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自転車ライトをLEDに交換

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もう13年以上も前に通勤用として買った自転車、TREK7200。こういった「まともな自転車」を買ったのが始めてだった当時はけっこうウキウキで、こんなコラムを書いたりしたものだ。TREKといえばランス・アームストロング。ランスがツール連覇を始める前に買った自転車だが、ランスが連覇中も乗り続け、ランスが引退してからも乗り続け、復帰してからも乗り続け、ドーピングを告白して全てのタイトルを剥奪されてからもまだ乗り続けている。なんというか、我ながら、物持ちが良い。

といっても長く乗ってればあちこちガタがくるんで、かなりのパーツを交換している。かろうじてフレームとシフター関連とハンドルバーと荷台とスタンドは、元のパーツが残っているが。

交換した回数が多いパーツといえば、やっぱりライトだろう。通勤に使っていた時代が長いので夜間走行が全体使用の半分以上を占めているという事情もあり、いろいろと試行錯誤をしたものだ。リムに当てたホイールで発電するダイナモライト、乾電池式のLEDライト(それも自転車専門店で売ってる高いのから、秋葉原で売ってる得体のしれないメーカー製の安いのまで)、バッテリー式のライト等々……。電池式はどうしても信頼性に欠ける、正確には唐突に電池切れになる怖さがつきまとう。結局、ダイナモ式ライトが自転車用としては一番使いやすいという結論になった。

といってもリムで発電するタイプのダイナモライトは走行抵抗がやたらと大きい。「良いヤツはほとんど抵抗が無いよ」という話も聞くのだが、基本的には世の中に流通しているリムダイナモライトのほとんどは「激安自転車用の粗悪品」だったりする。良いヤツって手に入れようとしても手に入らない。

そこで、後付のハブダイナモを取り付けることにした。ハブダイナモ付きのフロントホイールが「サイクルベースあさひ」で1万円ちょっとで売っていたのでそれを購入、タイヤを付け替えて装着するだけ。PCパーツの交換よりずっと簡単だ。そして付属するライト本体を、位置を合わせてハンドルバーに取り付けて配線して出来上がり。

これで電池切れの心配もなく、夜になればいつでも明るいライトが点灯する……と思ったのもつかの間。なんか、やたらと暗い。豆電球の光がほんのりと光ってる程度で、そこらへん走ってる普通のママチャリに付いてるLEDハブダイナモライトに比べても雲泥の差だ。いつかLED電球に交換とかしたいなと思いながら乗ってたのだが、数ヶ月くらいしたところでこんどは全く点灯しなくなってしまった。

そのまま「昼にしか乗れない」状態の自転車をけっこう長いこと使用し続けたのだが、このたび一念発起してライトが付かない理由を調べてみることにした。テスターをあちこちにつなげてホイールを回し、どこまで電気が来ているかを確認する…が、全く問題がない。試しに豆電球のプラスとマイナスにテスターを当てて抵抗を測ってみると、表示された数値は無限大。なんだ、単純に電球が切れてただけか。しかし、この電球がまたチャチである。口金サイズがE10、いわゆる「豆電球」と言われた時に多くの人が想像するであろうサイズそのままだ。これじゃ暗いのも当然か。

ついでだからLED電球に交換してみたいなと思い、調べてみる。自転車ライトだから当然入力される電気はAC(交流)のはず。AC入力に対応している口金サイズE10のLED電球なんて世の中にあるんだろうか、と思ったらあっさり見つかった。足立区に「樫木総業」という会社があって、そこが作っているらしい。なんか、自宅のごく近所である。しかも土曜日にも営業しているというではないか。

さっそくバイクを飛ばして現地まで行って、「自転車用のライトに使うのだけれど」と事情を話し、口金サイズE10のAC対応のLED豆電球を作ってもらった。「購入した」のではなく「作ってもらった」ってところがミソだ。ここはほとんど受注生産みたいな感じでやってるらしい。モノを頼むと、空いているときは「10分くらい待ってて。」と言われて奥に引っ込み、なんかハンダの匂いが漂ってきたかと思うと、できたてホヤホヤの製品を持って出てきて、「はいこれ、250円」とかそんな感じ。混んでるときはそうはいかないので、事前に電話で「これこれこういったLED電球が欲しい」という旨を事前に伝えておいて、後で取りに行くと作ったばかりのものを渡してくれるというシステムだ。こんな愉快なお店が近所にあったとは……!

そんなもん、自分で部品を買って作ればもっと安く作れるだろ? はい、確かにそのとおり。100個単位で買えば1個数十円の部品を2~3個組み合わせただけの部品なので、250円は高いといえば高いのかもしれない……が、自分の自転車用に使う豆電球が1個だけ欲しいのに部品ばっかり100個も買い集めてどうする? しかもちゃんと使える部品にするのにパーツのスペックを少しずつ変えて試行錯誤するなどのノウハウの蓄積を考えれば、数百円という値段ははっきり言って激安だ。

さて、そうやって「作ってもらった」電球を自宅に帰って自転車に取り付けてみる。手で自転車を持ち上げてフロントホイールを回してみると、確かに燦然と輝くLED電球! 大成功じゃないか。さっそく自転車に乗ってそこらへんを一回りしてみる……のだが、ここで問題発生。少し走ったところであっという間に電球の色が変な色に変わり、消えてしまい、そのまま二度と点灯しなくなってしまった。挙動からするに、あきらかに入力電圧オーバーである。

電力を供給しているシステムを改めて確認する。使用しているハブダイナモは、シマノのEV-DH-2N30-Eという型番のもの。出力電圧は、「6V」であると書かれている。もともとついていた豆電球にも「DC6V」と刻印されていた。そのため、取り付けたLED豆電球はAC5~10V程度に対応した「E10-PW81」というものだったのだが……?

樫木総業に電話してみる。症状から考えるにそれは電圧オーバーだと思われる、自転車用と聞いて5Vで十分だろうと思ったのだが予想外だった、さっそくもっと高い電圧まで耐えられるLEDを作る。値段は100円だけ高くなるので差額はいただくことになるが、次の営業日にその(ダメになった)LED電球を持ってきてくれれば交換する……とのこと。

おやまあ。普通に、もっとスペック上の電球を購入するつもりだったのに。これが「ものづくりニッポン」の心意気ってやつか。

といってもこちらもおんぶにだっこでは申し訳ない。この「6V2.4W」と書かれたハブダイナモは、本当はどれだけの出力があるのか調べてみよう。ステムにデジタルテスターを括りつけ、ダイナモから出ている線を接続してAC出力がどのくらいあるのか、実際に走行しながら計測してみる。

なんと、ゆっくり走ってるだけで5~8V、車道を普通に走ると18~19Vくらいの出力があることが分かった。体感でせいぜい22~25km/h程度のスピードしか出していないのに、ダイナモ本体にプリントされている数値のざっと3倍以上もの電圧が出ているということだ。そりゃ、LED電球が一瞬でオシャカになるわけだ。

というか、もともと付いていた豆電球がすぐにダメになったのもそのせいなんじゃないだろうか? いくら入力電圧の許容範囲が広いフィラメント式の電球とはいえ、定格の3倍以上もの電圧を常時入力されつづけたら寿命が短くなるのが当たり前だ。このハブダイナモセット、「自転車で普通に30km/hくらいで走る人」のことを全く想定していないのかもしれない。

さて翌日、樫木総業までLEDを受け取りに向かう。出力が12V以上もあるのなら、LEDが5個取り付けられたタイプの豆電球を使えるのではないか?とも思ったのだが、そうすると今度はゆっくり走っている時(つまり出力が5~8Vくらいしかない時)は全く点灯しないという別の問題が生じてしまうという。明るさは圧倒的に上になるのだが……。キャパシタを接続し、速く走っている時の電力を蓄えておいて、スピードが落ちたり止まったりしたときにはその蓄えた電力を使って数十秒くらい点灯しつづけるシステムを自作している人もいるとの話だが、そうするとACをDCに変換する回路やキャパシタ本体をどこにしまうんだとかいろいろと考えなきゃならん問題が山積みになってしまう。扱いやすいキットでも出てるのなら話は楽なんだけれど。

まあ、そんなわけで、結果的には「特注で作ってもらった」形になる「AC24Vまで耐えるAC5V仕様のLED豆電球」を受け取り、取り付けたのが冒頭の写真だ。これで、暗くなることを怖がらずに自転車で外出できるというわけだ。ここしばらく、自転車の使用頻度が落ちていて、それが理由なのかどうだかハラが出てきているので、それを引っ込めるためにも積極的に自転車を活用していこうと思う。

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