「銃とは何か」という定義をどうするかによって変わってくる。
火薬の力を使って弾を飛ばす道具のうち、大きくて威力が強いものを「砲」、小さくてそれほど威力が強くないものを「銃」と呼ぶ。自動車のカテゴリーを「小型車」「中型車」といった具合に分類するようなものだ。
つまり、「一番威力が強い銃は何?」という質問は、「最も大きな小型車は何?」という質問と良く似ている。威力が小さいからこそ「銃」と呼ばれているのに、その中で最も威力が強いものは何かと問われても、正直言って、答えに困る。「銃の威力を強くしていったら、それは銃じゃなくて砲になる」というのがまっとうな答えなのだろうか。いや、こういう質問をする人にそんな回答をしても、キョトンとした顔をされるに決まっている。
小型車と中型車を区別する明確な基準というものは、いちおう存在する(道路運送車両法)。なら、「最も大きな小型車は?」という質問への回答は、その基準に最もギリギリまで迫って作られた車種ということになるのだろうか。もっとも、そんな質問をされた側としては、小型車は小型であるからこそ利点があるのだから、大きな車がほしいのなら小型車にこだわらず中型車・大型車を買えばいいのに……と思ってしまうかもしれない。
自動車と同じように、「銃」と「砲」を区別する基準というものも、いちおう存在はしている。
しているのだが……。
実のところ、その境界線は、時代や地域や組織によって移り変わるアヤフヤなものだ。例えば現代の米軍や日本の自衛隊では「口径20mm」がその境界線となっている。だが歴史を見れば口径20mmを超えているのに「銃」として扱われたものも存在しているし、逆に20mmに満たなくても「砲」と呼ばれたものもいくらでもある。
とはいえ、現代において最も一般的な「銃」と「砲」の境界線が口径20mmである以上、そこに近い口径の弾を使用するものが、おそらくは「最強の銃」と呼ぶにふさわしいのだろう。
それを踏まえて、口径20mmの弾を撃つ銃を3つ挙げてみよう。
第二次大戦においてフィンランドが使用した対戦車ライフル。スイスで開発された20x138mmB弾を使用する。あまりに重すぎるので戦場での実用性は決して高くなかったという。重量は49.5kg、威力は38,400Jとのこと(スペックはWikipediaにあるデータより計算)。
南アフリカ製の対物ライフル。第二次大戦時にドイツで航空機関砲用の弾として開発された20x82mm弾、あるいは20x110mm弾を使用する。重量31kg、威力は43,706Jとのこと(20x110mm弾使用時。スペックデータはWikipediaより)。
photo : www.denellandsystems.co.za
クロアチア製の対物ライフル。発砲と同時に後方に爆風を噴射することで反動を打ち消す仕組みを持った「無反動ライフル」だ。フランス製の対空機関砲弾である20x110mmHispano弾を使用する。重量は19.2kg、威力は47,000Jとのこと(スペックデータはWikipediaより)。
Photo : world.guns.ru
こういった、ゴツくてデカい「ライフル」を提示すれば、「最強の銃は?」みたいな質問をしてくる人は、たいていの場合は納得してくれる。ただ、正直なところを言ってしまえば、銃としての実用性はどれだけあるんだろう……とか、これ銃じゃなくてほとんど「砲」じゃないのかなあ……とか思ってしまうのだが。
「ガンマメ~銃の豆知識~」では、銃のメカニズムや歴史などについて、難しい言葉を使わずわかりやすく、けれどいいかげんなことは書かずにできるだけ詳しく書いていきたいと思っています。毎週火曜日、週に一回のペースを目標に新しい記事を投稿できればと思っていますので末永くよろしくです。