「マグニファイアは使い物にならない。ただし、ノーベルアームズのものは除く」というのが、サバイバルゲーム向けの光学サイトの比較やレビュー記事ではほとんど定番フレーズになっているといっても過言ではない。そのノーベルアームズ製タクティカルマグニファイアに、これまでの倍率3倍のものに加え、新たに5倍の新型が登場する。
「遠距離でも、近距離でも、マルチに使える汎用のサバイバルゲームウェポン」という響きは、どうにも中二病マインドを刺激する魅力に溢れている。サバイバルゲームでは、同じフィールドであっても相手の顔も良く見えない遠距離から、手を伸ばせば届きそうな近距離まで様々な局面が入れ代わり立ち代わり登場するので、実際に近遠両用できるというのは求められている性能の一つでもある。
スコープの上に小さいドットサイトを乗せる「亀の子」方式、スコープとは別にドットサイトを斜め45°に傾けて設置する方式など、いろんな工夫を凝らされたエアガンをフィールドでは見かける。その中でも比較的多いやり方が、ドットサイトの手前に、ドットサイトを通して見える像を拡大する望遠鏡を直列に設置するものだ。「マグニファイア」とか「ブースター」と呼ばれることが多い。倍率が必要ないときには取り外したり、側方にスイングしたりしてドットサイトのみで運用、遠距離を索敵したり狙撃したりするときには戻すという使い方をする。
マグニファイアには欠点もある。ドットサイトを通して見える像を拡大するために、どうしても見え方がスコープに比べると精密度に欠けるものになってしまうという点が最たるものだ。もともとドットサイトのドットはスコープのレティクルに比べれば大きめな上に、レンズ性能がよほどよくなければ滲みや歪みがある程度はあるのが普通。ドットサイトをドットサイトのまま等倍で使うなら多少の滲みや歪みも許容範囲だったとしても、マグニファイアで拡大してしまうと「さすがにこれはちょっと」というレベルになってしまうことがほとんどだった。
そんな中、低価格帯(2~3万円程度で手に入るもの)ではほぼ唯一に近い「使い物になるマグニファイア」が、ノーベルアームズのT1ドットサイトと、3Xタクティカルマグニファイアの組み合わせだった。同価格帯の小型ドットサイトの中では抜きん出たクリアなドットが非常に高い評価を得ているT1ドットサイトに、光学照準器としてのレベルが高いマグニファイアの組み合わせならば、実用に十分以上に耐えるクリアな視界が得られる。
その3Xタクティカルマグニファイアに、倍率5倍の新製品が登場する。5倍となると、サバイバルゲーム用途としてはスコープでも「けっこう倍率高め」な部類に入ってくる。スコープの倍率のことを「パワー」と呼ぶ。5Xのマグニファイアというと、かなりのハイパワーということになる。
3Xとのスペック比較(3X/5X)
全長:109/126mm
重量:346/390g
(2019.3.17追記:いつの間にか発売になっていました。2019年新型と書かれてるので年明け以降の発売だったようです)
いくらT1ドットサイトのクリアなドットでも、5倍に拡大したりしてしまったら流石に歪みが気になってくるのではないだろうか……?というのが一番の心配のしどころだ。なので、まずは実際に覗いたところの写真から見てみよう。
ドットサイトを通して見える像を拡大しているのだから、当然ドットも5倍に拡大される。「ドットは変わらず針の先で突いたかのようにシャープで小さい」とか、「全く歪みは見えない」と書いてしまうと流石に言い過ぎだが、サバイバルゲームにおいて照準に使えるかどうかという点で言うなら、「十分に使える」と書いてしまって全く問題がないだろう。経験豊富なサバイバルゲーマーなら、上の2つの画像を見るだけで「うむ、これは使える」と納得してもらえるのではないかと思う。
ただし、元のドットサイトのレンズの青みがそのまま拡大されてしまっているのはちょっと気になる。5Xタクティカルマグニファイアとの組み合わせで使うなら、できるだけレンズの青みが少ないドットサイトを選ぶべきだろう。
細かい部分を見ていこう。ノーベルアームズのマグニファイアは(デザインモチーフとなっているAimpointのものと異なり)マウントの横にあるボタンを押すことでロックを解除してスイングさせたり、元に戻したりする。ロックボタンは従来型の3Xタクティカルマグニファイアでは「手前から奥」へと押すタイプだったが、新型では「奥から手前」へ押す(引っ張る)形へと変更された。これにより、ライフルを肩付けして照準した状態から、ボタンごとライフルを自分の肩へと押し付けるようにして押すことですばやくロックの解除を行えるようになった。
マウントはもちろんQDマウント。適切に調整すれば、簡単なレバーの操作だけで一瞬でマグニファイアをマウントレールから外したり、装着したりすることができる。マウントの途中に厚さ3mmのプレートが挟み込まれており、それを脱着することで高さを2段階に調節できる。