実銃射撃 海外の反応シリーズ

【海外の反応】射撃を「観て面白いスポーツ」にするとか無理だろ

投稿日:2025年9月5日 更新日:

昨年の8月以降、エアピストル競技をやってみたい、という動機で射撃を始める人は確実に増えました。そのきっかけはもちろん、パリ五輪においてエアピストル競技が大注目されたことです。

奥戸スポーツセンターの射撃場は、誰もが通る場所に入口があるので、通りがかりの人が興味を持って覗いてくるということはよくあります。もちろん見学はいつでも歓迎なので、声をかけて中に入ってもらって射場設備の説明とか競技の紹介とか、あとビームの日であれば実際にちょっとだけ撃ってもらったりとかすることもあります。

パリ五輪以前だったら、「エアライフル」とか「エアピストル」での競技スポーツというものが世の中に存在しているということを説明するところからスタートでしたが、今だと「無課金おじさんのアレ」で通用するのは本当にありがたいですね。この「ドマイナー」だったスポーツの知名度は、ここ1年で確かにアップしました。

けれど、一つ残念なことが。「無課金おじさん」でエアピストル競技を知って興味を持ち体験に来てくれるような人でも、実際に「オリンピックでの射撃競技を、中継とか見逃し配信とかで観ましたか?」と質問すると、ほとんどの人が「いや、それは観てないです」と回答されるのです。

漫画家の逆木ルミヲさんが描いたユスフ・ディケチ選手の立射姿勢のイラスト(あれは素晴らしかった)がバズったものを見たとか、Youtubeでのキリヌキ動画を見ただけとか……ほとんどの人はそんな感じです。実際の中継映像を観たって人はまずいません。

まあ、それも無理はないと思います。パリ五輪における射撃競技の中継映像は、現地から送られてくる動画をそのまま垂れ流ししてるだけで、日本語での実況も解説も全くない、もちろん競技のルールの説明もないし出場選手のプロフィール紹介もないという、完全に視聴者置いてけぼりなものでしたから。しかも上記のバズったユスフ・ディケチ選手が登場していたのは、ただでさえルールが異質で複雑でわかりにくいMIXのメダルマッチです。解説なしの現地での英語音声だけで視聴して、競技そのものを「面白い」って思える人がどれだけいるか……。

とはいえ、解説があれば面白いと思えるのかどうかというと、どうなんでしょう。というかそもそも、「一般の人に射撃競技を観戦して、面白いって思ってもらうなんてことは可能なのか」という根源的な問題があります。実際に競技をやってる私達にとっては非常に興味が惹かれる面白い映像です。良く知ってる人、一方的に知ってるだけの人もいれば本当に知り合いの人なんかも時々混じってたりする世界大会の中継映像です、興味を惹かれないわけがありません。一見すると静止しているようにしか見えない据銃であっても、よく見ると(世界トップレベルとしてはありえないほどに)緊張で激しく揺れ動いてるのが見えたりすると、「ああ、やっぱり同じ人間なんだなあ」って微笑ましくなっちゃったりすることもあります。

ただ、そうじゃない一般の人にとっては? 動きがあるわけでもない、ドラマチックな大逆転があるわけじゃない(たまにありますが)、駆け引きとか戦略があるわけでもない、やってることはただ「同じことを何度も正確に繰り返す」という、ただそれだけです。そんなものを「観ていて面白いスポーツ」として演出するなんてことが、本当に可能なのでしょうか?

2028ロス五輪において、ラピッドファイアピストル競技が(若干のルール変更はあったものの)存続するということが決定したというニュースを受けて、海外の射撃専門BBS「TargetTalk」で活発な議論が行われていました。かなり面白いやりとりになっていたので、抜粋して紹介してみたいと思います。

オリンピック・ラピッドファイア 2028 LA

引用元:[TargetTalk] Olympic Rapidfire 2028 LA


  • ISSFから、2028ロス五輪においての射撃競技の割当が発表されました。
    ラピッドファイアは決勝が6人から8人に増えるという変更がありましたが、なんとか残ってくれました。(デビッドM)
  • 良いニュースですね。6人ではなく8人ということは、どのような編成にするのでしょう? 興味深いですね。ターゲットセットが3セットではなく4セットになるということでしょうか?
  • 決勝進出者数を増やすのは簡単そうに見えますが、現在のISSFルールでは、かなり大規模なロジスティクスの変更が必要になります。(ピーター・ラヴェット/オーストラリア、ホバート)
訳注:ラピッドファイアピストル競技は、25m先にターゲットを5つ、横に並べたものを短い制限時間(数秒とか)で撃っていくものです。ターゲットの横幅があるので他の種目と違って8人分のターゲットを並べる、ということができません。なのでこれまでの決勝では、ターゲットを3セット並べ、決勝に出場した6人の射手は2人ずつ3つのグループに分かれてターゲットの前に2人並んで立ち、かわりばんこに撃っていくという形になっていました。
  • 決勝でのターゲットは2セットに減らすこともできます。選手は撃つときは射撃場所まで移動し、撃った後は待機場所に戻るといった動きを繰り返すのが想像できます(例えば走り幅跳びのように)。観客はボディランゲージなどを見ることができるでしょう。(ゴーストリップ/ギリシャ、アテネ)
  • スポーツピストル(訳注:ラピッドファイアだけでなく女子25mピストルなどでも使用される、セミオートで連射できる5連発の競技用ピストルを一般的にスポーツピストルと呼びます)は、特にクラブレベルでは、新しい射手を育成する上でより良い競技だと思います。その中でもラピッドファイアは特にTVフレンドリー(テレビ映りが良い)です。

    これは射撃競技の知名度UPや普及にとって非常に重要です。

    新しいファイナルでは、現在と同じように標的5つにつき射手2人、合計4セットの標的が必要になると思います。
    オリンピックやワールドカップなら大した問題ではありませんが、クラブの試合では非常に厄介な問題になるでしょう…。(rmca/ポルトガル、リスボン)

  • >これは射撃競技の知名度UPや普及にとって非常に重要です。

    本当にそうでしょうか? 4年に一度の、しかも15分程度のダイジェストでしか放送されないイベントを基準にしてスポーツ全体の判断を下すなんて、そんな考え方には断固反対です。

    たしかに前回のオリンピックではソーシャルメディアが盛り上がりましたが、私の知り合いの射撃をしない人はネットで特別に流行ったポーズやフレーズなどは知っていても、実際の競技を見た人は全くいませんでした。ラピッドファイアだろうが女子25mだろうが10mファイナルだろうが、私の知る限り、人々がそれに寄せる関心の大きさに違いはありません。

    実際のところ、射撃競技を視聴するのは、もともと射撃スポーツに関心を持っている人だけです。そして、ラピッドファイアピストルは参加に当たってのハードルが極めて高い異端の競技なので、射撃スポーツに「関心がある」という程度の人たちの共感を集めることは無理です。

    もし私のクラブで「なぜ射撃を始めたのですか?」というアンケートをとったら、「テレビやオリンピックで見たから」という回答は、最近入会したメンバーでは1人くらいで、長年のファンでは全くゼロでしょう。そして、その中でラピッドファイアピストルについて何らかの形で言及する人は、全くゼロでしょう。(グリッピー)

  • >ラピッドファイアピストルは参加に当たってのハードルが極めて高い異端の競技なので、射撃スポーツに「関心がある」という程度の人たちの共感を集めることは無理です。

    その意見には賛同できません。ラピッドファイアはオリンピック競技という枠を超え、ISSFの全ての大会で競技として扱われており、その模様はYouTubeで視聴することができます。私は所属している2つのクラブでラピッドファイアを射撃しています。確かに、片方のクラブでは少数派ですが、もう片方のクラブでは熱心なファンがいます。

    このフォーラムで目にしたラピッドファイアへの反対意見のほとんどは、米国在住の射撃手からのものだということを、謹んで申し上げます(訳注:ラピッドファイアの人気がないのはアメリカくらいだろ、って遠回しに言ってるんですね)。たとえ米国が次のオリンピック競技を開催することになったとしても、ISSFの射撃競技は米国だけのものではありません。(ピーター・ラヴェット/オーストラリア、ホバート)

  • 私はスイスに住んでいますが、村のほとんどがラピッドファイア対応の25m射撃場を持っています。しかし、参加者が非常に少ないため、参加するだけでほぼ自動的に全国大会への出場権を獲得しています。つまり、ライフル射撃全般でオリンピックメダリストを何人も輩出しているスイスですら、なぜかラピッドファイアに力を入れている人の数は、私たちのクラブのスポーツピストル射撃選手の数よりも少ないということになります。

    私が最も反対しているのは、「ラピッドファイアの方が観客にとって興味深い」という考えです。現実を見ると、とてもそんなふうには思えません。射撃競技に関わっていない外部の人にとって、ラピッドファイアの「目新しさ・面白さ」は、他のISSF競技とたいして変わりません。パリオリンピックで「一般観客」の大きな注目を集めたのは何だったかを思い出してみてください。彼らは、ユスフのクールなスタンスや、他の射撃選手が面白い用具を使っていることにばかり注目していました。一方、この競技を趣味としている人たちは、1秒間にトリガーが何度引かれるかよりも、誰が競技に参加しているかを気にすることが多いです。

    そもそもの話ですが、私は、「観客にとっての魅力」なんてもの自体、さほど重要ではないと思っています。ほとんどの参加者は、身近な人が競技に出ていない限り、積極的に観戦しようとはしません。だからこそ、4年に一度テレビで放映されるわずかな露出に基づいてルールを決めるのは意味がないのです。

    だからこそ私は、射撃を「架空の観客にとって魅力的なもの」にしようなんていう考えには強く反対します。観客からすれば「魔法の数字」のようなものが画面に表示されるまで、できるだけ動かないようにするスポーツ、それが射撃です。そんなものを視聴者からみて魅力的にしようなんてのは、はっきり言えば無駄な努力にほかなりません。その際に、「立て続けにショットを打つ合間に数度ずつ角度を変える」なんて要素を追加したところで何の救いにもなりません。(グリッピー)

  • 50mフリーピストルがなくなったのは今でも残念です。
    (訳注:それはほんとにそう!)

     あれこそは真のスポーツ競技であり、「防衛射撃」とは全く関係がありませんでした。なにより、男女が同じ順位で出場できたのです。(gn303/ベルギー)

  • >私はスイスに住んでいますが、村のほとんどがラピッドファイア対応の25m射撃場を持っています。しかし、参加者が非常に少ないため、参加するだけでほぼ自動的に全国大会への出場権を獲得しています。

    50mフリーピストルでも同じことが言えます。昨シーズン、スイスのこちら側では、4人の候補者から4人が予選を通過しました。射手不足のためほぼ全員が予選を通過し、全国大会への出場権を獲得します。しかし、ダイナミック射撃には出場待ちリストがあります。つまり、一般の人々が何に興味を持つかが重要なのです。

    ユスフ・ディケチは、耳栓も眼鏡もなしで射撃しましたが、それは彼がそういった道具を「必要としなかった」からです。それによってピストル射撃競技はこれまで以上に大きく報道されました。しかし残念ながら、彼に関する報道の多くは、「道具を使わない素晴らしい射撃手」としてのものでした。一般的なスポーツチャンネルだけでなく、正規の射撃スポーツチャンネルに至るまでです。(シュッツェンCH/スイス)

訳注:ちょっと分かりづらい言い回しですが、これはつまりは当ブログで何度か書いてるのと同じことじゃないかと思います――つまり、道具を使わないのは、ただ「使わないほうが自分に合っているから使っていないだけ」というだけのことなのに、報道側は何かしらのドラマとか意味づけをムリヤリ追加して、まるで「使えば有利になるであろう道具を、なにか信念を持って使わずに、ハンデを背負った状態で勝負に臨んだ射手」であるかのような扱いをするところが多かった、ということに苦言を呈しているんじゃないかと思います。

「無課金おじさん」に幻想を持ちすぎないで

  • >グリッピーさんへ
    私たちが唯一意見が合わないのは、このスポーツが「TVフレンドリー」であることは重要なのか、そうでないのかということだと思います。

    私は重要だと思っています。それだけが、射撃スポーツを銃に伴う暴力から距離を置く最善の方法だと思うからです。そして、それを伝えるためにできる限りのことをすべきです。アメリカやスイスではそれほど重要ではないかもしれませんが、世界の他のほとんどの国ではほぼ当てはまります。なぜなら、いくつかの国が銃、特にピストルの所持を許可している唯一の理由として、「それがオリンピックの競技に存在しているから」というものがあるからです。オリンピックがなければ、このスポーツはもっと困難になり、おそらく射撃自体ができなくなるでしょう。

    残念ながら、ポルトガルでもラピッドファイアは衰退の一方です。施設は存在していますが、撃つ人がほとんどいません。

    これは私の意見ですが、男女ともスポーツピストルに統一してしまうという方が、まだ良い選択肢だと思います。初心者にもクラブにも優しく、レベルの高い競技でも、テレビで見られるような躍動感を維持できます。しかも、既にオリンピック正式種目になっています! というか現状のように、男性と女性で同じ射場・同じ銃を使って、別々の競技を行うというのは意味が分かりません…現代社会にそぐわないです!

    とにかく、2028年まではラピッドファイアが開催されますが、LAの後にはまたこの会話が交わされることになると思います…(rmca/ポルトガル、リスボン)

  • >グリッピーさんへ
    あなたの意見には概ね賛成です。

    しかし、スポーツが「TVフレンドリー」であるというのは、具体的にはどんな時でしょうか? それは、何か見るべきものがある時です。例えばクレー射撃は、命中が目に見えるからです。標的射撃は、射撃の結果は目に見えにくいですが、電子標的であれば、観客はより近くで結果を見ることができます。

    男女が互いの顔面を殴り合うボクシングは問題ないようですが、銃器をスポーツとして使うことはあまり歓迎されていないのはなぜでしょうか? 理解に苦しみます。しかし、私たちはこれからもこのスポーツを楽しみ続けましょう。(gn303/ベルギー)

  • >銃器をスポーツとして使うことはあまり歓迎されていないのはなぜでしょうか? 理解に苦しみます。

    射撃が(あるいは他のスポーツが)社会にどれだけ受け入れられているか(あるいはいないか)ということは、「TVフレンドリー」であるかどうかとは実のところ全く関係ないと思います。

    もし「観ていて最も面白くないスポーツ」を意図的に作るとしたら、それは射撃のようなものになるだろなーってジョークを射撃仲間内で言うことがあります。射撃とはどんなスポーツか? できるだけ動かずに画面に数字が表示されるスポーツです。スコア以外には何も見るものがありません。しかも、スコアがすべて10で、たまに9が出るだけです。観客にとって唯一見ることができる「点数」ですら退屈そのものです。

    他のほとんどのスポーツは、観客が見るべき「なにか」があり、結果が明らかになるまで緊張感があります。スヌーカーやカーリングのような、一般的には「退屈」と呼ばれるスポーツですら、テーブルの状態を観察して推測することができます。多少リスクのあるショットを打つか打たないかという戦略的な判断があります。レースでは順位が物理的なもので、追い越しなどのリスクを負う動きを見ることができます。ボクシングでは、選手の状態が変化し、パンチの繰り出しやカウンターを見ることができます。スキーでは、ライン取りを観察し、ミスが次のスプリットまでどれだけの時間をロスしたかなどを考えることができます。

    しかし射撃スポーツには、「何か素晴らしいこと」が起きて大逆転するようなチャンスはありません。3人のディフェンダーをドリブルで抜き去り、華麗なゴールを決めるようなシュートは、射撃にはありません。

    それに射撃スポーツでは、射手による射撃のテクニックを外部から観察して結果を推測することは、たとえ熟練者であっても難しいものがあります。誰が見ても一目瞭然なミスを犯すような初心者がいれば別ですが。そして、緊張感も生まれません。あるのは瞬間的な結果だけです。

    射撃スポーツには、目に見える戦略もなければ、リスクを取って逆転を狙うような場面もありません。すべての射撃は同じテクニックで打たれ、期待される結果はいつも同じ、「10」です。それがどのくらい面白いかというと、たとえるならば「コインを投げて表が出たら10、裏が出たら9とスプレッドシートに入力するのを見ている」のと同程度には面白いでしょう。

    だからこそ、速射、より速い決勝、あるいは独創的な採点方式でこの状況を改善することができるだなんて見当違いな主張をする人々に、私は憤慨しています。彼らは「不安定な結果」や「同じことの繰り返し」を「興奮」と勘違いしているのです。射撃という行為自体が、見ているだけで退屈なものです。本質的に退屈なことが、同じ時間内に何度も起こったからといって面白くなるわけがありません。コイン投げを見るのに興味がないなら、おそらくコインを素早く投げたり、直接対決でコインを投げたりすることにも興味がないはずです。それと同じです。

    もし、このスポーツをもっと面白く観戦できるようにしたいなら、射撃手の実際の苦闘や技術の細部を、外部になんとかして伝える方法を見つける必要があります。なぜなら、先ほど述べたようにそこには「射撃スポーツ」が本質的に持っているのに、観客には伝わらないせいで「射撃スポーツの観戦」には欠けてしまったものがすべて備わっているからです。

    勝敗を決するような一射をするときに緊張して体が震えてしまうと、状況は一変してしまいます。しかし、現実に存在する「一般の観客」は、それを見抜くことができません。それをわかってもらえるようにするためには、銃の動きを定量化して表示することができるシステム、たとえば射手から隔絶されたSCATTのようなシステムが必要です。射撃手の心拍数を表示するというやりかたもいいかもしれません。

    射撃競技をテレビで観戦すると、標的の位置や大きさとは無関係に、射撃手だけが映し出されます。つまり、「人々が変なメガネをかけ、魔法の数字や円がグラフィックで表示されている」というだけ、それが画面に映し出されているすべてです。この点が改善されない限り、ルール変更でより見やすくしようとしても、なんの意味もありません。(グリッピー)

  • 自分自身が少数派だということを自認した上で発言しますが、私はISSFの試合を見るのがとても楽しいです。確かに他のスポーツほど派手ではありませんが、注意深く見れば、選手たちが心理的なプレッシャーを乗り越えようとしているのがはっきりと分かりますし、様々なホールド、テクニック、グリップの修正を見るのも面白いです。(KZMNT)
  • >私はISSFの試合を見るのがとても楽しいです。
    それができるようになるためには、自分自身でそのスポーツを経験し、その複雑さを理解している必要があります。(グリッピー)
  • ええ、分かります。部外者にとって分かりやすいスポーツとは言い難いのは確かです。しかし、決して興味を惹くことがないスポーツだとも思えません。実際、時が経つにつれて徐々に主流になっていくと思っています。ユスフ・ディケチとキム・イェジは、初めて話題になったピストル射撃選手というわけではありません。バツァラシキナも数年前に同じように大きく話題になったのを覚えています。

    しかし、結局のところ、本当にメジャーなスポーツでない限り、そのスポーツを支えるのは、そのスポーツを楽しんで参加する人々のコミュニティによる力が大部分を占めるという現実を受け入れなければなりません。

    個人的には、ラピッドファイアは25mセンターファイアかリムファイアに置き換えられるべきだったと思いますが、決勝のグループを大きくすることも、その精神に合致していると思います。選手にとってより多くの機会が生まれ、それは全体としてメリットになります。(KZMNT)

  • テレビ中継に限って言えば、このスポーツの複雑な側面を熟知し、解説できる解説者が必要です。率直に言って、ISSFがYouTubeチャンネルで起用している二人の解説者はひどいです。(ピーター・ラヴェット/オーストラリア、ホバート)
  • それでも難しいですね。「語るのではなく、見せる」という原則はここにも当てはまると思います。解説は、読者が実際に「観て、わかる何か」を教えてくれる必要がありますが、射撃における「何か」は普通に見るだけでは絶対にわかりません。ただ説明されただけでは、そこで競技をしている人たちにとって重要で複雑な部分を理解するのにかなりの時間がかかります。(グリッピー)
  • 25メートル競技では、Youtubeで見ることができるのは女子ピストルの試合だけです。
    ラピッドファイアはダイナミックな射撃の流行に乗ろうとしているように見えますが、実際に効果が出ているかというと、むしろ逆効果になってしまってるようにしか見えません。
    射撃スポーツの本質とは? それは精密さでしょう! しかしラピッドファイアは、その本質を少し損なっています。そして、射撃スポーツの魅力を(あまり意味のない部分に)分散させています。
    精密射撃こそが最高にクールなのに、残念です。
    精密射撃をする人は、地球上で最高の射撃手です。(ブレットファン/ヨーロッパ)
  • グリッピー氏が言うように、SCATTを使って一射ずつの「実際に撃つまでの経緯」を見せるという点には一理あると思います。実際にはそれに加えて、「構えて、撃つ」というそのプロセスが持つ複雑な仕組みを解説してくれる、知識豊富な解説者も必要です。私はゴルフは退屈なので見ませんが、ゴルフがどれだけ大きなイベントなのかは知識として知っています。ただ一人の選手が地面の穴にボールを入れるだけです。美しい芝生のフィールドでプレーするのを見て、完璧なショットを打ったとしても、ハザードが邪魔をして進路を阻むのを見ると、ロマンを感じる人もいるでしょう。ある意味、精密射撃スポーツにも言えることですが、私たちが競技をしているのは残念ながら緑の芝生ではありません。(ポークチョップ)
  • ピストル射撃競技は、一般の視聴者にとって退屈で見られない――というコメントがたくさんありますね。
    現実に、ダーツ、スヌーカー、カーリングなど、「退屈なスポーツ」とされているけれど、大勢の観客が熱狂して観戦することが常になっているものはたくさんあります。それらを参考に考えてみると、ピストルが見応えのあるスポーツになるために必要なことが見えてきます。それはつまり、2人のプレイヤーまたはチームが直接対戦することです。

    それともう一つ、逆転の要素を盛り込むことです。一度、大きな差が付いてしまったプレーヤーに大逆転の可能性が残るスポーツは、ダーツやテニスなどごくわずかです。

    ですから、ピストル射撃をもっと見やすいスポーツに変更したいのであれば、例えば2人の射手に10発撃たせ、1セット3ゲーム、3セットなどを許可するといいでしょう。小数点による採点が必要になります。各射手は1発あたり30秒の持ち時間を持ち、同時に射撃するのです(時間はもっと短くてもいいかもしれません)。

    このアイデアは、多くの反発を受けるでしょう。そのくらいは分かっています。しかしこれは確かに楽しいです。実際に私ともう一人の射手で試してみました。とても見応えがあると思います。

    視聴者が増えれば、将来のプレーヤーが増え、資金も増えます。

    そう、将来についてですが……私はイギリスに住んでいて、実弾を撃つ拳銃ではなく空気銃のみでピストル射撃をしています。レーザーガンを使った50m長距離競技みたいなものに参加できれば嬉しいですが、ここではまだそういう競技は行われていません。結局のところ、精度が重要ですから。でも、エアピストルを使った25mは面白いかもしれませんね。これもまだ行われていませんが。あくまで私の考えです。(ブレットP)

  • 1vs1ゲームが面白い、というのは確かにその通りだと思います。私が知る範囲である程度以上に視聴率の高い射撃競技の一つに、ドイツのリーガがあります。5人1チームですが、各射手は他チームの特定の相手と直接対戦する形になります(訳注:「ドイツのリーガ」というのがどんなものか調べてみようと思ったのですが全く詳細がわかりませんでした。柔道や剣道の団体戦でいうところの、先鋒・次鋒……大将みたいなシステム?)。興味深いのは、実際のプログラムが通常の40発エアピストル/ライフルの試合であるという点です。変わった採点や計時はありません。

    5回の直接対決のうち、少なくとも1回は接戦になり、それが試合を面白くするのに十分であるようです。また、例えば相手より早く得点することで「上回らなければならない」スコアを提示し、相手にプレッシャーを与えようとするといった戦略もあります。

    個人的には、変動性を高めることで「大きな変動を許容する(大逆転を可能とする)」という考えに基づくものはすべて大嫌いです。これは、既存のISSF射撃競技の本質に反すると思います。ですから、既に参加者に人気のあるスポーツを、「架空の観客」のために変えるようなものには反対します。

    また、不確定要素は何かと関連している場合にのみ興味深いものになります。アスリートが何らかの形でアプローチを変えるのを見ることができたら面白いでしょう。しかし射撃の場合は、そういうやり方とは相性が悪いのではないかと思います。やったところで、「ランダム性を高めるために、ランダム性を持たせる」だけでしょう。

    実は私もこういうイベントに出場したことがあります。単発のエアピストルで2分間に5発撃ち、「より多くの10点」を撃った人がそのラウンド優勝するというルールです。たまにやるには楽しいですが、もしそれが標準のルールになってしまったら、私はもうピストル射撃をやめます。だって、その時点で全く別のスポーツになってしまうからです。

    本音を言えば、現状のヘンテコなファイナル形式にも同じことを思っています。「退屈な」60発競技とはあまりにもかけ離れたファイナルは、予選とは全く違う競技になってしまっています。それは馬鹿げていると思います。

    「マラソンは退屈だ…もっと面白い決勝が必要だ。だから、上位8名をタイムを無視して障害物競走で競わせるんだ!」と言っているようなものです。(グリッピー)

  • なるほど、あなたの言いたいことは分かりました。
    では、ファイナルも(予選とは別に)60発撃つべきということでいいんですか?
    そもそもファイナルは必要なんですか?
    マラソンは1レースだけで終わりなのに?(ブレットP)
  • もし私がルールを決められる立場にあるとしたら、そうですね、多すぎず少なすぎずということで30発くらいにするのはどうでしょう? 制限時間は5分・5発くらい。少なくとも予選は意味のあるものにしましょう。

    ファイナルが導入されたばかりのころの、予選60発の得点に加えてファイナルで10発撃ち、その合計点で順位を決める形式が好きでした。あの頃はファイナルの世界記録もまだ意味を持っていました。あれを20発か30発に延長すればいいかもしれません。その方式だと、ファイナルで誰が勝つかという結果が、予選で既に「決まってしまう」という批判があります。しかしトップレベルでは予選は接戦になることが多いので、それはあまり問題にはならないでしょう。もし予選で大差がついてしまっていたら……「圧倒的に優れた射撃手が勝つ」だけです。

    (訳注:その頃、予選で20点くらい差が付いてどう頑張っても逆転なんて無理って状況でファイナル進出するなんて経験をしたことがあります。開き直れたせいか妙に調子が良くて、あとちょっとで10点差になるかってとこまで追い上げたのも良い思い出)

    ウサイン・ボルトのレースを大勢の人が観たのは、彼の勝利が確実だったからです。つまり明確な勝者がいるということそのものは、修正する必要のある問題というわけではないということです。そればかりか、ファイナルに「イーブンではない」点数差が付いた状態で臨むことは、むしろ人々の興味を惹きやすい緊張感を生み出すと私は思います。そこには、「追われる強者」と、「英雄的な活躍のチャンスがある弱者」がいます。

    それに対して、今のようにファイナルが得点差なしのゼロから始まり、選手をよく知らない視聴者には「これまでの結果はどうだったのか」が全く伝わらず、愛着のない選手が12発撃ってそのうち9.0を一度出しただけで脱落してしまう――なんていう展開は、緊張感でもなんでもなく単なる「ランダムなくじ引き」でしかありません。

    さらに精密射撃スキルの一部は時間管理だと私は感じていますが、なぜかファイナルではそれを完全に排除しています。

    それともう一つ、ファイナルはオリンピックにしか存在せず、オリンピック競技にのみ存在するということです。

    以上のことから、私はファイナルは「必要」なものではないと思っています。

    追記:このスレッドはラピッドファイアについてだったのに、熱くなってつい話を広げすぎてしましました。ラピッドファイアのファイナルは予選(実際の競技)と基本的に同じです。それは良いことです。(グリッピー)

  • ISSFがラピッドファイアを残すかどうかの投票をした、その結果を発表しています。かなりの僅差だったようですね。(アズモダン/ルーマニア)

訳注:この円グラフ、「RFP(青色)」と「SPM(赤色)」のどちらをロス五輪に採用するかという投票結果を示しているものです。RFPというのはラピッドファイアピストル(5連発のセミオートピストルで横に並んだ5つのターゲットを順番に撃っていくもの)、SPMというのは女子25mピストルと同じようなルールで男子25mピストルも開催する(5連発のセミオートピストルを使うところまでは同じですが、5つのターゲットを一度に撃つのではなく、銃を下ろした状態から合図と同時に銃を上げて一発だけ撃つ、というのを5回繰り返すというものです)かどうか、そういう話のようです。僅差ではあるけれど、とりあえずロス五輪では「ラピッドファイアを基本的に今のままのルールで残す」ということに決まったということがわかります。
  • ISSFの現役射撃選手による投票結果……ラピッドファイアの存続に賛成205票(53.5%)に対し、反対178票(46.5%)でした。ISSFの現役・非現役射撃選手全体では、ラピッドファイアに反対263票(51.4%)に対し、反対248票(48.6%)でした。

    つまり、賛成と反対が半々ということです。投票者の中にはラピッドファイアの選手も相当数含まれていたことをお忘れなく。

    いずれにせよ、ロサンゼルスではこの問題は決着したようですが、2032年のブリスベンでは再び問題になると思います。(rmca/ポルトガル、リスボン)

  • 長期的な視点で見ると、現在そして将来の5連発ピストル競技者の基盤は、ラピッドファイアとスポーツピストルのどちらでより存続の可能性が高いのでしょうか? アメリカでは多くの現役選手が(ラピッドファイアよりも)スポーツピストルの方を支持するでしょうが、他の国ではそうではないかもしれません。

    とはいえ、「世界中に多くの競技者がいる」ということは、そのスポーツを五輪正式競技として残すかどうかという意思決定を行う人々にとってたいして考慮される要素ではないかもしれません。フリーピストル選手はそれなりに多かったはずですが、あまりにもあっさりとオリンピックから排除されてしまいました。 男女混合のエアピストル競技をなんとしても導入しなければならなかったからです。私はいまだにそのことが腑に落ちません。(IPシューター)

訳注:フリーピストル射手の一人としてはこの意見に賛同せねばとも思うのですが、その一方で10mピストルMIXの中継映像が全世界的にピストル射撃が大注目されるきっかけになったという現実を見ると、「結果的にはそれで良かったのかもしれない」と納得しなければならないのかというプレッシャーも感じます……。

かなりの過激派な人が、「そもそも射撃スポーツを、観戦して面白いものにするなんてことは無理だ」というような趣旨のことを熱く語っています。

射撃とはどういうスポーツか……それは、同じことをただ淡々と繰り返すだけ、見た目の動きも「さっきの一射」と「いまの一射」で全く変わらない、その繰り返しを見せられるだけで、変化があるとしたら「画面に表示されるよくわからない魔法の数字(スコア)」が大きかったり小さかったりするというその1点のみ。そんなもんにスピードを早くしたり連射したりする要素を追加したところで「観ていて面白いもの」になるはずなんかない、何の意味もないと主張されています。

ただ、完全に絶望しているというわけではなく、解決策も提示されています。観客には伝わっていない「射撃の本質」を、電子デバイスを使って可視化して伝えるようにすることで、これまではわからなかった面白さがわかるようになるのではないか……というものです。

そういった試みは、実際に行われているようです。ファイナルに進出した選手のピストルにSCATTを取り付け、照準の揺れを観客に見えるようにするというものです。SCATTは画面に表示される着弾位置と実際に弾が当たる位置が完全には一致しないという本質的な問題がありますが、その問題は何らかの方法(電子標的と連動するとか?)を使って逐次補正することで解決しているとのことです。

射撃のTV中継でSCATT付けて軌跡表示されたら面白くね?→やってみました【海外の反応】

もちろん、それを正式に「オリンピックでの決勝でのルール」とするにはいろいろと超えなければならないハードルがあります。普段は装着していない重り(SCATTデバイス)を強制的に銃に追加されるということに難色を示す射手もいるかもしれません(実際には世界トップレベルともなれば、SCATTなしで練習してる人なんていないと思いますが)。射手には当然SCATTが示す照準の軌跡は見えないような形で大会運営されるのでしょうが、観客側から射手にそのデータをもとにした何らかのアドバイスがされてしまうというリスクはあります。

極端な話をするなら、電子トリガーのスイッチを何らかの方法で遠隔操作できるようにしておいて、観客席にいる誰かがSCATTの示す軌跡を見ながら10点に入る瞬間にスイッチを入れて弾を発射する、なんて「チート行為」を行えばほぼ確実にすべてを10点に入れることが可能になってしまいます。そんなことをしたら絶対にバレる……? 基盤レベルで偽造して見た目は絶対わからないようにその機能が追加されたとして、それを大会実行中に防止できるのか、チート行為をしている者を見つけ出して処罰できるのかというと、相当にハードルが高くなってしまうのではないかと思います。

という具合にいろいろ懸念事項はあるものの、「いままで伝わっていなかった部分が、伝わるようにする」ということにより射撃スポーツの観戦というもののあり方をこれまでとは一線を画すものにすることが可能なのではないか、という提言には十分以上に耳を傾ける価値があると思います。少なくとも、ファイナルで撃つ弾数を10発増やすとか5発減らすとかみたいな小手先の小細工よりもずっと効果はあるでしょうし、2人で撃った合計得点が相手ペアより高いとポイント入るなんて特殊ルールをファイナルだけで採用するのよりもずっとわかりやすいのは確かです。

しかしそれをすることで、「一般の人からみても、射撃スポーツが『観戦して面白い』と思えるものになるかどうか」となると、さてどうでしょう。少なくても自分だったら「すげー面白くなるだろうな!」って確信に近い形で思えるのですけれど、それは私が射撃経験者だからであって、そうでない人から見たときにどうなるか? こればっかりは、やってみないことにはわかりませんね……。


[追記]この記事をUPする直前に、「そういえばビームピストルの軌跡表示・得点集計を行うBeamLakeって、軌跡のON/OFFを切り替えられるし、観客に標的を見せたりする機能はもともとついてるから、『観客だけが軌跡を見れる』という形の大会進行ってプログラムいじるだけで実行可能なのでは?」ということに思い当たりまして……。

BeamLake開発元にメールして「こういうアイデアがあるのですが、どうでしょうか」って提案してみたんですよ。

そうしたらすぐさま返信がありました。「すでに実施しています」とのこと。

過去2~3年ほどいくつかの大会で同様のテストを行っており、それどころかまさに現在、青森県の弘前にて開催中のプレ国体でも「観客向けのみ軌跡表示」を行っているとのこと。(写真も送っていただけました・使用許可済)

私ごときが思いつくことなんて当然現場の人は先に思いついてるんですねえ……。

というわけで。青森近辺にお住まいの方、9/5~9/7にかけて弘前克雪トレーニングセンター(青森県弘前市豊田2丁目3-1)にて開催中のプレ国体BR・BP種目、お暇がありましたらぜひ見に行ってみてください。そして「観客だけが、選手が今どこを狙ってるのかを見ることができる」という大会を観戦するというのがどんな感じか、感想を聞かせてください!

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