3月に開催されたIWA 2016で、各社の新型エアピストルの市販モデルがお披露目になったようです。次のオリンピックでの覇権を狙っての意欲的な新製品ということで、どこも「単なるマイナーチェンジではなく、全く新しいものに変わった」ということをアピールしています。……モリーニを除いては。
公式サイトや公式動画にて公開されている情報と、Target Talkでのやりとりを元に、新世代エアピストルがどういうふうに変わったのか探っていきたいと思います。これからエアピストルを始める人、長年使ってきた銃がそろそろヤバくなってきて買い替えを考えてる人に参考になれば。
ステイヤーevo10/evo10E
まずは、シェアNo.1のステイヤーから。反動軽減装置や3D調整グリップを備えたLP10、さらにそれを電子トリガー式に改良したLP10Eが現在のフラッグシップモデルですが、「evo(革命進化)」なんて大胆なネーミングで登場した新型は、どこがどう変わったのでしょうか。
evo10/10Eは、「LP10/10Eをよりよくしたもの」という考え方で間違いないようです。公式動画を見てもだいたいそんなことが熱く語られています。
公式動画によると、改良点は全部で12箇所あるそうです。(画像は全て上の動画より引用)
スタビライザー(反動軽減装置)や、練習用の空撃ちモードといった、LP10/10Eの特長はそのまま継承しているようです。
では海外掲示板(TargetTalk)でのこの銃についての評判を見てましょう。
海外掲示板でのステイヤーLP10/10Eについての評判
引用元:TargetTalk (http://targettalk.org/viewtopic.php?f=4&t=51678)
- ステイヤーとファインベルクバウの、新型エアピストルについて、なにか新しい情報はありませんか?(オーストラリア)
- フロントサイトとリアサイトを傾けられるようになっています。バッテリーはミニUSBで充電、フル充電で1万発も撃てます。残り少なくなるとLEDが点滅しますが、点滅してからも300発撃てるとのこと。あと、バレルシュラウドがやけにオシャレです。
電子ユニットと本体をつなぐケーブルは、両端とも取り外し可能です。電子ユニットはえらく小さいんで、グリップ内の収納スペースも小さくなりました(つまりグリップは新型です)。旧型(LP10/10E)のものよりもずっと良くなりました――というか正直言って私は旧型のグリップが大嫌いなんですが。
トリガーは、ついにマイクロスイッチではなくなりました。モリーニはとっくの昔に実現していたことがやっとステイヤーも実現できたというわけです――Matchgunsの方がずっとクリスプですけど(※)。
レギュレーターについては、イギリス人的な婉曲表現をするなら、「残念ながら市場で最高とはいえないものが、そのまま継承されています」。私のMatchgunsの初速変化は±0.3m/s程度ですが、LP10は±10m/sの変動があり、目に見える形でグルーピングの悪化につながっていました。それが改善されていません。
一貫性がないということで悪名高い反動軽減装置(スタビライザー)についても、改善されていません。ここも残念な点ですね。ファインベルクバウの新型(P8X)では反動軽減装置が新しくなっていまして、なんでも「古いヤツよりずっと良くなってる」と評判なのに、ステイヤーの方は改善なしとは残念です。
(ドイツ)(※Matchgunsというのは、モリーニの創設者であるチェザーレ・モリーニ氏が新たに作った競技銃メーカーです。訳者注)→トリガー周りは、あいかわらずプラスチック製ですか?(オーストラリア)
→トリガーハウジングはアルミになりました。また後方への調整範囲が広くなっているのは指が太くて短い人には朗報だと思います。(ドイツ)
- なんでステイヤーは独自規格の充電式電池にこだわるんでしょうねえ。フツーにそこらへんに売ってる乾電池のほうが助かるのに。(不明)
→その意見には賛成ですが、ただ私はメーカーが独自電池を使わざるを得なかった理由も理解できます。電子ユニットをグリップ内の小さなハウジングに収まるサイズにするためにはリチウム電池を使うしかなかったのでしょう。MatchgunsのエアピストルはA23電池を使っていますが、それでもevo10のリチウム電池の2倍の厚さがあります。(ドイツ)
→このタイプのリチウムイオン電池は、最近はドローンや電子工作といった用途があるためけっこう安く手に入ります。このサイズなら10~15ユーロといったところです。正しいコネクタが付いているものを探すのが骨ですが……。ギリシャでは84E電池も約12ユーロですし、A23は単三電池と同じくらい安いです。(ギリシャ)
→エアピストルって、数年で使い捨てにするものじゃなく(うまくすれば)数十年は使い続けるものですけれど、10~15年後にもその電池は普通に手に入るのかどうかってこと考えると、独自規格の電池ってのはちょっとなーって思いますね。(不明)
- 旧型のLP10Eを、新しいトリガーにアップグレードできますか?
→写真を見比べてみた範囲では、やってやれないことはなさそうだけれど、パーツを全部買い揃えることを考えると普通に新しくevo10Eを買っちゃうほうが安いんじゃないかなあ。(オーストラリア)
→LP10Eを売ってevo10Eを買えば、差額は確実に部品代より安くなります。(ドイツ)
- evo10の新型の傾斜調整ができるサイトを、LP10に付けることはできないでしょうか?
→問い合わせたところ、新型サイトを古いステイヤーでも使えるとのこと。現在注文中です。(不明)
- ステイヤーのEvo10/10Eは、LP10/10Eを置き換えるものになるのでしょうか?(オーストラリア)
→それは、顧客が新製品の改良点が買い換えるに値するものだと考えるかどうかによりますね。気になる改良点というと下記のようになります。
1.弾込めがやりやすいデザインになった
2.トリガーガードが広くなった
3.フロントとリアサイトを傾けることができるようになった
4.リアサイトの深さの調整が改善された
5.スチール部品がブラッククロームメッキされた
6.バレルシュラウドが新しくなった
7.新世代グリップ
正直、私は自分のLP10に満足しているんで、いまのところ買い換える気はありません。(コスタリカ)→「3」は正直どうなんだろう、サイトを回転させるよりもグリップを傾ければ済む話では?(不明)
※傾き調節可能なサイトについては、この後にけっこうな激論になりましたので、また別のエントリーにて紹介したいと思います。
- 確かな筋の情報によると、LP10はすでに生産停止、evo10が新しいフラッグシップモデルとなるとのことです。LP10は流通在庫のみとなり、新規で手に入れるのは難しくなるかもしれません……あくまで噂として聞いて下さい。
個人的な推測で言うのなら、LP2がエントリーモデル、evo10が主力モデルというすみ分けになるんじゃないかと思います。次に新製品が出るとしたらevo11になるんじゃないかと。(オーストラリア)
- evo10Eには、トリガーストップを設定するオプションはありますか? 私がいまだにLP10を使い続けているのは、LP10Eにはトリガーストップの設定が無いからなんですが。(不明)
→あくまで個人の好みの問題ではありますが、電子トリガーにはトリガーストップを設定する意味がありません。トリガーストップは、メカニカルトリガーに特有の、シアが切れた瞬間に50~100gほどトリガーが軽くなる現象による動揺を抑制するためのものです。電子トリガーは撃発直前・直後でトリガーの重さに劇的な変化はないため、抑制するべき問題が生じません。(イギリス)
- ステイヤーevoの良い所
1.フロント&リアサイトを傾斜調整できる機能
2.新型グリップ
3.トリガー周りがアルミ製になったこと
4.接点スイッチが新しくなったこと
良くないところ
1.充電式電池
2.USBポートからの充電……スマホ使ってれば嫌ってほど実感するけど、あんなあっさりダメになるものを銃に使わないでほしい。
3.穴がたくさん開いたバレルシュラウド……私は銃は重い方が好きなので。あと経験上、あんな隙間だらけのシュラウドだと隙間に汚れが溜まって大変です。
こうだったらいいなーって思うところ
シュラウドを分割式にして、肉抜き軽量化されていないものと付け替えることができるようにしたらどうでしょう。重い銃が好きな人、軽い銃が好きな人、両方に簡単に対応できます。
あと、バッテリーは単三電池仕様にして欲しい。
最後に
私はこの銃を買うでしょうが、あくまでコレクション目的です。私は石器時代のモリーニ(多分、モリーニCM162Eのこと:訳者注)を使っていますがそれでも583を撃てます。新しい銃に変えれば590が撃てるかと言われたら、自分でも無理だと思います。(不明)
「コレクション用に、とりあえず一丁買っておこう」ってのができるのは羨ましい話ですねえ。