ASC(ASIAN SHOOTING CONFEDERATION)提供の「基礎から学ぶピストル射撃」動画について、私のショボいヒアリング能力で聞き取れた範囲で内容の簡単な紹介と、一般的な「ピストル教本」とのちょっとした違いについて解説していきたいと思います。
なかなか弾を撃たなかったここまでと打って変わって、今回は撃ちまくりです。それもここまでの集大成って感じに、姿勢・呼吸・照準の全てを動員してきます。その全てが完璧に統合されたときに最高のショットができるのである、みたいなことを言ってるみたいです。
ただ、トリガーへの力の加え方は、一般的なピストル教本に載っているものとはかなり異なるものになっているように思えます。具体的にどういうふうに違うのかってことについては後ほど。
動画内で言ってる内容も、回を重ねるにつれてずいぶんと専門的なものになってきました。実際にピストル射撃をやってる身からすると、ここまでは「そんなん知ってるよわざわざ言われなくても」的な内容だったのが、ここらへんからは「へー、そういう考え方もあるのかー」と考えさせられる内容になってきます。別の言い方をすると、ピストル射撃やってない人にとっては何が何やら訳わからん内容かもしれません。
それもあって、今回からタイトルを、「韓国の人に学ぶピストル射撃の基礎」から「韓国の人に学ぶピストル射撃」に変えました。とてもじゃないけれど基礎っぽくないレベルにまで足を踏み入れちゃいましたので……。
Part.6 トリガーの引き方(Trigger pull)
※以下、画像は上記動画内より引用(あきゅらぼロゴが入っているものを除く)
エアピストルは、ピストル射撃のなかでも基本とされる位置付けにある競技である
そして「ファイアリング(発砲すること?)」は、ピストル射撃において非常に簡単である
トリガーフィンガーのポジションは、図の通りである
(真っ直ぐ後ろに引く図を表示)正しい
(浅かったり深すぎたりで斜めに引く図を表示)正しくない
人差し指の「パッド(※)」を使い、トリガーを真っ直ぐ引く
また、人差し指とピストルの間にはスペースが開いていなければならない
人差し指がトリガーに与えるプレッシャーは、「1stステップ」と「2ndステップ」の2つで構成される
トリガープルは、競技において最も難しい要素となる
トリガーを絞るとき、最も重要なこととは、サイト・ピクチャーを見ることである
サイトが照準エリアに達し、射撃のためトリガーを引く
トリガープル(この力を加えると撃発するという数値)は、毎回全く同じ圧力になる
ピストルは、射撃を行う間はずっと静かに安定して支えられていなければならない
人差し指のパッドをトリガーに当てる位置は、正確かつ精密に決められる必要がある
親指はピストルのグリップを、ごく緩い力で支える
照準の間、人差し指はトリガーを注意深く引き絞り始める
1stステップは、(いったん上に振り上げたピストルを)下に下げていき照準エリアにサイトが入るまでの間に引いてしまう
人差し指がトリガーにかける圧力は、腕が形成するラインにダイレクトにかかるようにする
サイトがターゲットセンターの下に来たら、トリガーにかける力を徐々に上げていく
ゆっくりと真っ直ぐ後ろに。
トリガーを引く時には、銃は一切動かない
トリガーを引く力を徐々に上げる時には、照準エリアに入ったサイト・ピクチャーを乱さないようにする
動くのは人差し指だけで、それ以外の指は一切動かさない
弾を撃ったあと、ピストルはターゲットに向けて照準したままの状態にする
これを「フォロースルー」と呼ぶ
撃ったあと、1~2秒ほど銃をそのままの状態にしてから、銃を下げる
競技においては、「完璧なショット」というのは、しばしば一番最初か、一番最後に来るものである
・サイトピクチャー
・グリップの保持
・トリガーの引き方
全てのことが包括的に、かつ同時に評価される
撃発の瞬間には、数多くの身体的・精神的な要素が複雑に交じり合い影響をおよぼす
だからこそ、「内的姿勢」は非常に重要なのである
時々経験することではあるが、トリガーを引こうとする瞬間、奇妙に複合した心理的な感覚により人差し指が勝手に動き撃発するということがある
その時、リコイルは全く発生しない
心と身体の完全なる統合がもたらす最高の射撃である
内的姿勢を完全に身につけたエキスパートだけがたどり着ける境地である
正しいトリガーの引き方は、一律のペースで徐々にトリガーにかける力を強くしていくやり方である
トリガーに圧力を加えていく手順は、まず1stステップは迅速に引く
そしてトリガーにかける力を徐々に少しずつ強くしていき、撃発に至る
もちろん、姿勢の安定や呼吸、そしてサイトピクチャーが正しい位置にいることが前提である
トリガーに対して唐突に力を入れて引くことは、ピストルの同様を招き、弾はターゲットの右下へと飛んで行く
トリガーを強く押しこむようにすると、弾は左や上に飛んで行く
空撃ち練習は、射手の問題点を洗い出すのに効果的である
実際に撃ちながらそれ(問題点を見つける)をするのは難しい
空撃ち練習は、技術やトリガーの感覚を身に着ける練習としても効果的である
真っ白なターゲットを空撃ち練習に使用することができる
トリガーコントロールは空撃ち練習によって身に着けることができる
どのくらいの時間で、どのくらいの圧力をトリガーに与えれば良いのかを覚える
白的に向けた空撃ち練習は、射手にとって習慣とするべきである
リアサイトとフロントサイトを見る。ターゲットは真っ白なのではっきり見えてなくても問題ない。
1つ1つのショットに集中することが、試合において勝者となることを決定する
「海外の反応ってタイトルに入ってるけれど、ぜんぜん海外の反応じゃないじゃん」ってコメントも入っていたりしました。痛いところを突かれました。
けれど、ここらへんからようやく単なるピストル教本じゃなく、「一般的なピストル射撃のセオリーとはちょっと違う、韓国独自のやりかた」みたいなのが入ってきます。日本で起きた何かや日本にある何かに対する海外の反応しかダメだって言われると返す言葉がありませんが、「海外ならではの、独自の風習や技術を紹介する」ってのは、世の中にあふれる「海外の反応系ブログ」ではれっきとした一つのジャンルになってるみたいなんで、まあ許される範囲なんじゃないでしょうか。
その「独自の技術」というのは、すでに書いたとおりトリガーへの圧力の加え方です。動画内では、「一定のペースで、徐々にトリガーに加える力を上げていく」というやり方が正しいトリガーの引き方だとされていました。そのやり方だと、射手は「いつ、弾を撃つのか」を決定できません。じわーっと力を強くしていって、ある時突然にパンッと弾が発射される、そういう形になるはずです。
ピストル射撃におけるトリガーでの失敗というのは、トリガーを引く瞬間にうりゃっと力が入り、銃そのものが動いてしまってとんでもないところに弾が飛んで行くというヤツです。その失敗を絶対に起こさないためには、「いつ弾が出るのか、射手自身にもわからない」というこのやり方は、ある意味では理にかなっているとも言えるのかもしれません。
けれど、これだとたまたま弾が出たときにサイトがぴったり合っていたかいなかったかで、10点に入るかそうでないかが決まってしまいます。銃をぴったり照準エリアに止めて動かさない技術を持っていれば別ですが、実際にはほとんどの人はそうではないわけで、ということは10点に入るか入らないかは運任せってことになってしまいます。
実は、私の以前の撃ち方ってのはそういう「運任せ」な撃ち方でした。トリガーを引いた時の感触は凄く良いのは確かです。だって自分の意思でトリガーを引いていないんですから当たり前です。調子が良いときには10点がウソってくらいに連続して出て外す気がしないのですが、調子が悪いときはなにがなんだかぜんぜんわからなくなるレベルでまともに当たらない、そういう極端な傾向が出ました。
やっぱりそれじゃダメなんだ、トリガーは自分の意思で引かないとダメなんだ……ってことが分かって、銃の持ち方からグリップの形から全部変えたのが1年くらい前です。ずっと低迷してたのがなんとか上り調子になってきたきっかけになりました。
どちらが正しいか正しくないかって話になってくると、私なんかよりJin Jong-oh選手のほうがはるかに良い点を撃ってるのは言うまでもないことなので、韓国方式のトリガーの引き方のほうが正しいんじゃないかってことになるのですけれど……。でも、それでもなお、私は自分自身の経験から、「じわーっと一定のペースでトリガーに力を加えていって、あるとき突然に弾が出る」なんて撃ち方を良しとするのは我慢なりません。正直いうと、これから射撃を始めますって人にもそういう撃ち方は勧めたくありません。こりゃもう意地というか信念みたいなもんです。
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