今年始めのショットショー(in ラスベガス)で発表され、2月10日に発売になったばかりの新型SCATT。発売前に予約してアメリカから直送してもらった。多分、日本では初のリポート記事になるんじゃないかと。

「銃を構えて、狙って、引き金を引いて弾を撃って、ターゲットに当てる」というのが射撃というものです。いきなり当たり前の話から始めて申し訳ありませんが、射撃ってのが、物凄く個人的というか、なにがどうなってるのか他人からは皆目わからない細かい「動き」の集合なのだということを改めて強調しておきたかったのです。

射撃をしている誰かが、良く当たっている、あるいは当たっていない場合、それが「なぜそうなるのか」を横から見ているだけで判断するというのはとても難しいことです。その人がどんなふうに狙って、どんな感じでどんなタイミングで引き金を引いているのかは、本人しか分からないからです。

そこで、トリガーを引く直前と、引いた瞬間と、引いた直後に、銃口がどこを向いているのか、その軌跡をセンサーで読み取ってパソコンに転送して記録し、誰でも見ることができる(もちろん、本人もリプレイして見返すことができる)ようにしたのが射撃解析装置です。基本的な目的としては、実銃で射撃競技をしている人が「より上手になる」ための練習道具として誕生したものです。

弾を撃たなくてもトリガーを引いてハンマーが倒れたりするときの衝撃でもって「今、射撃をした」と判断することによって、実際に発砲しないでも発砲したとしたらどういう結果になったかをシミュレートするための道具としても使われています。射撃スポーツの練習の他、軍隊の訓練などでも射撃解析装置は広く使われています。

代表的な射撃解析装置としては、軍用としても使われているNoptelRIKA Home Trainer、そしてロシア製のSCATTなどがあります。基本的には専用のターゲットを設置して、ターゲットと銃に取り付けた装置との通信によって作動するものが多く、「実際に弾を撃つ」練習と併用することが難しいという問題がありました。

SCATTは近年、銃に「ターゲットを撮影するカメラ」を取り付け、通常のターゲットを狙って撃つだけで作動するタイプの製品を発売しました。ターゲット側には何も取り付けないので、撃って穴だらけにしたところで何の問題もありません。実際に弾を撃ちながら、「今のが当たったのはなぜか、外れたのはなぜか」を記録して後から見返して分析できるというのは大きな利点です。価格も1799ドル(日本では、シースジャパンの販売価格で179,000円です……安くね?)と「目の玉が飛び出るほど高い」というわけでもないこともあって、私の周囲でも実際に持っていて使ってる人が何人もいます。

ただ、射撃用品の相場からすればそれほど高くないといっても、やっぱり18万円って高いです。そうおいそれと買えるものじゃありません。射撃解析装置としてではなく、射撃シミュレーターとして銃が所持できない若年層や、まだ所持していないけれど興味がある人の入門用に使うとしたらやっぱり数台は欲しいわけで、じゅうはちまんえんもするものを何個も揃えるとか、とてもとても夢物語です。

だからこそ、「8万円程度で収まる範囲の価格」という条件付きで新型ビームライフルの開発が行われ、実際にはその予算は大幅にオーバーしてしまったもののとりあえず形になった興東電子のビームライフルや、まだ発売にはなっていないけれど興東電子のよりはずっと安くなりそうなマルゼンのデジタルカメラピストルに期待が集まっていたのですが……。

今年始めにアメリカ・ラスベガスで開催されたショットショーにて衝撃の新製品発表がありました。SCATTから、従来型よりも大幅に小型軽量化、そしてお値段を下げた新型の入門用SCATTが発売されるというのです。ショットショーってのは、「とりあえず発表してみただけ」みたいなものも少なくないのですがこれについてはそうではなく、ほとんど間髪を入れずにSCATT USAのサイトで予約販売が受付開始されました。

新製品の名前は「SCATT BASIC」。価格は749ドルです。アメリカ国内なら送料無料ですが日本までだと50ドルの送料がかかります。それと関税みたいなのも取られるはずです。けれどそれを全部合計(1ドル120円換算で)しても10万円をちょっと超える程度で済む計算になります。

というわけで、即座にポチってしまいました。発売は2月10日、事前予約申し込みをした人にはそれより前に順次発送するみたいなことが書いてありましたが、実際に届いたのは3月に入ってからでした。まあ、それでもずいぶんと速いです。

ちなみにシースジャパンさんでも取扱を開始しています。価格は119,000円。たぶんこちらには日本語マニュアルとか付いてくるんでしょうから、これから日本在住でSCATT BASICを購入しようとするなら、シースさんから買うのが良い方法だと思います。

前置きが長くなりましたが、それでは次ページからいよいよ、届いたばかりのSCATT BASICのレビュー記事を開始したいと思います。

箱の中に入っていたもの。あれ? マニュアルは? ソフトは?

箱をあけてびっくり。説明書もソフトが入ったCDも何も入っていない。さすがはロシア製だ。なんかロシア語が書かれた紙が2枚(どうやら、保証は2年だよ、シリアルナンバーはこれだよみたいなことが書いてあるっぽい)と、本体と取り付け金具とUSBケーブルと付属品とレンチ、あと金属で出来たアクセサリーっぽいものが一つ……と思ったら、これが実はUSBメモリだった。

とりあえず、SCATTの公式サイトに行ってマニュアルと専用ソフトをダウンロードする。マニュアルには付属品一覧が載っていて、「ソフトが入ったCDまたはフラッシュドライブ」と「クイックセットアップガイド」が同梱されていると書かれている。イラストでは小さいCDが描かれているのだけれど、そんなものは入っていない。てっきりオマケで付いてきたキーホルダーかなにかだ思い込んでたものが実はUSBメモリだったというのは予想も付かなかった(向こうだとUSBメモリのことをフラッシュドライブって呼ぶの?)。しかし文句をつけようにも、それを知った時点ではもうそれらは手に入っているのだから文句を言うメリットがない。
 

「中身を確かめるため、一回開封しましたよ」っていう日本の税関のシールが貼られた段ボール箱の中に入っていた小さい箱。それなりに「デザイン」ってものが考えられたパッケージ。昔のロシア製品なんてそりゃもう……
これがSCATT BASICの本体。電池を入れる必要はなく(USBからの電力で作動)、開けたり閉じたりする場所はどこにもない。
とにかく小さい。小型軽量化なら日本製が一番とか巷では良く言われてるけど、いやいやロシア人もなかなか。「こんなもんが10万円もするのか……」とか普通だったら思ってしまうくらい。ちなみに重量はマウント込みで30gとのこと。
マウントはこんな形。「マウンティング・プリズム」というのが正式名称のようだ。プリズムというと日本語では透明素材でキラキラしたもの想像するけれど、英語の意味だと「四角い柱」って意味なのだとか。素材はおそらくアルミ製。
2つのネジは、取り付ける対象が銃身と並行になっていない場合に調整するためのもの。競技銃で、しかも10mくらいで撃つのならソフト側の調整機能で対応できるので必要ない。取り付けの際にジャマになるので外してしまおう。
それでは取付方法。まず、本体にプリズムを固定する。溝に滑り込ませて側面のネジを付属のレンチで締めるだけ。前後はとくにないようだ。
薄いスチールでできたプレートに開いている四角い穴を、プリズムから1本の腕が伸びてる方に引っ掛けて、シリンダーをクルリと挟み込みながらダイヤルが付いてる側を2本の腕の間に潜り込ませる。銃を支えながらこの作業をするのは、それなりに難易度が高い。
上手く2本の腕の間にダイヤル部分が入ったら、ダイヤルをねじ込んでプレートを締め付けて固定する。あんまり強く締め付けなくても、けっこうガッチリと固定される。
取り付けたところを前から見るとこんな感じ。レンズは少し奥まったところにあるので、取り付けの際にはそれほど気を使わなくてもレンズを触って汚してしまうということはない。なんかマゼンタコーティングっぽい輝きを見せているのだけれど、まさかカール・ツァイスのレンズだったりするのか?まさかそんなわけないか……。

レンズ前面に取り付けることができるアイリスが2つ付属する。マニュアルによると、屋外の射撃場で、ターゲットが直射日光で照らされているようなときにはこのアイリスを付けてくれとのこと。

あと関係ないけれど、こんなものが付いてきた。キーリングを取り付けてキーホルダーにでもしろっていうのかな? みたいなこと思ってそのまま箱に戻して忘れてたけれど、実はこれがUSBメモリだということをTwitterで指摘されて始めて気づいた。あ、ホントだ!写真をよく見ると差込口があるのが見えるじゃん!

これがSCATT BASIC用ソフトウェアの起動画面である。シンプル・イズ・ベストにもほどがあるだろ……。

かつてのSCATTを使用するためのソフトである「SCATT pro」は、とにかく設定項目が多く、また射撃した後にも集めたデータを分析するための機能が豊富で、画面上部にあるバーは選択肢で埋め尽くされていた。たまたま自前のタブレットに、以前SCATTをお借りしたときに試してみようとSCATT Proがインストールしたままになっていたので(ソフト自体はSCATT公式サイトで無料でダウンロードできる)、まずはそれを立ち上げてSCATT Basicを接続してみたのだけれど……。

「デバイスが見つかりません」的なメッセージが出てしまい、一切の操作ができなかった。残念。

仕方ないのでSCATT Proはアンインストールし、BASIC用のソフトをダウンロードしてインストール。SCATT Proは3MB足らずなのに、BASICは16MBもあったりする。BASICの特徴の一つが、「Macでも使えるようになりました」ってことなので、両方に対応するための特別な開発言語とかそういう関係で容量がでっかくなっちゃったんじゃないかと思う。

起動してみた画面がこのページ上。Proに比べると物凄くシンプルだ。「射撃を始める」「過去のデータを開く」の二つのボタンが画面中央にポツンと並んでいる。上にある「Settings(設定)」を開いても、設定できるのは軌跡の色だけでメカニズムとか作動関連の設定は一切ない。

まずは「Start new practice(練習を始める)」をクリックしてみる。というかそこをクリックする以外に選択肢がほぼ存在しないのだが……。
 

すると、ターゲットを選択する画面に移る。インストール時には「英語/ロシア語」しか選べなかったのに何故かこの画面でいきなり日本語が表示されてビビる。選べるターゲットは、10mエアピストル、10mエアライフル、25mプレシジョンピストル&50mフリーピストル、50mライフル……とここまでは見慣れたターゲットだが、その先が「25mローエンフォースメント」「50ft NRA/USA-50Rifle」とか見たことも聞いたこともない種目が並ぶ。
さらに続きのページがある。50ftNRAオフィシャルSBターゲット4姿勢、50ヤードNRAオフィシャルSBターゲット伏射、50ヤードNRAオフィシャルオフィシャルSBターゲット……って単位がフィートとかヤードだったりNRAオフィシャルとか書いてあったり、USAローカルな種目なんだろうなあ。とりあえず「エアピストル」を選択。画面下には「Back」「Print Target」「Continue」の3つのボタンがある。とりあえず「Print Target」をクリックする。
するとターゲットの印刷モードに入る。ターゲットを実際に何m先に置いて撃つのかをここで設定して印刷すると、その距離でちょうど良い大きさになるように縮小されたターゲットが印刷されるという仕組みだ。
5m用に縮小印刷したターゲットと、公式のエアピストル用ターゲット。デフォルト設定ではスコアを区切る線やスコアの数字は印刷されない。どうせ弾を撃つわけじゃなく、的に穴をあけるわけでもないので、照準を付ける黒丸さえあれば良いというわけだ。
といっても、それじゃ寂しいって人向けに、ちゃんとスコアリングや数字が入ったバージョンでも印刷できるようになっている。
ここから先は、実際にPCにSCATT BASICを接続していないと進めない(「No shooter」とだけ表示される)。Scattの後部にUSBケーブルを差し込み、もう片方をPCのUSBポートに差し込み、「Continue」をクリックするとキャリブレーション(校正)モードに入る。
多分、このキャリブレーションが一番のハードルになるんじゃないかと思うんだよねー。SCATT Basicを買って、おうちでPCにつなげて壁にターゲット貼って、さあ使おうってなった人の半分くらいはここでひっかかるんじゃないかと。

 

グレーのでっかい丸が中央に表示されていて、下にはなんかゲージっぽいものがあるだけのキャリブレーション画面。実はここでSCATTはえらく高度なことをやってるらしいのだけれど、その「高度なこと」に上手く乗っかれないと、というか向こうが想定したやり方からちょっとでも外れたことすると途端にドツボにハマる。

SCATT Basicのセンサー(カメラ)は、銃口より下に付けることになるので、銃口の向きを完璧にシミュレートするには、銃口の位置とのズレを補正する必要がある。本来ならいろいろと面倒なことをしないとならないハズなのだが、SCATTではこのキャリブレーション画面で、「ターゲットを狙って一発撃つ」だけでその処理を全部自動で行ってくれるという。

銃をターゲットに向けて撃つ(トリガーをカチンと言わせる)。SCATTは、「今の状態が、ターゲットを正しく狙った状態なのだ」と判断する。銃身より下にセンサーが付いているから当然SCATTが見ているターゲットはずいぶんと上の方にあるはずだ。そこでSCATTは、「ターゲットがあそこらへんに見えているということは、おそらく自分は銃身の下の●●mmくらいのところに取り付けられているのだろう」と判断する。そしてそれ以降は、SCATT自身が見ている映像に「銃身は、自分の真上の●●mmあたりにある」ということを考慮した補正をかけた上で銃身が向いている位置を計算し導き出して画面に表示する、という仕組みになっている……らしい。

だからこのキャリブレーション画面で上手くターゲットを狙って撃たないといつまでたっても軌跡がターゲット上に表示されないし、スコアも出てこない。恐ろしいことに、一度きちんとキャリブレーションが取れてきれいに軌跡やスコアが表示されるようになった後でも、なんかの間違いで再度キャリブレーション画面に戻ってしまうと最初からやり直しになってしまうという罠もある。

「そもそも、SCATTがターゲットをちゃんと見えているかどうか」も問題になる。カメラで見た映像を元に解析しているという関係上、ターゲットは十分に明るく照らされている必要がある(マニュアルによると1000ルクスは必要とのこと)。ターゲットが暗いとSCATTがターゲットを判断できず、いくら狙って撃ってもキャリブレーションが取れない。
 

とりあえず、壁にプリントアウトしたターゲットを貼り、手持ちのクリップライトで超至近距離から照らしてみた。なんとかギリギリ明るさは足りたらしいけれど、本来ならもっと明るくしないとダメみたいだ。
[3/13追記]印刷に使う紙をコピー用紙からフォト印刷用紙(マット)に変更、さらにクリップライトの電球を集光型のLEDランプに変更してみた。見るからにかなり良い感じだ。実際にキャリブレーションが一回で成功するようになった。
キャリブレーション画面の左下にある「Preview mode」をクリックすると、カメラが見ている映像が黒丸の中に表示される。上の写真の様子が、SCATTにはこんなふうに見えているということだ。これじゃあ、どれが黒丸だかわからないのも無理はない。
下にあるバーを動かすと表示される画面の濃さが変化する……のだけれど、これが「どんなふうに見えているのが良いのか」ということについてはマニュアルには書いてないのでよくわからない。おそらく「黒丸が、黒丸っぽく見える感じ」が良いのだろうと想像されるので、とりあえずこんな感じに設定してみた。
「Preview mode」をオフにして射撃(空撃ち)をしてみる。空撃ちの衝撃をセンサーが拾って、その衝撃がある程度以上になると「撃発された」と判断するわけだが、その閾値をここで設定できる。モリーニの電子トリガーだけを作動させて「かちっ」と言わせると、下のゲージがこの写真くらいのところまで上がる。これが「空撃ちでの衝撃の大きさ」である。下のスライダーをこの黒いバーの先端より左に持ってくればOKということだ。
ちなみに、コッキングしてストライカーを作動させてエアも出すとこんな感じになる。射撃場で、となりでもどっかんどっかん撃ってるような状態だったら、バーをある程度より右に動かしておかないと隣の人の撃発を勘違いして拾ってしまったりするのかも。
上手くキャリブレーションが取れると、このように黒丸の中に着弾点が表示される。ここで着弾点が真ん中に来ている必要は特に無い。とりあえず表示さえされればOKだ。「Continue」をクリックして射撃モードに入ろう。
射撃すると、銃口の軌跡が画面に表示される。緑が照準しはじめてからの軌跡、黄色が撃発直前1秒間の軌跡、赤が撃発後の軌跡だ。長い間構えていると緑の軌跡がどんどん長くなっていって画面を埋め尽くす勢いになる。リプレイボタン(画面左上の右向き三角)をクリックするとリプレイが再生されるが、SCATT Proのように撃った直後に自動的にリプレイを一度だけ再生する機能はない。
なお画面の拡大縮小は画面右にある「+」「-」をクリックすることでも行えるし、画面中央をダブルクリックしてもOK。ついスマホみたいに二本の指でつまんで広げようとしたけれど、それは流石にダメだった。着弾位置を補正する機能もある。「今撃った弾が、本当に当たっていた場所はここ」と指定するという感じになる。画面の左上の方にある「上下左右を矢印が指している」みたいなマークをクリックする。
その次に、「最後に撃った弾が、本当はどこに当たっていたか」をクリックすると、着弾位置が補正される。といっても補正されるのは「それから撃つ弾」だけで、それまで撃った弾については適用されない。実際の使い方としては、銃に弾を入れて撃って、ターゲットに開いた穴と画面上で当たったとされている場所に違いがあった場合に補正するというやり方を想定したものだろう。

このSCATT Basic用のソフトウェアだが、従来のSCATT Proに比べるとかなり機能が制限されている。先日、葛飾総合スポーツセンター射撃場で実際にモリーニに付けて試していたところ、上位機種に相当するSCATT MX-02をお持ちの方がいらっしゃってその場で見比べることができた。ざっと違いを挙げていくと……。

●軌跡のオートリプレイがない
なければないでなんとかなるが、あればあったでやっぱりありがたい機能だけに、省かれてしまったのは残念。

●ピストルのスコアが、小数点込みの合計点でしか表示されない(嘘でした。ちゃんと素点表示されます)
これは興東電子のビームピストルも同じ問題があったけれど、ピストル種目は現時点では小数点ではなく素点のみでの集計なのだから、試合での点数と違うやり方で表示されるのは大変困る。これは多分、単純ミスみたいなもので、すぐ直してくれるんじゃないかと思うのだけれど……。
画面を良く見たら、ちゃんと素点(小数点抜き)での合計点も表示されてました。単なる見落としです。申し訳ありません。

●細かい分析機能がない
SCATT Proは、上下方向のブレ、左右方向のブレ、中心からの距離のブレなどをグラフ化して表示したり、撃発前のブレの大きさ、撃発後のブレの大きさの統計を取って一般的な数値と比較したりといった、様々な方面からの「射撃データの分析」ができる機能を持っていた。Basicには、一切そういう機能はない。撃ったその軌跡を表示し、点数(小数点込み)を記録していくだけだ。

●試合モードがない
SCATT Proでもデジタルピストルでもビームピストルでも、実際に大会などに使用することを前提とした機器でもあり、マッチモードというものが存在している。試合と同じ形式で、試射・本射と続けていって、本射で定められた弾数を撃つと終了して集計が発表される、というものだ。Basicにはそういった機能はなく、ただ延々と撃ち続ける以外の使用方法がない。純然たる練習専用マシーンである。

●なんとなく、全体的に、画面がショボい
線のクリアさとか滑らかさとか、数字や文字のフォントとかが、やけにショボい。たんに私のタブレットが安物で、MX-02を所持していた方のノートパソコンの画面表示に大きく劣っていてショボく見えただけなのかと思ったけれど、実際に自宅のPCにインストールして大画面液晶で見てもやっぱりショボい。

練習に役にたつかたたないかってことで言うなら、そりゃもう間違いなく役に立つ。SCATTなしでの練習3日分が、SCATT使った練習1時間に相当する……って言っても言い過ぎじゃないくらいの感覚だ。ただしこれは、SCATTで表示されている情報の意味を読み取ることができるだけの知識と経験があってこその話。単に「当たったーわーいすごーいうれしー」ってだけの人だと、SCATT付けても「わーいおもしろーい」ってだけで終わってしまう可能性が高い。「あたらなかったーくそーわからんぜんぜんわからん」と悩みながら撃ってる人にとっては、SCATTはおそらく一気に目の前が開ける魔法の道具に近いのではないだろうか。

私の場合、ここしばらく悩まされていた「謎の8点」、自分ではちゃんと撃てたと思ったのに8点のすごいところに飛んでいってしまう現象の原因がイッペンで明らかになったのが大収穫だった。自分では完璧にできていて、いまさら治すまでもないと思っていた箇所が全然ダメだったってのが原因だった。改めてそこに気を使って撃つようにするだけで劇的によくなった。もしSCATTがなければ、ことし一年くらい、良くても夏あたりまではこの「謎の8点」に悩まされ続けていたんじゃないかと思う。
 

ちなみにAPS-3にも、コンプレスト・シリンダーの先端に取り付けることができる。コンプレスト・レバーを操作できなくなるのでBB弾は撃てなくなるが、銃の上部にあるコッキング・レバーを操作して空撃ちすればちゃんとセンサーが反応して作動する。
池上ヒロシ

Share
Published by
池上ヒロシ

Recent Posts

採点ゲージの使い方

「ひたすらブルズアイ・オンライ…

2週間 ago

2024秋のひたすらブルズアイ・オンライン 結果発表

協賛(順不同): エイテック様…

2週間 ago

10月27日(日) 亀有ピストル練習会

秋のひたすらブルズアイ・オンラ…

4週間 ago

2024秋のひたすらブルズアイ・エントリーページ

エントリー受付期間 10月13…

1か月 ago

2024秋のひたすらブルズアイ・オンラインを開催します

協賛:蔵前工房舎様、エイテック…

2か月 ago

モリーニ vs ステイヤー

競技用のエアピストルのシェアは…

2か月 ago