休みを使って、長野県にある美ヶ原高原美術館に行ってきた。小学生だったか中学生だったかの頃に行ったことがあるっきりなので、「ずいぶん久しぶり」どころの騒ぎじゃない久しぶりっぷりだ。
こういう、昔行った場所に何十年ぶりかに訪れるとなると、その寂れ具合にがっくりってのがお決まりのパターンだ。しかしここの場合はメンテナンスのされかたが極めて良好なようで、「今年オープンしたばかりです」と言われても信じそうになってしまうほど、あちこちがピカピカだった。大昔の美化された思い出が美化されたまま残っていた。
美ヶ原高原美術館は、標高2,000m以上、森林限界を超えた高所にある野外美術館。箱根にある彫刻の森美術館と姉妹館という関係にあり、両方とも運営団体は同じ。フジサンケイグループ傘下にある団体ということもあって、テレビで展示物がイメージ映像的に使われることも多い。「アモーレの鐘が11時をお知らせします」のフレーズなんかはお馴染みだ。
抜けるような青空と一面の緑の草原、そしてその中に脈絡なく唐突に点在している「わけのわからない」造形物。なかなかシュールな風景が広がっている。順路なんてもんは存在せず、網目のように無秩序に張り巡らされた道を、好きなように好きな順番で歩きまわる。
展示作品は、眼にも鮮やかな原色でペイントされているものもあれば、鏡のようにピカピカに磨き上げられたステンレスで作られているものもある。かと思えば、鉄で作られていて錆び放題になっているものもあったり、朽ちかけた木材や石で作られているものもある。
作者が一体何を考えてそういうカタチのものを作ったのか、作品を見てからそのタイトルを見て考えを巡らす、ってのは定番の楽しみ方の一つだけれど、そんな七面倒臭いことは全く考えず、これ好きだな、これはちょっとどうかな、これは部屋に飾ってもいいなとか自分勝手に思いながら見て回るのもまた楽しい。
これ、IKEAの照明器具にそっくりな形のやつがなかったか? とか。
ワンピースにこんな感じのキャラいたよな、身体じゃなくて髪型だけれど…とか。これを作ったヤツ、小さいおっぱいにどれだけ思い入れがあったんだ、とか。
近代美術めいたもんばかりじゃなくて、ごくフツーの彫刻(ブロンズ像)も、ところどころに飾ってあったりする。でもこういうヤツって美術とか芸術とかそういうレベルを超えて、どう見てもポルノというか卑猥っぽいイメージが前面に出てるもんも稀にあるよね…。卑猥さなんかは微塵もなくても、全裸の幼女像とかは作品単体を撮影した写真をブログに掲載したら児童ポルノ陳列とかそういう罪で捕まっちゃうんじゃないかと心配になる(だから遠景のみ)。
えっと、これって金田バイク? みたいな中途半端にヘンリー・ムーアっぽい作品とか。
ワンフェスにこういう流体表現してる作品ってけっこう多いよね、みたいな作品とか。
かなり広い上に起伏もあるし、なによりも海抜2000m超の高地だけあって、歩いてるだけですぐに息が切れる。といっても、子供を連れているわけでもなく自分勝手に自分のペースで回れるので、もし連れがいたりしたら「いつまで歩いてるのよ」とかキレられること間違いなしのスローペースで歩いていたら、気づいたら3時間以上も経っていた。さえぎるものがない夏の強烈な日差しに焼かれたせいで、いまだに顔がヒリヒリと痛い…。
丸一日、かなりの非日常というか、いろんな意味で「ありえないカタチをしたもの」が林立する中を歩きまわるというのは、なんというか日常で凝り固まった心が一気にほどけていくみたいて、じつに良い気分になれた。たまにはこういうのもおすすめ。