一宮エリアにある「狐新居」なんてちょっと民話っぽい風景を思い浮かべそうな名前が付いたバス停の周りには、いくつかのワイナリーが密集しています。ディズニーリゾートの中にあっても違和感なさそうなくらいのファンタジーな佇まいをしたワイナリーから、ワイナリーというよりは小さな町役場とか工務店みたいな洒落っ気のカケラもないような事務所を構えたワイナリーまでいろいろです。
洒落っ気がない方のワイナリーの一つが新巻葡萄酒です。「自分ところの畑で作っているブドウで、自分ところで売るワインを作る」という、昔ながらの形でずーっとやっている小規模なワイナリーですね。
そろそろ日も傾きかけて来たかな、という時間帯に訪れたのですが、試飲用に用意されたワインのいくつかが底を尽きかけていました。普通ならそこで「試飲は終了」となりそうなところですが、せっかくなのでということでビンテージ違いの別のワインが試飲用に出てきたりします。そのおかげで、同じ甲州、同じマスカットベイリーAで、2012と2014の垂直試飲ができたりなんていうラッキーもありました。
実は事前に、ここは格安の一升瓶ワインとして「ビンテージ違いの数年寝かせたマスカットベイリーAをブレンドした赤ワイン」なんてものがラインナップにある、という話を聞いていました。表には出ていないのですが聞いてみたところ、「もちろんあるし、販売もしている。用意するので少々お待ちを」ということで包んでくれました。
家に帰って包みを開けてみると、一升瓶ってこともあってとてもワインには見えない姿形をしています。「ゴールドワイン」と、ひねりもなんもなく大きく印刷された盾形のラベルや、三日月みたいな形をした口元のシールなど、「おしゃれワイン」とは全く方向性が違います。「新巻葡萄酒」で検索して、販売店のページなどにならんでいるラインナップを見てもこのワインは載っていないようです。
「新巻葡萄酒 ゴールドワイン」というワードにしてようやく少しだけ情報が見つかりました。簡単に言うと、「全国的にはもちろん、県内でもほとんど無名。特定のお店にほぼ全てを卸しているので一般には出回っていない」という情報と、同じゴールドワインでも甲州を使った白ワインの方を「素晴らしい、素晴らしい」と絶賛している人が意外に大勢いることがわかります。赤の方は……ほとんど全く情報なし。ボトルにもラベルにも具体的な情報はなにも書かれていません。もう実際に飲んでみて自分の舌と感覚で判断するしか!
というわけで飲んでみたわけですが……このワイン、美味いね! 基本は確かにマスカットベイリーAなのだけれど、他の品種もブレンドしてあったりするのかしないのか? ベイリーAの、なんかいがらっぽい感じが消えてまろやかになっていて、それでいてちゃんと香りもコクもあり、これはみんなにオススメできるワインです!
しかしオススメといっても、購入しようとすると直接ここまで来る以外に手に入れる方法がないというのは、なかなかハードルが高く、またそのハードルの高さが妙に「俺だけがコレを知ってる」的な心地よさにもつながってたり。頑張れば、高速バスの釈迦堂バス停から歩いて来れないこともない距離なんで、春になったら一度試してみようかな?
新巻葡萄酒
〒405-0065 山梨県笛吹市一宮町新巻500