重要なのは「照準」と「トリガー」だということは既に説明したけれど、じゃあ具体的にどんな照準が、どんなトリガーの引き方が良いのかってことについては後回しになっていた。それについて、第3回と第4回で説明しようと思う。まずは照準、つまりは「狙い方」について。
ピストルを使った精密射撃の世界では「六時照準」と呼ばれる狙い方をするのが基本だということは皆さんご存じだろう。リアサイトとフロントサイトの上辺を真っ平らに揃えた状態で、フロントサイトをターゲットの黒丸の下に入れる狙い方だ。
リアサイトが「凹」、フロントサイトが「凸」の形をしたサイトを「パートリッジサイト」と呼ぶが、このサイトを使って狙う限りこの狙い方がもっとも精密に正確な照準が出来るやり方であることは間違いない。ただし、フロントサイトと黒丸の間の距離については人によっていろいろ流儀がある。
フロントサイトの黒い四角と、ターゲットの黒丸の間に僅かに隙間を空ける方法。光の回折現象によって、「黒い物」と「黒い物」を近づけたときに、その間に入る白いエリアは、視覚的に幅の違いが増幅されて見えるようになる。そのためレンズで拡大しているわけでもないのに、とても肉眼では見えないような細かくて精密な照準が可能になるのだ。
フロントサイトの黒い四角と、ターゲットの黒丸をくっつけてしまう方法。場合によってはめり込ませる場合もあるとか。「黒い物」同士をくっつけてしまうと、先ほど説明した光の回折現象による擬似的な増幅効果が無くなってしまい、感覚的なものだけに頼ることになる。「良くないやり方」とされては居るが、感覚的にこちらのほうが良いとするトップシューター(これは国の代表レベルでの話)も多いという。
黒丸とフロントサイトを大きく離す方法。これは屋外射場など光線の具合が時間によって大きく変わってくる環境において有効なのだとか。「僅かに隙間を空ける」やり方だと、ターゲットが明るく照らされているときと暗いときとで白く見える隙間の幅が違って見えてきてしまうため、大きな隙間を空ける必要があるのだとか。当然、精密さでいったら1番の僅かな隙間を空けるやり方には及ばないが、全国大会ですら屋外射場で行われることが多い日本では代表選手もこのやり方で狙っている人が多いという。
長くなってしまったので、「狙い方」についての続きは後編へ。
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