一種の「お墨付き」を得たデジコンは、さらにパワーを上げた製品の開発・販売を始める。M92Fのバレルをさらに延ばしてパワーを上げた製品や、より大型でガスルートも2重として流量を上げたデザートイーグル、そして、今回の一連の事件で何度もメディアでその写真が流された、中折れの単発カート式という独特な発射機構を持った「デジコン・ターゲット」である。
デジコン・ターゲットはバレルの長さにバリエーションがあり、最も長いモデルでは2J近くものパワーが出ていた。2Jという数字は、「オモチャと実銃」の境目に近い数字であるが、しかしかろうじてオモチャとしてのギリギリの節度を保っていた……と言える製品だった。しかしこの製品には、業界団体加盟メーカーが販売している製品と決定的に異なる点があった。それは、改造に対する対策が甘かったことである。
加盟メーカーの製品は、高圧ガスや高レートスプリングを組み込むなどしてパワーアップを図ろうとしても、基本的な構造部分で高圧には耐えられないように作ってあるなど、ある程度のところで限界があるように作られている。しかしデジコン製品はその点が甘かった。そこに目を付けた人間が、デジコン製品をベースとして高圧ガスを使い金属弾を発射できるように改造した製品を作り、それをヤフオクなどネットを通じて販売を始める。また完成品のみならず、改造するための部品や、高圧ガスのボンベや金属弾などの消耗品も、同様にネットで販売した。
業界団体も、もちろん大多数のエアガンユーザーも、その状況を苦々しく思っていたのは間違いない。しかし、業界団体としては一度裁判をして負けている相手であり、口出しが出来ない。エアガンユーザーの中には、Yahooにそういった高圧ガス対応に改造したエアガンを出品させないように働きかける者もいたが、Yahooの対応は実に緩慢なもので、出品は減るどころかますます増え続けた。
そして、事件が起こる。麻薬中毒者が高速道路で、競り合いをした相手の車に対して、高圧改造したエアガンを使い金属弾を発射、ガラスを破壊。その後、数台の車に発砲を続けて逃走したのである。
ようやく警察が動く。その犯人はもちろん逮捕されたが、その他に高圧改造したエアガンやその改造部品等をネットで販売した業者の摘発を始めたのだ。……もちろん、事件の前から調査は進めていたのだろうが、タイミング的には「事件を受けて改造業者の逮捕を始める」と見られてもおかしくないものだった。
(つづく)
2011年9月追記
このエントリーを書いたのも随分と昔のことになった。その後、エアガンについては銃刀法にて威力の上限が定められ、その威力を超えるものは違法なものであり、超えないものは合法なものだと明確に区別されるようになった。それを受けて書いたのが下記エントリーだ。