日韓の選手が揃って驚異の大逆転【海外の反応】

2月にインド・ニューデリーにて開催された2017年の射撃ワールドカップ・ステージ1のエアピストル60発競技にて見事金メダルを獲得した日本の松田知幸が、5月にドイツ・ミュンヘンで開催されたステージ4(※)でも銀メダルを獲得しました。

※ステージ2と3はショットガンのみなので、ライフル&ピストルのイベントは実質的にこのステージ4が今年2回目になります。

本戦成績588-26xの首位でファイナルに進んだ松田知幸ですが、今のファイナルのルールは本戦での点数は全てリセットされて全員同じラインからスタートすることになっています。松田は序盤でミスというほどのミスではないのですが芳しくない点数を続けて撃ってしまい、一度はほぼ最下位近くまで順位を落としますが、中盤から韓国のJin Jongohと共に怒涛の高得点を連発し他選手を一気にごぼう抜き。首位を独走していたウクライナのパブロ・コロスチノフには及びませんでしたが堂々たる2位で競技を終えました。

●文中敬称略で失礼します


5月22日、ドイツ・ミュンヘンで開催されているISSFワールドカップのエアピストル(10mピストル)にて、日本の松田知幸(神奈川県警)が銀メダルを獲得しました。写真はISSF公式サイトより。

見どころは、日韓両選手の大逆転です。「東洋の国々からアメイジング・ショットだ!」とアナウンサー大興奮です(23:30あたりから)。

金メダルを獲得したウクライナの選手は若干19才の若者です。ジュニアのワールドレコードを更新したというのが一番のニュースですので、ISSFニュースの内容は基本そちらがメインになっていますが、もちろん日韓両選手の「奇跡の大逆転」にも触れられています。

ユース・オリンピック・ゲームチャンピオンのコロスティノフが、ミュンヘンのエアピストル・ファイナルで勝利した

http://www.issf-sports.org/news.ashx?newsid=2804


19歳のウクライナの射手が、2010年世界チャンピオンの松田知幸(日本)と、4度のオリンピックチャンピオンのJin Jongoh(韓国)を破り、初めてのISSFワールドカップ金メダルを獲得しました。

2014年のユース・オリンピック・ゲームとジュニア世界チャンピオンのパブロ・コロストロフ(ウクライナ、19歳)は、ドイツのミュンヘンで開催されているISSFワールドカップ・10mエアピストル男子のファイナルで勝利しました。

この若い射手は、日本の松田知幸や韓国のJin Jongohなどのチャンピオンを抜いて240.9点のジュニア新記録を樹立しました(ジュニアはシニアイベントでも世界記録を樹立することができる)。

コロスティノフは最初の12発を終えてから独走態勢となり、2位に2.2ポイントの差を付けて自身初となるワールドカップの金メダルを首に下げました。

2010年ISSF世界チャンピオンの松田知幸(41歳・日本)は、238.7ポイントの2位で銀メダルを獲得しました。

4度のオリンピックチャンピオンであるJin Jongoh(37歳・韓国)は、スタートでミスをしましたが、最終的にスコアを上げ、218.4ポイントで銅メダルを獲得しました。

「本戦は非常に厳しいものでした。私はちょっと緊張していましたた……」とコロスティロフは言います。「しかしファイナルでは、私は落ち着いていました。 私はJinと松田のようなチャンピオンと並んで射撃をすることにストレスを感じませんでした。 私にとって、私たちは全員がアスリートであり、そしてなによりもまず私達の第一の競争相手は私達自身なのです」

「(ジュニアの世界新記録について)私は競技中、記録について考えることはありませんでした。私はただ自分の競技に集中していただけです。あれこれ考える時間はありません。記録は、終わってみて初めて手に入るものです」

「次のステップは、6月にスールで開催されるISSFジュニア世界選手権です」とウクライナのアスリートは結論づけました。


恒例の、「10.0を基準として、それより上か下かで上下する折れ線グラフ」でファイナルを振り返ってみます。日本の松田と韓国のJinが、最下位近くからまるでシンクロするかのように超高得点を連発して一気に他国の選手を抜き去り、最終的に表彰台を獲得したという経緯がよくわかります。あと優勝したコロスティノフの強さと不安定さにも注目!(ときどき8点撃ってる)

(以下、写真は全てISSF動画より引用)

優勝したウクライナのパブロ・コロスティノフ、実は当ブログでも以前から注目してる選手です。ピストルを構えた時にアゴを出すか出さないかという話をする時に、「海外には、こういう人間離れした姿勢で撃つ選手もいる」という例として写真を掲載させてもらったのを最初に、2016リオ・オリンピックの直前企画でも「注目の選手」の一人として紹介しました。
 

昔に比べるとあどけなさが減って、ちょっと「おっさん」っぽい顔つきになってますが、ムチャな射撃姿勢は全く変わっていませんね。これ、普通の人が真似しようとしたら確実に頚椎とか捻挫します。


使用銃はステイヤーのEvo10Eのようです。銃検シールがほとんど貼られていないところを見ると、今シーズンに入って使い始めたばかりの新銃なんじゃないかと思います。


 
他の選手の使用銃も見ていきましょう。

日本の松田知幸が使用するのは前回と同じくステイヤーEvo10Eです。ウエイトが増えてます。


韓国のJin Jongohは、2016オリンピックのときと同じモリーニCM162Eです。ウエイトを足せるだけ足してます。


途中では3位に大差を付けての2位になっていたのに、「あまり良くない点数」を連発している間に松田とJinの猛追を受けて最終的には逆転されてしまった韓国のSo SeungseobもモリーニCM162Eを使っているようですが、こちらはあまりウエイトが足されていません。


セルビアのDamir MIKEC。あまり銃が大写しにならなかったのですが、これはワルサーのLP300、それももしかすると廉価版のLP300 Clubじゃないかと思います。


トルコのTugrul OZERが使用するのはワルサーのLP400です。前回のニューデリー(インド)の大会に比べるとワルサー率が高いですね……。


ウクライナのOleh OMELCHUKが使用しているのも、どうやらワルサーのLP300(もしかしたらClub)のようです。あえて古い機種を使い続けているのには理由があるのでしょうか。「新しい銃に変える理由が無いから」ってのが理由だったりするかもしれませんが……。


セルビアのDimitrije GRGICは、ステイヤーの最新型であるEvo10Eを使っています。


というわけで、ファイナル出場者8名の間での内訳はステイヤーEvo10E:3、モリーニCM162E:2、ワルサー:3(LP300が2、LP400が1)という形になりました。

ドイツは射撃スポーツの本場ということもあり、ミュンヘン大会は年に5回ほど開催されるISSFワールドカップ(ライフル&ピストル)の中でも、なんとなくランクが高い特別な大会というイメージがあります(別にポイントで差がつけられているわけではありません。あくまでイメージです)。当然、地元であるヨーロッパ勢も本気出して参戦してきます。スコアも高く、本戦成績を見ると580撃っても16位、ファイナルに残るには582が最低限という恐ろしい世界になってます。松田さんはそんな大会でもキッチリと結果を残してくれたわけで、「次の五輪こそは……!」と期待が高まってしまうのを抑えきれません。

若干19歳の若者が優勝したというのも、射撃界にとっては大きなニュースです。3年後のオリンピックのことを考えれば若さは力です。松田さんも、もう41歳ですしアスリートとしては厳しさを感じる年齢になりつつあります。

日本にも有望な若者はいるのでしょうか。

います。この大会にも参加している武内響、優勝したパブロ・コロスティノフと同じ1997年生まれです。今回大会では本戦560-11xで104位と順位としてはふるいませんでしたが、「世界戦の経験を積ませるため」というのが主な参加目的なのだと思いますから今回はコレでいいんです。上記の動画でも、「日本から来た若手ピストル選手」ということで注目に値する選手とみなされているようで、客席にいるところが何度も大写しになっています。
 

松田知幸の銀メダルに喝采を送る武内響くん。日本エアピストル界における「注目の若手選手」の一人ですね。


彼は日本のTVメディアでも紹介されたことがあります。「目指すは東京五輪」というテーマで注目のアスリートを紹介していくという番組だったのですが、そこで写った自室が、なんというか、凄かったので、妙な方向で有名になりました。

ISSFのサイトにある公式プロフィールを見ると「Hobbies(趣味)」の欄が空欄のままになってるんですよね。ここに「Anime」って書いちゃえば、日本のみならず世界中のアニメオタクにとっての希望の星となって大勢に応援してもらえるんじゃないかと思うんですがどうでしょうか!

池上ヒロシ

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池上ヒロシ