自宅などでSCATTを使った空撃ち練習をする時に、ターゲットの光量を十分に確保するためのライトボックスを作りました。
射撃がメジャーなスポーツの一つとして確立しているヨーロッパでは、銃砲店での売れ方とか普及率とかが「ものすごいこと」になっているというSCATT(ソース:銃砲店の人の雑談)。先日のアップデートでAPSカップのブルズアイターゲットにも対応し、日本での売れ行きも激増していくことになるんじゃないかと予想されます。
そんなSCATTですが、特に初期に購入した方などからは「使ってみたがどうにも上手く動かないので死蔵してる」って話をけっこう良く聞いたりします。「それで全然使ってないから、(SCATT使ったイベントとかやってるみたいだし)池上くんに預けるよ」って言って貸してもらえたりすることもあったりします。こんなお高いものをそんな気軽に!? で、その預けられたSCATTを実際にPCにつなげて試してみると、何の問題もなく使えたりするんですよね……?
SCATT代理店になっている銃砲店は日本に3つ(銀座と沼津と京都)あります。そのうちの一つである銀座銃砲店さんに「SCATT関連でお客さんから寄せられるトラブル事例って、どんなのが多いですか?」って聞いてみたところ、「圧倒的に多いのが光量不足ですね。ほとんど全部と言っていいかもしれません」との回答でした。ソフトやファームウェアのアップデート方法のほうが先にくるかと思ったので、ちょっと意外。「まあ、パソコンの使い方そのものが根本的にわからないって例もけっこうあったりしますけれど……」とのこと。ああ、やっぱり。
現在販売中のSCATTはすべてカメラ方式です。銃に小型の高性能カメラを取り付け、PCに撮影データと(空撃ち、あるいは実射による)衝撃があった瞬間のデータを送り、PC側で画像を解析して「銃口がいまどこを向いているか、撃発はどのタイミングで行われたか」を導き出して画面上に表示するものです。
カメラで撮影したデータを使うので、ターゲットは十分に明るく照らされていることが必須になります。最低限の光量というのがSCATTのマニュアルには記載されており、「1000ルクス以上」となっています。推奨は1500ルクス以上です。この数字は、ISSFによって定められている、射撃時にターゲットがどれだけ明るく照らされていなければならないかというルールに則ったものです。「公式大会のために練習するのだから、練習時のターゲットの明るさもそれに準じたものになっているのが当然だろう」という考えなのでしょう。
ただ、この1000ルクスとか1500ルクスというのは、かなり常軌を逸したレベルで高い数字です。参考までに、一般的な家庭の部屋の中は100ルクスくらいが適切なのだといいます。ケタが一つ小さいですね。JISには「作業内容や空間の用途に応じた推奨照度(ルクス)」というものが定められていまして、会議室や図書室、診察室や大型店の店内が500ルクス、手術室や大型店の一般陳列棚などが1000ルクスとなっています。強力な照明器具を使ってごく近距離からこれでもかと眩しく照らした状態というのが、1000とか1500ルクスという世界というわけです。
参考:正しく理解していますか?JIS照明基準(ENDO LIGHTING CORP.光育)
普通に部屋の電気をつけて、天井にある蛍光灯がターゲットをそれなりに明るく照らすように配置した……くらいのことじゃぜんぜん足りず、ちゃんと表示されないのも当たり前の話です。銃砲店に届く「SCATTが上手く動かない」という相談の多くがそういう状態で使おうとしている例なのだと思われます。
多くのSCATTユーザーは、クリップライトなどを使って標的をすぐそばから強く照らすことで規定照度をクリアしているようです。ISSFルールにはありませんがSCATTのマニュアルによると「LED電球(色温度2700K)もしくはハロゲン電球を推奨」と書かれています。また数字やら単位やら出てくるのでそういうの苦手なかたは今すぐにでもページを閉じるを選択したくなってきてるかと思いますが少しだけ我慢お願いします。
この2700Kというのは、いわゆる「電球色」のことです。普通の蛍光灯みたいに青っぽくない赤っぽい光のことですね。電球色のLEDランプというのはあるにはあるのですが、オフィスなどでよく使われる昼白色や昼光色に比べると暗めになっていることがほとんどです。「色温度2700Kで、1500ルクスを実現しろ」ってのはけっこうな無茶ブリな話ってことになってしまいます。
前置きが長くなりましたが、「あきゅらぼ SCATT空撃ち練習用ライトボックス」はそういった問題を安価に手軽に解決できるアイテムになります。ターゲットが入る小さい箱の中に高照度のLEDテープが張り巡らされており、コンセントにつなぐだけで内部が眩しく発光し、箱の中に貼り付けたターゲットをSCATTで使えるレベルで明るく照らし出します。これは作ってみて初めて思ったことですが、見た目が電子標的っぽい光り方なので試合に向けたイメージトレーニングにも役に立つんじゃないかと思います。
①壁掛け、②平らな台の上に置く、③パイプ台座、④カメラ用三脚と全部で4通りもの設置方法が選べるあたりが便利ポイントですね! ただし、ホームトレーナー用のパイプ台座とか使う場合に注意が必要なのが、実際の標的の高さ、つまり試合本番で標的が設置される高さそのままだと、高すぎたり低すぎたりすることがあるかもしれないということです。実際よりも近い位置に縮小ターゲットを設置する場合の適切な高さの計算については過去に一度記事にしたことがありますが、次のエントリーで改めて説明してみたいと思います。
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