電子トリガー vs 機械式トリガー【海外の反応】

先月、6月の20~28日にアゼルバイジャンのバクーで行われた射撃ワールドカップ。日本勢はラピッドファイアピストルの秋山輝吉選手が6位に入ったのみで、他は全員ファイナル出場ならずという結果になってしまいました……が、今の時期はオリンピックに向けての最終調整みたいなもんですから、本番で爆発してくれれば問題なしです!

ファイナルの動画がyoutubeで公開されています。10mピストル(エアピストル)で興味惹かれたのが、使用銃のモリーニ率が妙に高かったことです。

モリーニからスペシャル・ガンをプレゼントされたという韓国勢が2人参加していることがモリーニ率を押し上げているという側面はありますが、最終的に表彰台に残った3人(ブラジル・インド・韓国の順番)が3人ともモリーニユーザーというのは驚きでした。

オリンピック直前ですよ? 本当なら、各社がここぞとばかりに発表した最新機能てんこ盛りの新型ピストルの博覧会状態になってなきゃ変じゃないですか!? なのにトップ3人が使用しているのが全て20年以上前に発売された旧型というのは、それだけでもちょっとしたニュースじゃないでしょうか。

モリーニ、さすがに大昔そのままではなくトップシューターが使っているのは「新型」に相当するCM162EIチタンですが、銃砲店情報によると「色と素材が変わってるだけで中身は同じ」とのこと。それを信じるなら、私が今使っているCM162EIと基本的に同じってことになります。

反動軽減装置も、きめ細やかなグリップ調整機能もなく、良いのはグリップデザインと、抜群に安定している電子トリガー。特にモリーニの電子トリガーは競技ピストル史上最高とも言われる素晴らしいもので、トリガーの感触についての悪評はついぞ聞いたことがありません――故障に関する愚痴は何度か聞いたことがありますが。

モリーニCM162EIの電子トリガー、ソレノイド&トリガー・シア周り。グリップ内に収納される電子基板&電池とは、グリップ装着時にソケット部分で接続される形になっています。ファミコンのカセットをちょっと彷彿とさせますね。

電子トリガーが「良い」ということは認めるとして、それは従来の機械式トリガーの存在価値をなくしてしまうほどに、決定的な差になるのか? 海外の射撃専門掲示板、「TargetTalk」において、そのものズバリなネーミングのスレッドが立ち上げられており、活発に意見が交換されていましたので、抜粋して翻訳してみたいと思います。

エアピストルの電子トリガー vs 機械式トリガー

引用元:Air Pistol Electronic vs Mechanical trigger (TargetTalk)


  • 電子トリガーは、機械式トリガーに比べてメンテナンスがしやすい(壊れにくい)とか、そういうことってあります? 壊れた時の修理代が物凄く高く付いたりするんじゃないかが心配です。
    伝統的な機械式トリガーの方が、長期間の使用への耐久性とか、メンテナンス性の良さという点ではより安全な選択なんじゃないでしょうか?(国籍不明)

    →どんなタイプのトリガーであっても、良い状態で使い続けるためには最低限のメンテナンスは必要です。
    常に綺麗にすることと、12ヶ月毎の可動部への潤滑が必要です。
    トリガープルは年間を通してそれほど大きく変化することはありませんが、大きなマッチの前はチェックするようにしましょう。
    電子トリガーへの唯一の懸念にして最大の被害の原因となりうるのは、電池の液漏れです。できるだけ頻繁に電池の様子を確認し、12ヶ月以内をめどに新品の良い状態の電池に交換しましょう。
    電池を入れたままのピストルを、使わないまま長い時間放置するようなことはしないでください。(国籍不明・多分アメリカ)

    →私は、ピストルのトリガー形式を選ぶときに「メンテナンスのしやすさ」は全く気にしません。すでに書かれているとおり、どんな形式のトリガーだろうがメンテナンスは必要です。私は電子トリガーの、一貫したトリガープルが好みです。機械式トリガーが電子トリガーに対して何らかの優位性を持っていることは認めますが、それは私にとって考慮の対象にはなり得ません。新しい電池を使うようにさえしていれば、電子トリガーはトラブル知らずです。
    長期間使用しないときは電池を取り出しておくといいでしょう――これは、他の電子機器と同じですね。(インディアナ州)

    →エアピストルのメンテナンスといっても、時々クリーニングペレットを撃ってればだいたいOKですよ。ただ、電子基板を汚さないようにすることと、バッテリーをいれたまま長時間放置しないようにすることは(電池の液漏れを防ぐために)大事です。(確かドイツの人)

 

  • 電子トリガーに利点があることは確かですが、それでもなお、私は機械式トリガーの方が好きです。
    理由は2つあります。
    1…私はIT業界で20年働いています。ありとあらゆる電子機器には、「いずれ時代遅れになる」という宿命を背負っています。もし数年ごとに時代遅れとなった電子トリガーをユニットごと最新式のものに交換できるのならいいんですが、現時点でのAPはそんなことができる仕様にはなっていません。
    2…機械式トリガーの場合、何か問題が起これば、問題点を実際に目で見て、修正することができます。少なくても、なにをどうすれば、誰に頼めば(なんなら壊れたパーツを自作するとかして)問題点を修正すれば良いのかがわかります。電子トリガーの場合、それができません。
    電子トリガーにはすでに数十年の歴史があることは承知していますが、ワルサーのFPで起こった「悲惨な状況」のことを考えると、私は電子トリガーに手を出す勇気はありません……。(国籍不明)
    ※訳者注:ワルサーは、過去に電子トリガー式のフリーピストルを開発、発売したことがありますが、現在はラインナップには入っていません。このコラムによると、ほとんど致命的といっていい欠陥があったのにも関わらずサポートはほとんどされないまま生産打ち切りとなってしまい、現在そのFPを所持している多くの人は補修用の部品を手に入れることもできないまま放置されるという「悲惨な状況」になってしまっているそうです。日本のデジタルピストルの惨状を彷彿とさせますね。
    写真は電子トリガーを搭載したワルサー製フリーピストル。引用元:ROCK ISLAND AUCTION COMPANY

 

  • 決して毛嫌いしているわけじゃないんですが、私は電子トリガーの銃は所有していません。
    機械式トリガーに問題が生じた場合、簡単なパーツを交換することで誰でも修理することが可能です。しかし電子トリガーではモジュール全体の交換が必要になります――それは機械式トリガーの部品よりずっと高くつきますよね?
    旧型のスプリング式ファインベルクバウ製AP(それは私が最初に所持したAPでした)では、ドライバー一本あればたいていの故障は直せてしまうものでした。
    技術が進歩するのに合わせて、必要とされるメンテナンスの複雑さも増しています。スプリング式からCO2式に移行したときも、エアシールのメンテはスプリング式に比べより頻繁に行う必要がありました。プレチャージ式の新型はさらに多くのメンテナンスを必要としますが、それは電子機器によるものではなく、より高い圧力をコントロールしなければならないという事情によるものです。
    私は、今まで所持してきたエアピストルは、もうぼろぼろのがたがたになるまで徹底的に撃ちましたが、取り立ててなんの問題も起こりませんでした。今の新しい製品でも同じだとは思います。しかし高圧に耐えるためのエアシールについては頻繁に新品に交換する必要があるはずです……トリガーではなく。
    私はこれまで長い間、代表レベルでの射撃を続けてきました。その経験でいうと、機器のトラブルに見舞われるシューターの多くは、むやみに銃をいじくり回す(monkeyする)傾向があるように見えます。彼らは、良いスコアへ至る道をも、無意味に遠回りなものにしている(monkeyしている)と思います。
    射撃に使える予算を「何を買うために」使うのかを決めるときには、まず射撃場に行って、何が使われているのかを見るべきです。電子トリガーが気に入ったのなら、それを買いなさい。大勢のトップシューターがそれを使っています。機械式トリガーが気に入ったのなら、それを買いなさい。大勢のトップシューターがそれを使っています。
    (※耐え切れなくなった訳者によるツッコミ……なんかイエス・キリストのセリフっぽい言い回しだなあ、なんて思いながら訳していたら、つい文体も聖書っぽくなってしまいました)

    トリガーの良し悪しは、好き嫌いに大きく影響されるので、可能な限り購入前には実際に撃ってみるべきです。全てを試すことなどできないというのなら、一番見た目が気に入ったものを買いなさい。トップブランドにある製品なら、なんの問題もありません。
    ちなみに、私が今まで記録した最も高いスコアは、FWB2で撃ったものです。我ながら超良いスコアで、未だにアレを上回る点数を撃てていません――もちろん、より新しい洗練された銃を使ってるのにも関わらずです。
    現在、私はパルディニーK12を使っています。とても気に入っています。もちろんそれ以外の銃も大好きです。
    私が思うに、エアピストルでのシューティングを好きになるためには、まず自分が所持しているエアピストルの見た目を好きになることが大事なんじゃないでしょうか。所持することに誇りを持てれば、もっとたくさん撃ちたくなりますし、撃つことがより楽しくなるはずです。(バージニア州)
     

    ※訳者注……FWB2(ファインベルクバウ・モデル2)。1980年代に発売されたCO2式のエアピストル。以前、当サイトで紹介したこともあるハンドライフルの元になっているC20よりも古いモデルになりますね。
    画像引用元:pilkguns.com

 

  • 私が今まで修理してきた電子トリガーのトラブルのほとんどは、単純な断線、スイッチあるいはバッテリーボックスのコネクターの故障のいずれかといった、ごくささいなことが原因でした。ささいではない大きな修理としては、電池の液漏れのため電子基板をまるごと交換したことがあります。
    私が最初(1985年)に所持した電子トリガーのモリーニは、これまで一度だけ修理をしています。ソレノイドが配線切れで動作しなくなったのを交換したのみです。もちろん、そのモリーニは今でも現役です。(アメリカ)

 

  • ワルサー製フリーピストルの電子トリガーに関するサポート打ち切りに関するホラーストーリーを読んでしまうと、電子トリガーへの躊躇がふつふつと湧いてきます。機械式トリガーの場合は、最悪の場合でも部品を作るか、誰か技術がある人に作ってもらえればなんとかなります(おそらく、お金もそんなにかかりません)。私の仲間には、S&Wリボルバーのトリガーリターンスプリングやペーパークリップを駆使してTOZ-35を維持している人が何人かいます。けれども、プリント基板に配置された電子回路が壊れてしまったら、同じものを作り出せる人はいません。手元に残るのは、高価な文鎮だけです。(国籍不明、だけれど発言内容から察するに多分アメリカ)
    ※訳者注……「TOZ-35が壊れたって? 大丈夫、S&Wリボルバーのトリガーリターンスプリングを使えば、ほらこのとおり!」
    「凄ーい! S&Wリボルバーのパーツなら全国どこでも簡単に手に入りますよね!」……って、役に立たんわこの知識!(-o-;)

 

  • 私の住んでいる街は湿度が極めて高く、電子機器に限らずありとあらゆるものに大きな影響を与えます。チームメートのモリーニCM162EIが湿度が原因で動作を停止したことがあります(そして、未だに修理できていません)。もしそんな環境の国または街に住んでいて、なおかつ技術サポートしてくれるショップが存在しない場合、購入候補になるのは機械式トリガーの銃だけになります。(ボリビア・サンタクルス)

「最悪の場合でも、機械式トリガーなら部品を自作して修理できる」

やっぱコレって無視できないレベルで大きいですね!

実は、今推薦を申請中のフリーピストルは、「まだ日本では誰も持ってないメーカーの銃」なのですが、電子トリガーも選択肢にあるのに敢えて機械式トリガーのバージョンを申請しています。その最も大きな理由が、「壊れた時に自分でなんとかできるだろう」ってのがあります。空気銃に比べて装薬銃は、もともと機構も簡単ですし。

あと回答の中で興味惹かれたのが、「迷ったら、見た目を気に入った銃を買いなさい。銃を好きになることが射撃を好きになることに繋がるのだ」ってヤツですね。自分は根がガンマニアで、それがこうじて射撃にも手を出したクチなので「そんなの当たり前じゃん」って感じなんですが、周りを見てると自分の銃をあんまり愛してない人って意外に多い! みんな、もっとガンマニアになるべきだ! あと、ガンマニアの人はもっと射撃をやるべきだ!

池上ヒロシ

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池上ヒロシ

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