今年(2015年)から追加となった甲斐ルート、まず最初のお目当ては敷島醸造です。同じ山梨でも、勝沼よりもずっと標高が高く、そのため気温が低く昼夜の寒暖差も大きいというワイン作りには大きなメリットがある土地ですね。バスが走るのも街中ではなく、つづら折りの坂道を延々と登っていきます。右、左と切り立った崖の向こう側には延々と続く段々畑が見え隠れします。
辿り着いた敷島醸造は、ワイナリーというより「山小屋」といった趣のある建物です。その周辺に、身動きがとれなくなるくらいの大勢の人が集まっています。日比谷のワインフェスもかくやという混雑で、試飲をしているテーブルに近づくこともできないありさまです。大繁盛です!
ラベルだけ見ると、「昇仙峡」とか「甲州」とか筆文字で書かれた、ちょっと日本酒っぽい感じのデザインが多いので「甘いだけのお土産ワイン」だったりするんじゃないかと心配になりますが、全然そんなことはありません。むしろ逆で素人お断りの超本格派揃いです。これはラベルデザインで損してるんじゃないかと、逆にそっちが心配になります。
樽熟成やシュール・リーの甲州もいいのですが、「ここに来たら飲んどけ」と言いたいのは赤の濃いヤツですね。ベリー・アリカントなんかは、グラスに注いでもらうときにちょっとこぼれて指に付いたりすると、「おわっ、どっかで指を切る怪我とかしてたか俺!?」とビビってしまうくらいの鮮烈な赤色をしています。これもラベルのデザインは、「Shikishima Winary/Bailey Alicant」とアルファベットで書いてあるだけという、「もうちょっと、ほら、こう、なんかあるだろ」と口を出したくなるようなそっけないにも程があるデザインだったりするんですが。
自社畑の案内もやってるとのこと、クルマに1人分だけ空きがあったので便乗させてもらいました。畑の間の細い道を延々と上がっていくと、斜面に広がる一面のブドウ畑! 南東向きの、ブドウ作りにはまさに理想に近いロケーションですね。
垣根仕立てのブドウ畑には、丁寧にレインカットが施されています。大手ワイナリーみたいに上から半ドームの屋根みたいなのをかけるレインカットと異なり、幹の中ほどあたりを左右から挟み込むような形になっています。「一番上に傘をかぶせるようなレインカットは、横から風が吹き込むと弱いのでこういう形にしている。ブドウの実はこの形でも雨から防げる(フィルムより下にしか実はつけない)ので十分」とのことです。
かなり登ってきたと思うのですが、そんなところにもログハウス風の小洒落た建物がところどころに建っています。なんでもこれは「テイスティングルーム 兼 簡易宿泊所」として使われているとのこと。お客さんはこのワイナリーまで来て、バーベキューしたりテイスティングしたりワイン買ったりして、そして畑の中にあるログハウスに泊まって、お酒が抜けた次の日に帰るという楽しみ方ができるようです。なにその天国のような一日。
敷島醸造
〒400-1113 山梨県甲斐市 亀沢3228