人によっていろんなカスタムのアプローチがあるのが競技銃の面白さ。「え、それどうなの、ちょっと撃たせて」ってのは、実銃だと法律違反になっちゃうからやりたくてもやれないけれど、エアガン(玩具銃)だとOKになるのも有り難いところ。といっても個々人の身体とかトリガーの引き方とかに合わせてあることもあって、「他人の銃を借りて撃っていきなり良く当たる」ってことはなかなか無いものだ。
けれどそういうのとは別に、トリガーとかグリップとかの調整は自分用にしてある銃でも、撃つ人によって弾が当たる場所がぜんぜん違ったりすることがある。サイトの調整だけ上手い人にやってもらって、バッチリ真ん中に当たるように調整されているんだけれど、それを受け取って自分で撃ってみるとなぜか真ん中から外れた場所にあたる…なんて例だ。狙い方も特に間違ってるわけじゃないのになんで?
同じことが、机の上とかに置いてきっちりと真ん中に当たるように調整した銃を、立ち上がって競技と同じ撃ち方で撃ったときにも起こる。真ん中から外れて、上とか下にまとまってしまう。やっぱりこれって狙い方が悪いんだろうか、もっとしっかり銃を止めないとならないんだろうか…っていう悩みをかかえることになったりする。
それって、もしかしたら、銃を持つ高さの違いが原因かもしれない。
「銃を持つ高さ」、言い換えると、「銃とターゲットの高低差」のこと。ターゲットの高さはキッチリと決められていて変わらないけれども、人によって銃を構える高さが違う。背の高い人は高い位置で、低い人は低い位置になる。机の上に置いたりして撃てばなおさら低くなる。
とりあえずAPSカップの場合、立射ステージではターゲットの中心と床の距離(高さ)は1.4mと決められている。身長が180cmくらいの人だと、銃の高さはターゲットよりもかなり高くなるため、撃ち下ろし気味に狙う形になる。
撃った弾は一直線に飛んでいくわけじゃなく放物線を描くわけだからこの図と同じ形にはならないが、あくまでイメージ的に「下に向けて撃つ」という感じになるということだ。
これに対して身長が150cmくらいの人だと、ちょうど銃とターゲットの高さが同じくらいになる。実際には少し銃を上に向けて撃つような形になる。
狙った場所と実際に弾が当たる場所の差(落差)は、弾を水平方向に向けて撃ったときに最も大きくなり、水平から外れると、それが上方向でも下方向でも落差は小さくなる。背の高い人にサイトを合わせてもらった銃を背の低い人が受け取って撃つと、弾は狙った場所より下に当たるようになる。逆の場合は上だ。
この現象、シルエット競技の時にはさらにややこしいことになって射手を悩ませる。シルエットでは立射の他に伏射のステージがある。立射ではブルズアイと同じくターゲットの高さは1.4mだが、伏射だと数cmくらいしかない上に銃を構える場所も地面ギリギリになるため、少し撃ち上げるような形になる。身長が150cmくらいの人だと立射と伏射で狙う場所はほとんど変わらないが、それより身長が高い人、あるいは低い人だと狙う場所を変える必要が出てくる(一般的には、立射の時よりも上を狙う必要がある)。
この、「立射と伏射での着弾位置の違い」というのが、射手の背の高さによって変わってくるのが、悩みどころというわけだ。他人の話を聞いて同じように合わせても自分の場合でうまくいくとは限らない。結局のところ、自分で自分の銃を使ってシューティングレンジでペーパーターゲットを何発も撃って、どこを狙うとどこに弾が当たるのかをキッチリとデータとして記録しておくしかないわけだ。
これまで書いた射撃入門記事や、受講した射撃講習会・メンタルトレーニング講座で得た知識などをまとめて、「ピストル射撃入門」としてKDP(Amazonの電子書籍)として販売しています。
ピストル講習会 ~エアガンシューティングからオリンピックまで、すべてのピストルシューターのための射撃入門~
ピストル講習会・プレート編 ~3秒射・速射の技術や理論と練習方法について~