今年も、山梨で開催されているワインツーリズムに参加してきました。昨年は1日目が終わったら東京にとんぼ返り、2日目の朝にまた「あずさ」に乗って山梨まで…という日程で参加したのですが、やってみるとえらく体力を消耗してしまうので、今年は最初っから甲府にホテルを取って一泊二日体制で臨むことにしました。
2日目は晴天になったのですが(左写真は2日目のものです)、1日目はあいにく雨が降る寒い1日になってしまいました。朝方はまだぽつり、ぽつりという感じだったのですが、昼過ぎあたりから本格的に降りだしてきます。傘は荷物になると思って雨合羽の上だけを持ってきたのですが、なぜか合羽にフードがついていません。バイクに乗る時のために使っていたから、フードは外してどっかにやっちゃってたんですね…。仕方ないので合羽を頭から被るみたいにして移動するハメになりました。もっとも、服装はユニクロのヒート装備で固めてあるので相当な寒さにも耐えられます。
今年は、受付にて試飲用グラスを渡されるので試飲には基本それを使うことになるのですが、グラスだけポンと渡されるので持ち歩くのに苦労しました。実は、最初のバス停を降りて3歩進んだか進まないかのうちに落として割ってしまいました。最初に訪れたワイナリーにて500円にて同じものを購入できたので助かりましたが……。
見回すと、首から下げるちょうどワイングラスサイズのバッグを使っている人を見かけます。ムチャクチャ便利そうです。話を聞いてみると、「COCOファーム・ワイナリー」というところのイベントで配られているワイングラスホルダーなのだとか。調べてみたら、ちょうど同日(11/17~18)に開催されていたとのことなのですが、どうやって両方に参加したんでしょう…?
東夢
まず最初に訪れたのが、勝沼の中では比較的新しいワイナリーである「東夢」です。地図で見ると「ここを曲がればすぐのはず…」という道を曲がったのですが、いきなり「東夢ワイナリー、ここからは行けません」との張り紙が! だが無視します。スマホのナビを信じて道を突き進みます。自動車はどう頑張っても通れないであろう細い道、さらには「ここ、本当に通ってもいいのか…?」と不安になるような、資材やら作業機械が置いてある細い路地、というかほとんど私有地の中みたいなところを通り過ぎると、川沿いにある大きな新しい道に出ます。その道をテクテクと歩くと、周囲になにもない場所に唐突に建っている大きな建物が見えてきました。
焚き火の匂いが漂ってきます。大勢の人の話し声が聞こえてきます。間違いない、ここが「東夢」です。
有料試飲1回につき1枚、あるいは2000円以上のワインを購入すると3枚、おつまみの引換券がもらえるというシステムになっています。「おつまみ」といってもスナック類がちょっとだけなんてけちくさいものじゃありません。おわんになみなみと盛られたそれだけで十分に食事になるくらいの、立派な「料理」です。
引換券でもらえるおつまみのメニューは、おでん、モツ煮、芋煮、焼き鳥、豚汁の5種類があります。
テントやイスが設置してあって、くつろげるようになっています。有料試飲を繰り返しているとそれだけで引換券がたまり、さらに気に入ったワインを購入すると一気に3枚がプラスされます。1回分で十分にお腹が膨れるのに、5枚やら6枚やら集まっても食べきれません……。結局、そこらへんで食べてる人に「引換券が余ったんですが、要りませんか…?」と半ば押し付けるようにして消費しました。
では、ワインの感想を。甲州は「出来の悪いシャルドネ」みたいな感じ。薄くて香りも味も貧弱、魅力はあまり感じられません。ですが、「ビジュノワール」という新しいぶどう品種で作られたワインが当たりでした。しっかりとしたタンニンがあり香りも高い。カベルネ・ソーヴィニヨンほどクドすぎず、ピノ・ノワールみたいにコクが薄い感じもありません。国産種というとマスカットベイリーAがあるのですが、タンニンが弱く香りだけで薄っぺらい味わいのワインになることが多いのですが(そうならないようにいろいろと工夫するのが醸造家の腕の見せ所でもあるのですが)、ビジュノワールというのは全くそんなことはなくシッカリと芯が通った味がします。実にバランスが取れたワインで驚きました。
無料試飲もあるのですがあまり魅力のあるワインは見当たらず、結局有料試飲のほうばかりを飲むことになります。一杯あたり200~400円くらい。一杯有料試飲をすると、1枚の「おつまみ引換券」がもらえます。なんといっても当たりだったのはビジュノワールです。
なんでもこの「ビジュノワール」というのはごく最近になって作られた新しい品種で、東夢の他はサントリーしか作っていないのだとか。家に帰ってから調べてみたら、山梨県果樹試験場が開発したもので、誕生したのは2007年、ほんとうに「つい最近」なんですね。ブドウ栽培農家向けの技術資料なんかがPDFで公開されていますが、それを読むと「メルローやカベルネ・ソーヴィニヨンに比べると、酸が少なくまろやかでタンニンが多い。赤色が濃くボディもある」なんてことが書いてあります。当時のニュース記事によれば「ワインとして出回るようになるには5年くらいかかるだろう」とのこと。2007+5=2012。つまり今年じゃないですか。
日本のワイン名産地というと「勝沼 vs 塩尻」というのが二大巨頭ですが、一般的に「白が強い勝沼、赤が強い塩尻」という区分けで語られることが多いようです。実際の所、山梨というのは赤ワイン用のぶどう品種を育てるには気温が高すぎる(標高が低すぎる)傾向にあり、育てるブドウの時点でハンデが付いてしまっているというのが最大の理由です。
このビジュノワールは、勝沼にとっては一気に塩尻が持つ赤ワインの牙城を切り崩しにかかるための絶好の武器になるんじゃないでしょうか。少なくても(塩尻の誇る)コンコードのワインより、この日に東夢で飲んだビジュノワールのワインの方が、ワインとしては数段上なんじゃないかと思います。
東夢
http://www.toumuwinery.com/
所在地:〒409-1326 山梨県甲州市勝沼町勝沼2562-2
TEL:0553-44-5535
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