リポバッテリーが、電動ガン用バッテリーとして使われ始めたのは、だいたい2009年ごろのことだ。そのころは、まだごく一部のマニアだけが使うちょっと特殊なバッテリーというイメージが強かった。リポバッテリーがハデに爆発して燃える動画がyoutubeで閲覧数を集めていたこともあって、「爆発炎上のリスクと、外観を崩さずに内蔵できる小ささをハカリにかけて後者を選ぶ勇気がある人だけが使えるバッテリー」みたいな印象を持ってる人も少なくなかった。
実際、そのころのリポバッテリーは、バッテリーの品質そのものには問題がなくても、それを充電したり管理したりするための充電器に問題が多かった。中国製のものが多く(これは今でもあまり変わらないが)説明書が全く不親切極まりなくて、なにをどこに繋いでどのボタンをどういうふうに操作すれば良いのか、皆目見当がつかない製品が珍しくなかった。自分がやっているその使い方が正しいのか正しくないのか自信が持てず、目をつぶって綱渡りするような危うさがあった。
状況が変わり始めたのは今から3年ほど前になるだろうか。日本の会社が電動ガン用に作られた様々な形のバッテリーと、それに対応した充電器を次々に発売しはじめた。わかりやすい……とはちょっと言いがたいが、少なくてもちゃんと読める日本語で書かれた説明書が付属しているし、なにより、わからないことがあるとか、万が一初期不良だったりした場合に問い合わせるべき連絡先がきちんと記されている。保証もある。
「普通のバッテリーよりもずっと小さく、これまで収納できなかった場所にも楽々内蔵できて、しかもパワフル」
不安感さえ解消されれば、リポバッテリーの利点が多くのエアガンユーザーに受け入れられるのにそう時間はかからなかった。サバイバルゲームフィールドで見ていても、リポバッテリーの使用者は物凄い勢いで増えている。電動ガン用バッテリーのスタンダード的地位まで上り詰めるのも、そう遠いことではないだろう。
この「形状の自由度」というのが、バッテリー収納スペースの形状に制限の多い電動ガンの場合は大きな利点になる。これまでの電動ガンの場合、バッテリー収納スペースは基本的に「(1) ストックの中」「(2) ハンドガードの中」のどちらか、というのがお約束だった。AKみたいに巨大なボルトの往復スペースがある銃の場合、そこに入れるという手もあったがこれはどちらかといったら例外。
だが、固定タイプのストックが廃れて伸縮タイプが主流になってくると(2)の方法が使いづらくなってきた。ならば残るはハンドガードということになるのだが、こちらもレールハンドガードが主流になってくると(1)の方法が使いづらくなる。内部スペースが狭く、入り組んだ形となり、普通のミニバッテリーが入らなくなってしまう。
メーカーも、特殊な形状の専用バッテリーを作ってストック内の空きスペースに収納したり、ハンドガード内部の形状を工夫してなんとかバッテリーを入れるスペースを捻出したりと、いろいろ工夫を重ねてはいる。だがそうなるとストックもハンドガードも専用のものしか使えなくなる。最近はそういったパーツはサードパーティ製のものを購入して入れ替えたりする楽しみ方をする人も多いが、その際にはどうしても「バッテリーをどこにしまったらいいんだろう?」というのが悩みの種になってくる。
そういったユーザー向けに「救世主」として登場したのがリポバッテリーというわけだ。容量はずっと多いのにサイズはそれほど変わらないばかりか、細長かったり薄かったりするので従来ならば入らなかった場所にも楽々と収納できる。特にM4カービンの場合、バッファーチューブ(伸縮ストックの軸になっている円筒形の部分)に入るようになったのは大きなメリットとなった。
バッテリーは一つのカタマリではなく、中に入っているいくつかの「セル」が直列に接続されているものだ、ということは「バッテリーの選び方 (2)」で解説したとおり。ニッケル水素と同じくリポバッテリーも複数のセルで構成されている。円筒形の金属セルではなく、やわらかいポリマーのセルだという点が大きな違いだ。
リポバッテリーのセルは1つが3.7V。2つのセルで7.4Vとなり、電動ガンに使うにはちょうどいい電圧になる。ニッカドやニッケル水素は8.4Vだから、少し足りないのではないか?と不安になるかもしれないが、実際に電動ガンに繋いで撃ってみると、8.4Vのニッカド/ニッケル水素よりもよっぽど元気よくバババババッと作動する。負荷がかかったときに一気に電力を放出する性能などが優れているため、電圧の差を感じさせない作動をしてくれるのだそうだ。
ニッカドやニッケル水素では、直列に繋がれたセルにまとめて電流を流すことで充電を行った。セル間のバランスが少しくらい崩れて先に満充電になるセルがあっても、低電流なら余分な電力は熱として放出され過充電によるトラブルは起こらない。だが、リポバッテリーの場合はそれはできない。満充電となったセルに対してさらに充電を行うことは即爆発炎上に繋がる危険な行為だからだ。過充電に対しては、リポバッテリーはニッカドやニッケル水素のように寛容ではないのだ。
そのため、リポバッテリーの充電は必ず「バランス充電」を行うことになる。充電器がバッテリーのセルを一つ一つ監視しながら、それぞれのセルに対して適切な量だけ充電するというものだ。リポバッテリーには、普段使う(電動ガンに接続する)コネクターの他にもう一本、小さいコネクターが付いているが、それを充電器に接続してやる。
また、ニッカドやニッケル水素用の充電器は、満充電になったときに起こる特有の電圧変化(デルタピーク)を検知して充電を終了する機能を持っているが、リ ポバッテリーは満充電になってもその電圧変化を起こさないため、ニッカド/ニッケル水素用の急速充電器を使ってリポバッテリーに充電をすると満充電になっ てもさらに充電を続けようとするため、これも極めて危険なことになる。
リポバッテリーの充電は、「リポバッテリー専用の充電器を使う」「バランスコネクターを接続して、バランス充電を行う」の2つが必須――これだけは必ず守ること。しつこくて申し訳ないが、リポバッテリーはとても便利だが、同時に使い方を誤ればものすごく危険なことになりかねないバッテリーでもあるのだ。
フル充電した状態のバッテリーにさらに充電を行ってしまう「過充電」により、リポバッテリーが爆発炎上したりする危険があるという話はもう何度もしたが、ならば逆にバッテリーを使い切った状態からさらに放電させようとする「過放電」はどうなのか? 実はこっちも同じように危険がある。いきなり爆発したりはしないが、過放電によってバッテリーに与えられたダメージが、後々のトラブルの原因になることはありうる。だから、本来ならばある程度以上にバッテリーの電圧が下がってきた(使い切った状態に近くなってきた)ら自動的に接続をカットする安全装置をバッテリーに内蔵するか、バッテリーと電動ガンの間に入れるなどの措置を行うべきなのだろう。
だが多くのリポバッテリーのユーザーはそれをしていない。コストがかさむこと、電動ガン内にスペース的な余裕があまりないことが理由だ。その変わりに、「ある程度、電動ガンの作動がゆっくりになってきたら、もうそれ以上撃たずにバッテリーを交換する」という方法で対処している。きちんとそのルールを守れば危険はないのだが、他人に貸す時などはしつこいくらいに「動きがゆっくりになったと思ったら、すぐに持ってきて。バッテリー交換するから」「間違っても、動かなくなるまで撃ったりしないで。爆発するかもだぞ」と脅しておいたほうがいい。
……まあ、実際にはそうめったに爆発などしないのだが。少なくても現時点では、日本国内で電動ガン用バッテリーが、製品の初期不良によって爆発したとか炎上したという例は一つもないそうだ。
「いや、ショップで聞いたぞ!? ある大手リポバッテリーブランドの製品が、配線の間違いっていう初期不良があって、いきなり燃えたことがあるって言うじゃないか」
うん、確かにその話は私も聞いた。あんまりにもあんまりな話なので手をつくして確認したのだが、結論から言うとそれは「悪質なデマ」であることが確認できた。なんでもライバル的関係にある他ブランドの人が対抗メーカーを貶めるために広めてるなんて話まであるが、それはいくらなんでも陰謀論っぽすぎて信じる気にはなれない……もしそれが本当ならけっこう酷い話だ。デマを広めた人間に対して法的措置を検討とかそういう話になってもおかしくないレベルの酷い話だ。
もし、ショップなどでこの話を聞いた人は、できればその場で訂正するか(その際には私の名前を出しても構いません)、そうでなくても自分でそれをほかの人に広めるみたいなことはしないで欲しい。
良い点
悪い点
【ガンマメ】電動ガン用バッテリーの選び方 (1)
【ガンマメ】電動ガン用バッテリーの選び方 (2)
【ガンマメ】電動ガン用バッテリーの選び方 (3)
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