
APS-3が発売されたばかりのころ、射撃仲間とあれやこれやとアイデアを交換しながら辿り着いた「簡単な加工で、ほぼ究極レベルのキレのよいトリガーにできるカスタム」の方法を、写真で解説します。
APS-3のトリガーメカニズム。前進しようとするストライカーを支えているのがシアA(水色)、そのシアAが動かないように下から支えているのがシアB(オレンジ色)。トリガーはそのシアBを動かすことで「シアAの支え」を外し、ストライカーが前進するという仕組み。黄緑色の「シアC」は、シアAとシアBの噛み合いが外れる寸前にトリガーに当たることによって、「ここから少しでもトリガーを引くと、弾が出るぞ」ということを射手に教えるためのパーツだ。基本的なコンセプトは、まずシアCスプリングを外すことでトリガーを軽くする。しかしそのままだと、シアAとシアBがズルズルと長い距離を滑るばかりで、軽いには軽いがキレが悪いトリガーになってしまう。そこで、シアAとシアBの噛み合いを外部から調節可能とすることで、最初から「少しでもシアBが動けば弾が発射される」状態にしておくというものだ。
まず、シアBを加工する(トリガー&シアの分解については、前回の記事を参照)。APS-3のシア関連の部品は基本的に全て亜鉛ダイキャストで作られている。亜鉛ダイキャストは表面は硬いが内部は削れやすいという特徴があるため、噛み合いの部分を削ると摩耗しやすくなる。
ネジ穴を作ったところ。手順としては「1.6mmのドリルで穴を開ける」→「2mm用のタップでネジを切る」といった手順だけれど、タップを持っていなければ1.8mmくらいの穴を開けてからネジを無理やりねじ込んで行くという力技でもけっこうなんとかなったりする。シアの調整
シアの作動を確認する。調整用ネジは付けない(あるいは一杯までゆるめた状態)で、シアAを上から押さえた状態で(左写真)、トリガーを引くとシアAが奥の方にカコッと引っ込めば(右写真)問題なし。もしそうならないようなら、どこかで組み込みをミスっている。
それではいよいよ調整だ。トリガーには触らない状態でシアAを上から押さえて、調整用ネジを少しずつ締め込んでいく。ある程度ネジを回したところで、(トリガーは引いてないのに)シアAがカコッと奥に引っ込むはずだ。そしたらシアAを押さえている手を離して、調整ネジをその位置から半回転だけ戻す。これでOKだ。
「コッキングしてセーフティーをかける」ことができなくなる
このカスタムの欠点が、「コッキングして、セーフティーをかけて、それからセーフティーを外すと弾が出てしまう」という問題があること。なんとかならないかといろいろ試してみたのだけれど、こればっかりはAPS-3の構造的な問題のようなので解決方法が見つからなかった。
なので、このカスタムを行ったAPS-3をAPSカップ本戦に使うときには、セーフティーをかけるときには必ずコッキング「しない」状態でかけることを徹底する必要がある。万が一、間違えてコッキングした状態でセーフティーをかけてしまったときには、アッパーカバーを開いて手で押さえた状態でセーフティーを外し、それからゆっくりとアッパーカバーを閉じればOKだ。
このトリガーカスタムをすると、コッキングした後のセーフティー操作に不具合が出てしまうが、ちょっとした手間で暴発は回避できる。まずセーフティーをかける際には、アッパーカバーをいっぱいまで開いて、さらに開く方向にテンションをかけた状態でセーフティーボタンを押し込む。※これは特に改造していないAPS-3でも、セーフティのスムーズな操作のためには有効な方法なので習慣づけておくことをオススメする。
セーフティーを解除するときも、アッパーカバーを一杯まで開いてさらにテンションをかけた状態(内部メカ的には、ストライカーを後退させてセーフティーと離した状態)でセーフティーボタンを押して解除する。この後、ゆっくりカバーを戻せば大丈夫だ。
カスタム加工、請け負います
何か特別なパーツを使っているわけでもなく、加工にもそれほど特殊な工具を使っているわけでもなく、基本的には「どこのご家庭にもある工具を使って、誰でも簡単にできるカスタム」だと思いますが、それでも「ちょっと自信がない。やってくれる人がいるのなら頼みたい」という人もいらっしゃるかもしれませんので、上記のトリガーチューンを有償にて請け負います。
APS-3が品切れ気味なので持ち込み加工オンリーとなります。料金や納期などについては、左上の「ご意見、ご感想はこちらから」と書かれたフォームからお問い合わせください。もちろん、直接お会いする機会がある方なら直接のご依頼も歓迎です。








