射撃のコツ

ピンポイントシューティング講座番外編・ドットサイトの罠

投稿日:2009年5月5日 更新日:

いちおうピンポイントシューティングではドットサイト(ダットサイトとも呼ぶよね)でも参加できることになっている。このドットサイト、付ければ良く当たるようになるのかというとけっしてそういうことはなく、製品の選定方法や特徴や原理を知っていないと、かえって当たらなくなる。

ドットサイトの利点は、なんといっても「照準がしやすくなること」だ。フロントサイトとリアサイトと標的の3つを合わせないとならないオープンサイトに比べて、ドットサイトは光点と標的を合わせるだけで良い。しかも、オープンサイトで狙うときに大切な「標的を見ずに、フロントサイトに集中する」という人間の心理的に難しいことを要求されることもなく、普通に標的に眼のピントを合わせたままで照準ができる。

そしてもう一つ、ドットサイトの利点として挙げられることが多いのが、「顔(目)と銃の位置が少し違っても照準できる」ということだ。オープンサイトで狙う時には、フロントとリアのサイトを結んだ線上に目が来ていないと照準することができない(その状態で撃つとまぐれ当たりを除けば確実に大外しする)。しかしドットサイトの場合、顔の、あるいは銃の位置が少し動いても、レンズの中に光点が残っていれば、その光点を標的に合わせればちゃんと弾はそこに飛んでいくはずだからだ。

しかしこれには罠がある。ダットサイトの光点は、その光源自体は銃の上に付けられたサイトの中にあるけれども、レンズの組み合わせにより光学的に「とても遠い場所」に投影された状態になっている。だからこそ銃を少し動かしただけでドットは大きく動き、オープンサイトでの照準技術を持ってない人でも簡単に比較的精密に照準ができるわけなのだが、この「とても遠い」という距離は、ほとんどの製品の場合最低でも50m、製品によっては100mとかそれ以上の距離に設定されている。ピンポイントシューティングやAPSカップのように、5mとか10mといった近い距離には合わせられていないのだ。

それでも、いつもレンズの中で同じ位置(たとえば中心)に標的が来るようにして撃てばなんの問題もない。その形で撃つのならば、光点と標的の位置関係は変わることはなく、同時に銃と標的の位置関係も変わらないからだ。しかし、標的がレンズの中心から外れると話が変わってくる。

自分の持っているダットサイトが5mの距離に対応しているかどうかは簡単に調べられる。まず銃を固定し(机の上に置く程度のことで十分)、ドットサイトを覗いて光点がどこに合っているかを見る。シューティングレンジなら、とりあえず標的に合わせるのが一番良いだろう。その状態で顔の位置を上下左右に動かしてみよう。光点が標的の上を動かないだろうか? ほとんどの場合、動くはずだ。


銃は動かないのに、顔の位置を動かすと「狙っている場所」が動くということは、逆に言えば標的上の同じ場所に光点を合わせている(同じ場所を狙っている)のにも関わらず、顔の位置によって銃の位置が変わってしまう、つまり「違う場所に当たる」ということになる。標的がレンズの下ギリギリにある状態で光点を標的の中心に合わせて撃つと、弾は上に当たる。逆なら逆方向に弾着はズレる。心当たりはないだろうか? いままで、自分の腕が悪いせいだと思っていなかっただろうか? それは腕のせいじゃない。ドットサイトを使っていたせいで、弾が外れていたわけだ。


この問題を解決するためにはどうしたらよいのだろうか? 一番良い方法は、「5mに対応しているドットサイトを手に入れる」ことなのだけれど、サイトメーカーとしてはそんなニッチな製品に需要があるとは思えず、現実に生産されるなんてとてもじゃないが望み薄だ。となると残る手段は、「常にレンズの中で同じ位置に標的がある状態で撃つ」ようにするしかない。ドットサイトを使用することによる利点の一つを失うことになるが、もっとも現実的な対応といえるだろう。


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