射撃のコツ

ピンポイントシューティング講座第2回・撃つときに何を考える?

投稿日:2009年4月7日 更新日:

いざ射座に入って銃に弾を込め、的に向けたときにアタマの中で何を考えるか? もちろん「集中する」ことが大事なのは言うまでもないけれど、じゃあ何に集中したら良いのか? 第1回で書いたとおり、集中するべきなのは「照準」と「トリガー」の2つであって、「銃を止めよう」と頑張ってしまうのは間違いだ。

では、その2つのどちらに重点を置いたら良いのだろうか? 人間の意識は2つのことに同時に集中することは出来ない。どちらかに意識が行けば、どちらかが必ずおろそかになってしまう。え? 矛盾したこと言ってないかこいつ? と思われたかも知れない。そう、このままだと「人間には出来ないことを、あなたはやりなさい」と言ってるに等しい。

そこで練習によって身につける必要がある技術がある。「自動化」だ。

自動化というのは、「意識を特に集中しなくても自然に行える」状態のこと。例えば「歩く」という行為。二足歩行というのは非常に難しい技術で、前方に重心を移し倒れ込みながら同時に右足をその倒れ込む方向の少し右前に置くように踏み出し(中略)……という非常に複雑な制御が必要になるが、ほとんどの人はそれをいちいち意識することなく普通に行っているだろう。小さいころから繰り返し繰り返しその制御を行うことで、意識の表面に登らせることなく自動で行えるようになっているからだ。「特に意識せず、複雑で精密な制御を自動的に行える」ようになるには、繰り返しそれを行ってアタマの中にそれ専用の回路を構築する必要がある。

さて、では照準とトリガー、どちらを自動化するべきなのか? これは競技の種類や人によっても答えが変わってくる問題のようなのだが、ことピストル射撃に関しては自動化するのは「トリガーの方」ということで答えが出ているようだ。トリガーは自動化し、撃つときは照準に意識を集中する、それがピストルを使った精密射撃の王道である。

といっても、最初っから最後まで全部自動化しろというわけではなく、それこそトリガーを引く瞬間の直前、1秒からコンマ数秒くらいの間だけ自動化すれば良い。順番としてはこんな感じになる。

  1. まず弾を装填してコッキングした銃を手に持って的に向かい、身体の感覚を確認する(この「身体の感覚」については第5回で説明する予定)。
  2. 銃を持ち上げてターゲットに向け、大まかな照準を行う。このときはまだトリガーには力をかけないか、僅かな力だけをかけた状態。
  3. サイトがターゲットに大まかに合った状態で、意識をトリガーの方に切り替えつつトリガーに力を加え始める。
  4. 「あと一歩でシアが切れて弾が発射される」というところまでトリガーに力を加えたところで、意識を照準の方に切り替える。
  5. 意識はサイトだけに集中し、サイトと的の見え方が良い感じに入ったところで「自動的」にトリガーに加わる力がほんの僅かだけ増えてシアが切れる。感覚的には「照準が合ったところで、勝手に弾が出る」というイメージになれば最高。

もし照準が合った(撃っても良い状況になった)のにトリガーが引かれず弾が発射されなかったら、銃を下ろして最初からやりなおすのがベストだ。「あ、今撃てば良かった、けど撃てなかった、どうしよう、もう一度照準を合わせて、トリガー、トリガー」とか、こんな感じの心理状態になるのが一番良くない。銃をターゲットに向けてサイトを黒丸の下に入れたら、勝手に弾が発射された、びっくりした…こんな感覚での射撃を一度でも経験したことは無いだろうか? もしあるなら、まさにソレは最高の状態だ。それをいつでも再現できるようになれば、世界も夢じゃない。


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