自宅で据銃練習をする時、白い壁に向かって前後サイトの揃い具合だけに注目して練習することもありますが、実際にターゲットの黒丸を壁に貼ってそれに対して狙いをつけながら空撃ちして練習することもあります。
ここでは、黒丸を壁に貼って狙いながら練習する場合の話です。公式で使うのと同じターゲットを、公式ルールと同じ距離の同じ高さに設置することができれば理想なんですが、よっぽど恵まれた環境にいる人でもなければ、部屋の中に立ったときに壁までの距離はエアピストルの10mはもちろんAPSの5mを確保するのだってけっこう難易度が高いんじゃないかと思います。そのため、通常は本番よりも近い距離に、本番で使うよりも縮小したターゲットを設置して練習することになります。
大きさをどのくらい縮小すればよいのか……はそれほど難しい問題ではありません。公式の半分の距離なら大きさも半分、1/3なら大きさも1/3です。APSターゲットの場合、ターゲットまでの距離は5mで黒丸の直径は22mmですから、自宅で3mの距離で練習をするのなら13mmほどの大きさの黒丸を描いて壁に貼り付ければOKってことになります。
ただ、高さについては少々やっかいです。APSの場合、床面からターゲットの中心までの距離(高さ)は140cmと定められています。
※ちなみにエアピストルやエアライフルも同じ140cmです。ただし、プラスマイナス5cmまでの誤差が認められていることと、射場内に並んでいる他のターゲットとの誤差はプラスマイナス1cmまでに収めることが要求されていることなどが細かな違いになります。
なら縮小ターゲットも同じ140cmの位置に貼ればいいじゃないかというと、そうはいきません。ならどのくらい高い位置に貼ればいいのか、逆に低い位置に貼ったほうがいいのか? これは、「人によって異なる」というのが回答になります。こうすれば万事OKという簡単な正解が無いのです。
成人の場合、身長はだいたい160~180cmくらいだと思いますが、そうなると目の位置はほとんどの場合140cmよりも高くなります。つまり、ターゲットを見下ろしながら撃つ形になります。本番と同じように構えて撃つためには、近くに置く縮小ターゲットはルールで定められた140cmよりも高い位置に設置する必要があります。
射撃姿勢を取った時の自分の目の高さが何cmなのかということと、縮小ターゲットを設置するのは何mなのかということさえわかれば、どのくらいの高さに設置すれば良いのかは計算で求めることができます。比例する三角形の辺の長さを求めるみたいな問題ですね。中学校、いや小学校の算数?くらいのレベルになるでしょうか。たいして難しい計算というわけじゃないんですが、世の中には便利なものを作ってくれる人がいまして、必要な数字を入れれば設置するべきターゲットの黒丸の大きさと高さを計算して表示してくれるソフト(というかエクセルのファイル)を作って公開してくれている人がいました。
ライフルやピストルの、ターゲットの高さおよびサイズの計算機
Olympicpistol.com [Rifle and Pistol Target Height & Size Caliculator]
いままで、「なんとなく」で貼り付けていたターゲットの高さが、この計算機を使えば完璧にルールどおりに設置できるというのはありがたいことです。やってること自体は対して高度な計算ってわけでもないのは確かですが、いざ自分のためにやろうとすると面倒になって「まあ、だいたいこんな感じかなあ」っていい加減な場所に貼り付けちゃったりしてるのが現実ですから……。
ただ、提供元サイトにも書かれていることですが、注意点があります。ときどき、壁に貼ったターゲットの高さを少しだけ上げたり下げたりと変化をつけて練習したほうがいいということです。実際の射場では、ターゲットの高さってのはけっこうまちまちです。エアピストル/エアライフルの世界ですら、公式ルールでプラスマイナス5cmとけっこうでかい誤差が許容されているほどです。「どこそこの射場は的がやけに高い/低い」という話は、射撃仲間と話をしているとお約束のように出てくる話題だったりします。
決まった高さでだけ練習していると、高さが少しでも変わると気になって据銃がいきなり不安定になってしまう、ということになりかねません。普段からターゲットの高さはある程度は変わるものだという環境に慣れておけば、自分の据銃も許容範囲が広くなって違う射場に行ったときの戸惑いが軽減されるという利点があるようです。
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