ドイツ・ワルサー社製のポリマーフレームオート「P99」のフィクスト(固定)スライドガスガン。ブローバックはしない、トリガーを引くことでバスバスバスと弾を撃つタイプのガスガンだ。
今ではもう、オートマチックハンドガンといったらそのほとんどがポリマーフレームになっている。歴史あるメーカーから新しく発売されるオートも、フレームが昔のように金属製であることはほとんどない。見た目的にはどれも似たような感じになってしまった……が、細かい部分を見ると各社それぞれ個性はある。ブームの火付け役となったグロックはとにかく「シンプルに、操作する部分を少なく」というのが際立った特徴だ。スプリングフィールドやSIG SAUERは、従来の金属フレームのオートと大きく変わらない操作性を持たせることを主軸としているように見える。S&Wはしばらく迷走していたが、最新作のM&Pでは既に存在している他社製品の良いところを全部取り込んだ決定版的な味付けになっている。
日本において「拳銃のメーカー名」ということではおそらくもっとも知名度があるんじゃないかと思われるワルサー社のポリマーフレームオートがP99だ。発売されたのは1996年、もう20年以上も前のことなので「最新作」なんて単語を付けて呼ぶのは違和感がある製品になってしまっている。
ワルサーP99のデザインは、グロック等に比べると「ボタンやレバー類が多く、ギミック感あたっぷり」という印象を受ける。左右両方から操作できるマガジンキャッチや、交換可能なグリップのバックストラップ、ストライカーを安全に前進位置に移動させるためのデコッカーなど、小さいボディのなかにいろいろとややこしい機能が詰め込まれている。それぞれのボタンやレバー類はきちんと役割があり、理にかなった配置になっているのできちんと役割を理解して操作に慣れれば自然に取り扱うことができるのだが、「何も知らない人にいきなり渡していきなり使える」というタイプの銃ではないことは確かである。
そんなギミックたっぷりのハンドガンを、マルゼンから発売されているガスブローバックでは、ほぼ完璧にその全てを再現している。もちろん、形状や刻印なども実銃そのままである。それもそのはず、マルゼンとワルサー社は関わりが深く(詳しいことを書こうとすると間違いを書いてしまいそうなので省略)、P99ガスガンの発売にあたっては実銃の図面など詳細なデータが提供され、「実銃の、日本向けガスガン仕様」としての位置づけの製品だったのだという。素材の制限や内部スペースの余裕のなさなど数々の制約があっただろうことは想像に難くないが、デコッカーの操作やインジケーターの機能など細かい部分をよくあそこまで再現したものだと驚くばかりだ。
今回紹介する製品はガスブローバックではなく、射撃時にスライドが動かない「フィクスト・スライド」のモデルである。ブローバック作動という「実銃のギミック」が省略されているのに伴い、それに関係する様々な操作系、デコッカーだとかスライドストップといった多くのレバー類がその存在意義を失い、全く動かないダミーとなっているのは残念だが、そのかわり値段が大幅に安くなっている。マガジンにチャージしたガスをBB弾の発射だけに使用し、ブローバック作動には使わないため撃てる弾数も多く、また寒さにも強くなるなど利点も多い。
実銃の設計図を元に作られてるというだけあって、見た目については全く何の文句のつけようもない。スライドはもちろん(実銃と違って)樹脂製だが、表面仕上げをフレームと変えてあってけっこう金属っぽく見える。スペック…全長180mm、重量690g、装弾数27発
価格…9,800円(税抜)
廉価版のフィクスト・スライドということで付属品などはかなり限定されているが、それでも入っている箱はけっこう立派な感じ。リボン型をした特徴的なワルサーのロゴは箔押しされていて高級感すらある。まあ、箱を開けるとただの段ボールだってことが分かって少しガッカリするのだけれど。
スライド後部の左上にあるボタン、これは実銃およびガスブローバックではデコッカーといって、一度コッキングして後退状態にあるストライカーを前進状態に戻すためのもの。それにより、トリガーに少しでも触れば撃てる「シングルアクション」から、距離があるトリガーをぐいっと引かないと撃てない「ダブルアクション」になり安全性がUPするのだが、この製品では動かないダミーパーツだ。
グリップ上にあるスライドストップも、当然ダミーだ(スライドが動かないわけだし)。トリガーの上にあるディスアセンブリーレバーは、上下ではなく左右に動かすことでトリガーをロックするクロスボルトセフティとしての役割が与えられている。実銃通りの機能を持つレバー類は、マガジンキャッチとトリガーくらいかも……。
グリップにあるピンを外すことでグリップ後部を取り外し、大中小のサイズがある別パーツと交換して手の大きさに合わせることができる……というのもP99のウリの一つだけれど、フィクスト・スライドのP99には交換グリップは付属しない(別売)。
ささやかながら、実銃のギミックが再現されている場所がある。コッキングインジケーターといって、ストライカーが後退していると銃の後部に赤い突起が飛び出し、射手に「この銃は、簡単に弾が発射される危険な状況である」ということを知らせるというものがある。それがちょっとだけ再現されているのだ。写真はトリガーを引かない状態。インジケーターは引っ込んでいる。
マガジンは亜鉛ダイキャスト製でズッシリとしている。ガスブローバックに比べてガス消費量が格段に少ないフィクスト・スライドだけに、満タンにチャージすれば「ほぼ際限なく」に近い勢いでたくさんの弾を撃てる。何発撃てるのか試したりしたらそれだけで丸一日かかってしまいそうだ。
発射メカニズムは、マルゼン製のガスガンでは伝統的な「バレル前後動」方式。トリガーを引くことでバレルそのものが後退し、バレル後端のチャンバーがマガジンの一番上にあるBB弾をくわえ込みながらマガジン内に食い込み、バレルが後退しきったところでバルブが叩かれてBB弾が発射されるというものだ。
一見すると同じように見える2本のピンだが実は長さも形も違う。前方(トリガー上の方)のピンが長く、後方(グリップ部分)のピンは短い。短い方のピンには片方にすべり止めのギザギザが入っている。これが、抜く方向が厳密に指定されている理由だ。逆側に抜こうとすると穴の内部をゴリゴリと削ってしまう。組み立てる時も必ず「銃の右から左に向けて」差し込むこと。
フレームにマガジンを差し込んで、トリガーを引いた時の動きを見てみる。マガジンの左側を通るバーが後退すると同時に、マガジン前方にあるブロックから伸びたレバーが、「2発目以降」のBB弾を下に押し下げている。
スライドの内側(左側が銃口)。外側は樹脂製だが中には金属パーツがギッシリと詰まっているところは実にマルゼンらしい設計だ。トリガーの動きと連動したレバーによって、バレルが後退し、バレル後部にあるチャンバーがマガジン内にあるBB弾のうち一番上のものだけを咥えこんでガス噴出口に押し付ける形になる。1発目 81.48
2発目 79.82
3発目 81.00
4発目 80.55
5発目 80.91
6発目 80.38
7発目 80.36
8発目 80.47
9発目 79.63
10発目 80.38
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平均 80.50
パワー 0.65J
(使用BB弾:エクセル製・電動ガン対応0.20gBB 気温26℃)
マルゼンお得意のバレル後退方式のおかげで、フィクスト・スライドのガスガンにしてはトリガープルは非常に軽くスムーズな感触だ。といってもAPS競技銃と比べれば全然重く、計測してみようとしたところ1kgを超えてしまい手持ちのスケールでは計測限界を超えてしまった。
当然のことだけれどガスの保ちは物凄く良い。初速計測用に少しだけガスをチャージして撃ってみたのだけれど、10発を撃ち終えてさらにもう10発くらい撃って、そこから延々とバスバスバスバス撃ち続けたがいっこうになくなる気配を見せない。それでいてパワーは上で書いたとおりなかなかたいしたもの。ちょっと弱めのフルサイズ電動ガンくらいはある。いちおう可変ホップだし装弾数も27発と十分以上で、サバイバルゲームではかなり良い選択肢になるんじゃないだろうか。見た目も悪くない、どころかかなり良いし。
このワルサーP99フィクスト・スライドは、当サイトで開催している射撃イベント「ひたすらシリーズ」への協賛品としてマルゼンさんよりいただいたものです。告知しておりますとおり、5/3に赤羽フロンティアにて開催される「ひたすらブルズアイ・スペシャル」において参加賞品として出ます。最後に参加者全員で抽選する形になりますので、トップシューターだけの特権ではなく誰にでもチャンスはあります。ぜひご参加ください。











