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KTW訪問記~和智さんに会いたい!

投稿日:2015年10月22日 更新日:

日本の「GUN文化」、銃でも射撃でもなく「GUN」文化の普及と進化に偉大な貢献をした人物として名前が挙げることができる人物というとどんな人がいるだろうか。モデルガン・エアガンを子供のオモチャから大人も楽しめるリアルで高品質な趣味へと高めた故・六人部登さんや小林太三さん。海外から実銃に関する詳しくてホットな情報を次々に届けてくれた床井雅美さん、Turkさん、永田市郎さん……。他にも大勢の方の名前を挙げられるだろうけれど、海外実銃情報と国内向けトイガンの開発・販売の双方において大きな役割を果たし、そして今もなお精力的に活動を続けている方となると、KTW社長の和智香さんをおいて他にいないのではないだろうか。
 

ktw-01岩手県花巻、空港のすぐそばにあるKTW本社。田んぼや林に囲まれた一角、広い敷地内に建物が点在している。首都圏にあるエアガンやパーツメーカーとは全く雰囲気が違い、表札にある「KTW」の文字がなければ「ほんとうにココがそうなんだろうか?」と不安になってしまうところ。

ライターとしては、私にとっては大先輩も大先輩。1970年代から月刊Gunで「世界拳銃撃ちある記」を連載。東南アジアや中南米などをヒッチハイクで放浪、ついた先で出たとこ勝負で拳銃を撃たせてもらって、その体験記を連載するという今ではちょっと考えられない……というか当時でも(当時だからこそ?)かなり凄いことをやり遂げ、その後は「壇植遜(だんうえそん=ダン・ウエッソン)」のペンネームで日野小室式やらAR7やら、これまたちょっと普通ではない銃のレポートを何度か掲載。日野小室式の記事は、おそらくその銃に関して現時点で存在する最も詳細で正確な資料として、その後もたびたび引用されている。
 

gun1976-12「世界拳銃撃ちある記」の第1回が掲載された1976年12月号の月刊Gun(一部)。インターネットなんか影も形もなかった当時、海外の「リアル」を知りたかったら、実際にそこまで足を運んで現地の人と交流する以外に方法が無かった。アメリカやヨーロッパならともかく、治安も社会情勢も不安定な東南アジアや中南米の「リアル」、それも銃器の所持や実際にどう使用されているかなんていう物騒な話題について体当たりで取材し日本まで届けてくれるなんて、とてつもなく貴重で、他では絶対に読めない情報だった。

1980年には、「夢の対決」と題して、永田市郎氏と国本圭一氏(ウエスタン・アームズ社長)の射撃対決を企画し記事にするなんていう、これまた今ではちょっと考えられないこともされている。他には、1981年の「ロス疑惑」に関連して、銃に詳しい専門家として週刊誌の取材を受けいろいろと回答したところ、全く答えた内容と異なる内容が「専門家による意見」として記事にされてしまうなんて「事件」もあった。まさに日本の「GUN文化」と共に歩まれてきた、そして今もなお歩み続けている歴史の証人にして第一人者、それが和智香さんである。
 

gun1980-07月刊Gun 1980年7月号に掲載された「夢の対決」。左が若かりし頃の永田市郎さん、右が若かりし頃の国本圭一さんだ。企画も凄いし、写真も凄い。撮影はやはり月刊Gunライターの大先輩であるJackさんだけれど、あの人のことだから多分この写真、三脚に設置したカメラをリモートで動かしてるとかじゃなく、実際に銃を撃ってる真ん前の地面に這いつくばってシャッター切ってるんじゃないかと思う……。

誌上では、他のライターから「ワッチャン」なんて愛称で呼ばれることも多かった和智さん。私がこの業界に入ったころには既にライター業は引退されており、遠い東北の地にてKTWというメーカーの社長となられていた。製品についての問い合わせなどで電話をすると、そのあまりの知識の豊富さと深さ、そして話の面白さに、ついつい電話が長引いてしまい、後で会社の上司に「池ちゃん、長距離電話なんだからもうちょっと手短に……まあ和智さん相手じゃ無理ないかもしれないけれど」と苦言を言われたこともあったりしたっけ。

gun1978-01月刊Gun 1978年1月号の「世界拳銃撃ちある記」より。1976年からの連載は一端中断し、1977年11月号からカラーになって再開しているようだ。アフロみたいなチリチリパーマの長髪は、当時の流行り。

一度、KTWを訪れてみたい……というのは積年の夢だったのだけれど、なにせ本社があるのははるか遠くの東北地方。なかなかそうおいそれと「ちょっと行ってみよう」とはいかない場所だったのだが、ついに先日一念発起した。「東北観光フリーパス」という、東北地方の高速道路を3日間乗り降りし放題な企画商品があったのも良い後押しになった。

取材を申し込む際には、自分が過去月刊Gunでライターをしていたことがある「後輩」であるなんて話はせず、ただ純粋に「あきゅらぼというブログをやっているだけの一般人」として電話をしたのだが、別に断られることもなく快くOKしてもらえた。まあ、実際に訪れて名刺を渡した時点でバレたわけだけれど。あと、今回はいちおう取材という体はとっているのだけれど、長年の夢がかなった興奮と舞い上がりのほうが先走ってしまって、撮影した写真とか聞いた話なんかにはちょっと偏りがある。そこらへんはどうかご容赦。
 

ktw-02こちらがKTWの「本社」。設計や試作品の製作、あと在庫の倉庫などに使っている建物ということらしい。建物の横には切りだされた薪が積み上げられている。暖房は基本的に全てこの薪を使ったストーブでまかなっているのだとか。
ktw-21複数の建物をつなぐ「廊下」にあたる部分。部品の在庫などが横の棚に収められているが、首都圏のガンメーカーなどを訪れた時に感じる「ところせましと」というイメージがまったくない。実に広々としたものである。スペースはいくらでも使い放題な東北の地ならではのメリットだろう。なお、左に後ろ姿が写っているのが和智香さんだ。当たり前だけれど、さすがにロン毛パーマではない。なお今回、普通のインタビュー記事では必須になる「正面からの写真」が一枚もないという体たらくである。どれだけ舞い上がっていたんだ自分。奥のほうに見えるのが、普段の生活を送る「母屋」に続く扉だ。
ktw-20ここは工作室。年代物の工作機械(フライス盤や旋盤など)が並んでいる。作られてから40年……いや50年くらいは経っていそうな骨董品に近い機械だけれど、ここまで大きい本格的な物だと古いことによる不具合は全く生じないらしい。和智さんによれば、「工作機械は、大きければ大きいほど使いやすいし、精度も出るんだ」とのこと。なお、ここで作っているのはあくまで試作品、あるいは量産品の元になる原型であり、実際に販売する製品に使われる部品は他の工場に外注しているのだそうだ。

完全無風の20mレンジでは定期的に競技会も

数あるKTW製のエアソフトガンの中で、「長射程・高精度」を売りにしているのがウインチェスターM70シリーズ。ボルトアクション式のエアコッキングライフルだ。この製品の凄いところは、製品一つ一つに「実際に、その銃で撃ったテストターゲット」が付属すること。10m5発でグルーピングが30mmを切らない製品は出荷しないというこだわりようである。
 
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ウインチェスターM70、上がPre64、下がSPR・A4。

そのテストターゲット、どこで試射を行っているのか? このKTW敷地内に、完全無風の屋内20mレンジがあるのだ。冒頭で載せた全景写真の中に、実はその20mレンジもちゃんと写っている。
 

ktw-01この中に20mの屋内レンジが写っている。さて、どこでしょう?
ktw-18左端に見える、白いコンクリの塀にしかみえない部分、これが実は20mレンジだ。こちらはターゲットを置く側(つまりダウンレンジ側)。空調の施設も備えられているが、射撃中は全て空調は止めて完全無風の環境になる。
ktw-17見よ、この長さ!
ktw-16なんか、塀の端っこに小さいプレハブ小屋みたいのがあるなーと思ったら、実はこれがいわゆる「シューティングボックス」になる。冷え込む冬場でも、しっかり暖房が効いた温かい環境で思う存分射撃を楽しめるというわけだ。
ktw-11シューティングボックス内に設置された机から、レンジに向けて試射を行う和智さん。
ktw-12机からレンジ奥を覗き込むとこんな感じ。初速計、距離ごとのターゲット、そして照明など完璧な作りこみ。まさに理想の射撃環境である。

このレンジでは、毎年春に「アキュラシー・コンペティション」、通称「花巻アキュコン」というシューティング・イベントが開催されているという。20m先に置かれた極めて小さいターゲットを狙って撃ち、スコアを競うというもので、毎年30名近くの参加者が、それこそ日本中から自慢のカスタムライフルを持って集まるのだそうだ。なにせ遠い場所から来るので日帰りというわけにはいかず、その30名近くの参加者のほとんどはKTW本社に隣接している母屋に宿泊するのだとか。うわぁ、凄い楽しそうだな!
 
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その「花巻アキュコン」、別にKTWが主催しているわけではなく有志によるイベントなのだそうだが、せっかくなのでKTWとしても参加しないわけにはいかないということで作ったカスタムライフルの一つがコレ。なんとスペンサー・カービンをベースとしたスナイパー・ライフルである。

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ktw-15スコープ、バイポッド、そしてチークピースを装備。「それでちゃんと当たるんですか?」と聞いたところ、「ウチの銃は全部当たるからさ」との回答。失礼しました!

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ヘンな銃といえばこんなものも、「タネガシマ」をベースにバイポッドとスコープとストックを追加した、通称「対戦車タネガシマ」。タネガシマは値段が値段なので持ってる人はそう多くはないとは思うけれど、撃ってみるとこれがまた良く当たる! とはいえ、コレにスコープとストック付けてスナイパー・ライフルに仕立てあげようとする人はそうはいないだろう……と思って今検索してみたら、けっこういるのねそういう人!

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ktw-23スコープマウントはイサカ用のマウントを側面にネジ留め。ストックはスパスのものを流用している。

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ウインチェスターM1873シリーズと、スペンサー・カービン。NHK大河ドラマに合わせて話題の銃を製品化……のつもりが発売が間に合わず、もうドラマの放送が終わりかけのところでようやく発売されたスペンサー・カービン、値段の高さもあって決して「良く売れた銃」とはいえず、限定200丁はまだ売り切れておらず今でもまだ新品で手に入るとのこと。

ウインチェスターM1873は、初期のモデルはアンダーレシーバーがプラスチック製だったが、現行ロットはそこも含めてほぼ全てが金属製になっている。強度に不安があったからプラから金属になったのだろうと思っていたのだが……。

「お客さんは何でもかんでも金属製にしてくれと、金属なら頑丈になるはずだ、そのほうがリアルだってそういう要望を言う人が多いけれど、実際のところ金属の方が樹脂よりも丈夫になるかというと、そうでもないんだよね。金属は負荷がかかって曲がったら曲がったままだけれど、樹脂は弾力性があって変形しても元通りになる割合が大きい。使う場所や設計のやりようによっては、樹脂のほうが金属よりも丈夫になることだって多い」

「海外メーカーの製品は、フルメタルだフルスチールだと金属をやたらと使う。そりゃ金属使ったほうが(小ロットなら)安く作れるけれど、我々が敢えてそうしないで樹脂を使うのは、できるだけ法律を順守したいからという気持ちがあるから。法律なんか知ったことか、とにかく全部金属で作ってしまえって考え方は、どうなのかねえ」

「我々が以前作ったモシン・ナガンなんて、構造やら寸法やら丸パクリしたものが海外メーカーから出てるでしょ。でもアレって、丸パクリといっても肝心要の部分でコピーしそこねていて致命的な構造欠陥があるんだよね。それで不具合が出たり壊れたりした物を、ウチ宛に修理してくれ~って送ってくる人とかいるんだよね、信じられないことに。中身が同じなんだから修理もできるんだろうって考えなんだろうけれど」

……とまあ、こんな具合に「M73のアンダーレシーバーがプラから金属になった」という話を振っただけで、これだけの話題が次から次に出てくるのが和智さんの凄いところである。長距離電話でもこんな感じなわけで、上司から怒られるハメになるのもわかってもらえるんじゃないだろうか。
 
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こちらがその問題のモシン・ナガン。海外製のコピー品のほうが、そりゃ安く手に入るのは確かだけれど、ソレが壊れたからといってKTWに修理してくれって送りつけるのはやめましょう。

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こちらはイギリス銃。上がL96A1(絶版)、下がリー・エンフィールドNo.4。KTWから発売された初期型のリー・エンフィールドは、「美術品」として輸入した実銃部品を使用し、上のL96の中身を組み込むというものすごく手間もコストもかかる方法で作られた。リアルさではこれ以上ない伝説的な製品である。2001年に100丁限定で発売された。現在販売されているのは普通に国内で作られたものだが、それを作るために「最後に残った実銃部品を使ったリー・エンフィールド」を原型として使用したため、現在ではKTW本社にもその「伝説のリー・エンフィールド」は残っていないのだとか。

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こちらは日本軍モノ。三八式(上)と九九式(下)。九九式は絶版となっている。

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タネガシマにフリントロック・カービン、あとここには写っていないがフリントロック・ピストルといった前装銃シリーズは、それこそKTW以外からは絶対に発売されようもない、極めてユニークな製品ラインナップ。しかも、そのどれもがエアガンとしての性能がやたらと高い(ヘタなスナイパーライフルより良く当たる!)上に、実は連射もけっこうしやすく、サバイバルゲームでも意外と活躍できるなんておまけ付き。現用米軍装備で溢れかえるサバゲフィールドに、「足軽」の格好をしたゲーマーや、南北戦争コスチュームのゲーマーが登場するなんていう異常現象を巻き起こした。……おや、右下にちょっとだけ写っているのは?

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……こ、これは水平二連銃!? そういえば次期発売予定の新製品にそんなフレーズがあったような気が! しかし、これは……

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「そうそう、これが次期発売の水平二連ね! ほらこうやって実銃と同じようにロックを外してバレルを折ると……あれ?」
※もちろん賢明な読者の皆さんはお分かりと思いますが、これはKTW次期発売の水平二連「ではありません」。中国製のサウンドガン(撃つとバキューンとか側面のスピーカーから音が出るもの)のようです。しかし社長、中国製の玩具を実銃の感覚で折ったら、そりゃ真っ二つになりますよ……。

この「遠い東北の地」に、和智さんを慕って訪れる人は大勢いるようで、壁に付けられた写真ボードなどにはいろいろなメッセージカードや写真が飾ってあります。中には、かなり「凄い人」と和智さんが一緒に写った写真なんかもいくつか。

「あー、昔の若かった頃の写真だねー。使用前、使用後って感じか?」なんて和智さんは軽口を叩かれますが、いやいやとんでもない。熟成中、熟成後ってところでしょうか、ってそれも微妙に失礼な物言いかも!?

最後に、KTWファンの方に新製品や再販情報(まだネットに上がってないもの)を一つ。KTW製品の中では比較的お求めやすい価格で、それでいてKTW製品らしく「全く他メーカーの製品にはないスタイル」、「最高の撃ち味」、「実はやたらと良く当たる」と三拍子揃った「フリントロックピストル」。物凄い大人気で長いこと品切れになっていましたが、いよいよもうすぐ再販がかかるとのこと(ロットでいうと第6ロットになりますね)。「少し見た目が豪華になるバージョンアップ」もあるとのことですのでお楽しみに!

取材協力:有限会社K.T.W.
〒025-0004 岩手県花巻市葛第9地割255-2 TEL:0198-26-4442 FAX:0198-26-4416

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