというものです。このやり方だと、フロントサイトの周囲はターゲットペーパーの白いエリアが来ることになります。
射手の多くがこの方法を取る理由は、黒丸の中心がどこにあるのかを「推測」してそこに合わせる方法よりも、ずっと簡単に正確な目標を識別することが可能になるからです。(国籍不明)
- 何年か前ですが、Tim.Kという眼科医さんと話をしたことがあります。私は、真っ黒かミディアムグレーに塗られたフロント&リアサイトがもっとも狙いやすい、特に低光量下では有効だと考えていました。Tim氏も同意しました。
Erich Buljungという人のアドバイスを思い出します。「もしフロントサイトに集中できない時には、フロントサイトが真っ黒だろうが白いドットが描かれていようが、同じようにあなたはそれを無視してしまう」というものです。(交差点)
- >ほとんど全てのハイレベルな射手は、「6時照準」と呼ばれる、フロントサイトをターゲットの黒丸の下に接した状態で狙いをつけるやりかたで照準をしている
ほとんど全て?
10m、25mの精密ステージ、50mのISSFランクでトップ100に入るシューターに対して、ほんとうにそうなのかをリサーチする研究があったとしたらとても興味深いのですが。
私は、多くのシューターが「サイトを合わせている場所? ハッキリとはわからない。多分、白い場所のどこかだろう」みたいな回答をしたとしても驚きません。「正確にただ一つのポイントを判別してそこにサイトを合わせる」という考え方から、「だいたいそのエリアにサイトを持ってくる」という考え方への転換はまさに信仰を変えるに等しいほどに難しいことですが、それを達成することは大きな変化をもたらします。(シドニー・オーストラリア)
- 私の「ベストシューティング」ができたのは、光の具合がちょうどいい時でした。フロントサイトのガンメタルが鮮明な色、そして質感で見えました。サイトが良く見えているときには、ターゲット上で何が起こっているかは全く気にならなくなります。フロントサイトは、リアサイトノッチで囲まれているように見えます。(オレゴン・USA)
- >ハッキリとはわからない。多分、白い場所のどこかだろう
まさにそれが正しいやり方だと私は確信しています。TTにおいては、「サブ6」とか「ディープサブ6」と呼ばれている照準方法です。(イギリス・ルイスリップ)
- 競技によっても変わってくるんじゃないかと思います。私がやっている「レイド・ファイア」では、黒丸の中心にフロントサイトを合わせます。黒丸は、すごく、すごく大きいのです。(西ノースカロライナ州)
- 実際に白いフロントサイトを試して、どうだったか報告してくれませんか?(ニューハンプシャー州・USA)
- すいません、私はテストの対象としては適切じゃないと思います。
実を言いますと、なんどかやってみようと思ったことはあるのですが、フロントサイトについては白ペイントをしても後で元通りに戻すのはそれほど難しくないと思うのですが、リアサイトは綺麗に戻すのは至難の業なような気がして躊躇してしまうのです。白いポツポツが付いたリアサイトと長く付き合うことになってしまうのはちょっと怖いものがあります。(西ノースカロライナ州)
- >黒丸は、すごく、すごく大きい
すごく大きい、グレーのぼんやりしたカタマリではなくて?(イギリス・ルイスリップ)
- >グレーのぼんやりしたカタマリ
大きな、黒色のぼんやりしたカタマリというのが近いかもしれません。多くの場合、私にとってはそれはハッキリとした黒丸に見えてしまいます。そのため、私は再び白いサイトについて考え始めてしまうのです…。(西ノースカロライナ州)
- 射場の照明が、実はかなり大きな要素になってるんじゃないでしょうか。良い照明のときにはサイトを楽に中心にホールドできるような気がしますし、照明がろくに無い状態だと中心にホールドするどころか、そもそもサイトが良く見えません。
アメリカでブラックパウダーマッチ(前装銃射撃大会)に参加した時には、私はオレンジのフロントサイトを使っていました。MLAICのルールで禁止されてしまって使えなくなりましたが。(国籍不明)
- ベテラン・サービス・ピストル(退役軍人向けの軍用ピストルを使った射撃大会?)で、Margolinのフロントポストとリアのッチを白く塗ったものを使ったことがあります。試射無しでいきなり撃ち始める羽目になりましたが、真っ黒な「デュエリング・ターゲット」を狙うにはあまり使いやすいサイトとは思えませんでした。
- 私は、25m先にあるターゲットを照準するために、「白い」フロントサイトポストの縁部分をターゲットのセンターに合わせなければならなりませんでした。屋根のある射座に立って、太陽光に照らされて白く見えるデュエリング・ターゲットを、白濁したフロントサイトで照準するのは難しいことでした。
要するに何が言いたいのかというと、どんなタイプの射撃競技をするのかということと、射座の照明がどんな具合なのかということが重要なのだということです。
ISSF射撃競技のスタンダードであるスポーツピストルやフリーピストルでは、スモークされた真っ黒なサイトが適していますし、サービスピストルやラピッドファイアピストルでは白色など明るい色のサイトに利点がある、ということなんじゃないかと思います。(オーストラリア・シドニー)
- 私はこれまで、様々な射撃場で撃ってきました。それぞれ照明の具合は異なります。アウトドアの射撃場は通常は十分な明るさがありますが、インドアのレンジは、特に射座は暗すぎることが多いです。
いっそのこと、射座において自分のサイトを照らすための自前のライト、例えばヘッドライトみたいなものを使いたいと思うことすらあるのですが、ルールではどうなんでしょうねえ? NRAブルズアイ競技でしょっちゅうその問題(射座が暗すぎるという問題)に悩まされているのですが、国際試合でも同じ問題に悩まされることが時々ありました。(マサチューセッツ州)
- 極端に幅の狭いフロントサイトブレード(1.5mm)にファイバー集光サイトを取り付け、幅を広げたリアサイトとの組み合わせで試してみました。サイドビューは下記イラストのようになります。
実のところ、かなり良い感じです。小さく光る点が自動的にターゲットのセンターに移動してくれる感覚です。ただ、「センターにホールドする」ことに集中しすぎてしまうため、ショットリリース(トリガーの最後のひと引きをして撃発すること)をより難しくしてしまうという問題があることに気づきました。おそらく、このやり方は私よりずっと射撃が上手くて据銃が安定しているトップシューターに適しているんじゃないかと思います。結局、私は自分の銃のサイトを通常のものに戻しました。(国籍不明)
- 光る点を黒丸の中心に持っていくというのは、確かに非常に自然だと思います。しかし、フロントサイトがリアサイトから遠く離れてしまうため、左右の良好な位置合わせを維持するのは難しいと思われます。(マサチューセッツ州)
- 別のやり方として、緑色の集光ファイバーと半円形のリアサイトの組み合わせも試してみました。このアイデアは、3つの円(2つの完全な円と、1つの半円)を整列させることなら簡単にできるだろうという発想によるものでしたが、実際にはあまり上手く行きませんでした。リアサイトの半円の中心にフロントサイト先端にあるスポットを持ってくるというのは意外に難しかったのです。
結局、現在は通常の長方形のサイトに戻していますが、フロントサイトを蛍光グリーンに塗装して6時照準をしています。自分的には良い感じなのですが、多分に心理的なものだと思います。つまりは「気分が良い」ほうがいいってことですね。(国籍不明)
- 何度も書いてて申し訳ないのですが、私の意見では照明の具合と、目の焦点をフロントサイトに合わせるということは非常に重要なのです。フロントサイトは視界の中において純粋な「モノ」として見えている必要があり、同時にリアサイトと黒丸の一部に囲われている必要があります。真っ黒なシルエットの中に明るい部分が見えてしまうことは、私にとっては理想的ではないようです。(オレゴン州・USA)
- >ほとんど全てのハイレベルな射手は、「6時照準」と呼ばれるやりかたで照準をしている
フロントサイトを黒丸に接した状態にすることは、照準の上下位置の正確さを損なってしまうことに、おそらくあなたも気づいていると思います。黒丸とサイトがごく近くに見えていることによって光学的なイリュージョンが発生し、黒丸のアウトラインの下部がサイトのわずかな上下に追随して変形するように見えてしまうのです。私の経験では、フロントサイトの上端と黒丸の下端の間には、ある程度の白い隙間が見えている必要があります。(国籍不明)
- 私もトピ主さんと同じ疑問をずっと持っていました。同じような質問を投稿したこともあるかもしれません。
私が所持している護身用ピストルのサイトは、3ドットだったり、あるいはそれよも優れたナイトサイト(夜光塗料などが埋め込まれていてドットが光るサイト)などが使われています。なぜそれらがブルズアイ射撃で使われないのでしょう?
私にとってベストなサイトは、オーバーサイズのサプレッサーサイト(訳者注:サイレンサーを取り付けた時に対応するための背が高いサイトのこと)で、幅広のフロントサイトと幅広のリアサイトノッチの組み合わせです。
レッドドットサイトが、なぜ国際的な射撃競技で使用が禁止されているのか、APに取り付けようとするとなぜ笑われるのか、私はその理由が理解できません。ええ、笑われますとも!
私が生まれつき持っている眼球はもう随分ビンテージ物になっていまして、ドットサイトが照準にわずかばかりの助けになったとしても、据銃能力にはなんのアドバンテージにもならないのに、なぜそれが問題視されるのでしょう?(国籍不明…多分アメリカ?)
- 色付きのサイトやドットサイトは、ブルズアイ射撃においてはなんらアドバンテージにはなりません。(スコッツデールアリゾナ州)
こちらも、いくつか意見はあるものの、全般的に見れば「全否定」に近い状態です。見えやすくなったように感じるのは確かだが、正確に狙うという目的からは外れたものになってしまっていて、結果的にスコアは伸びない、利点はない……等々。といっても、誰もがISSFルールに則った明るく標的が照らされた射場で撃てるわけじゃないわけで、もうちょっと照準器の仕様についてISSFルールは柔軟になってくれても良いような気もするんですけれど。