モリーニCM162E、ボルト&ストライカー周りの分解

ほとんどノーメンテで十数年も使い続けて、ほぼノートラブルだったモリーニCM162Eですが、ついにガタが来ました。致命的なことになる前に、まずは自分でメンテのために分解してみます。

もともとモリーニはコッキングが少し固い傾向はあるのですが、最近はそれに輪をかけてコッキングが固いなあと感じることが多くなってきました。とか思ってたらますます顕著になってきて、先日なんかは試合後半になると手のひらの皮が剥けるくらいの渾身の力で引かないと最後までレバーを起こせないほどに。これはいかんと、意を決して分解して整備をしてみることにしました。

電子トリガー関連のパーツは、ブラックボックスに近く全く手が出せませんが、そこから先の「ソレノイドがシアを叩いてストライカーを開放する」あたりのパーツは、むしろメカニカルトリガーの銃より単純なくらいです。ただ、分解のためには銃の後部にあるプレートを外す必要があり、そのためにはトルクスのネジを一本外さないとならないのですが、そのネジが固い! 付属のトルクスレンチが一つあるのですが、それがなぜか微妙にサイズが合わなくてしっかりとネジ穴に入らず力を入れられないのです。おそらくサイズが合うと思われるトルクスドライバーも手持ちにあることはあるのですが、普通にドライバーの柄を持って回そうとしてもビクともしません。

なので分解はためらっていたのですが、「いよいよ、このままでは撃てなくなりそう」となればそんなこと言ってられません。本体を万力で固定し、ドライバーの柄をモンキーレンチで挟んで強引に力を入れます……「バキン!」とか豪快な音をたててネジが回りました。折れたりしてたらどうしようと思いましたがそんなことはなく、無事分解できて内部のパーツを取り出すことに成功しました。
 

分解手順です。エアシリンダーを外して抜弾を確認。グリップの後ろにある2本のボルト(赤矢印で示したもの)を外します。


ここが問題の、なかなか外れなかった後部プレートのトルクスネジです。サイズはT15で間違いないと思います。写真だと軽々と回してるように見えますが、実際の作業では銃本体を万力で固定し、ドライバーの柄をモンキーレンチで挟んで強引に回しました。壊れなくて良かった……。


無事に外れた後部プレート。一番上と一番下のネジ穴はグリップを固定するためのネジ穴です。上から2つめのイモネジはストライカースプリングガイドの前後位置を微調整することで初速を調整するためのもの。その下のネジが、外すのに苦労したトルクスネジです。


後部プレートを外すとストライカースプリングとスプリングガイドが飛び出してきますが、それほど強いテンションがかかっているわけではないのであまり気を使わなくても大丈夫です。
※銃の種類によっては、ここで物凄い勢いでスプリングが飛び出してきて天井に突き刺さる、なんてことも珍しくありません。注意が必要な作業工程なんですね。


ローディングレバーを外します。ここもトルクスのネジですが、一段小さいT10のネジです。T15やT10のトルクスドライバーは、電動ガンを整備する趣味を持ってる人だったら誰でも1本や2本、工具箱の中に転がってるんじゃないかと思います。


ローディングレバー回りにはワッシャーが何枚か入っています。左の本体側には真鍮製のワッシャーが2枚(同じものです。表裏はありません)、右のネジ側にはスチール製のワッシャーが1枚(お椀のような形をしていて表裏があります。膨らんだほうが右側です)入っています。


ストライカーを外します。「逆さにすれば落ちてくる」とTargetTalkには書いてありましたがそんなことはなく、内側から細い棒で押してやることでやっと顔を出しました。


ストライカーを抜き取ったところです。


ボルト(ローディングノズル)を外します。ピンの位置を銃の右側にある穴に合わせて、ピンポンチとハンマーを使って左側に叩き出します。「たいして力は必要ありません。簡単に外せます」ってTargetTalkには書いてありましたが、なかなかどうしてかなり勇気が必要になる叩き方をしないと抜けませんでした。


ピンを外したボルトを銃の後部から抜き取ったところです。


ボルト先端には、下から前方に向けてエアが抜けるような穴が開いています。銃本体から吹き出してくるエアが、この部分で銃身方向へと向きを変えて弾を加速するエネルギーになるわけですね。


めったに外さないボルトを外したので、せっかくだから銃身を後ろから覗いてみます。おお、当たり前ですがちゃんとライフリングがあるんですね!


左からボルト、ストライカー、ストライカーSPとSPガイドです。


部品の配置図はこんな感じです。トリガーを引いて接点が離れるとソレノイド(電磁石)が作動し、シアを下から勢い良く突き上げます。それにより後退したストライカーを支えていたシアが外れ、ストライカーが前進してバルブを叩きエアが放出され弾が発射されるという仕組みです。※内部のシアは取り出せなかったので、部品図を見ながら想像で描きました。形状は本物とは大きく異なっている可能性があります。


問題になるのはココです。ボルトに打ち込んだピンをローディングレバーで引っ張り上げて後退させる時に、最後の方でピンが前後動するスロット穴の上縁に強い負荷がかかり、そこが削れたり変形したりして動きが渋くなってしまうんですね。


普段はスムーズに動かせても、ストライカーやボルトの潤滑が切れてくると後退させるのに強い力が必要になり、強い力をローディングレバーに与えると結果として上写真で示した部分に強い負荷がかかり、変形してしまうという順番になるようです。普段からストライカーやボルトに対して適切な潤滑をしていればこんなことにはならないのですが、「なんか、動きが渋くなってきたなー」とか思いながら何年も放置していたせいでここまで変形が進んでしまったんですね。

これは、同じモリーニCM162Eの中でも最初の頃に作られたもの(具体的には1999年くらいまでらしいです)特有の問題なのだとか。このスロット部分がアルミで作られているため、ステンレスのピンによる負荷に耐えきれずに変形してしまうわけです。後のモデルではより硬い合金製となったためにこの問題は起こらないとのことです。

ここが変形してしまった場合の修理というのは、少々ややこしくなります。銃番号が刻印されているパーツだけに、「新しい部品と交換する」ってわけにはいかないんですね。TargetTalkには修理方法として2つのやり方が提示されていました。
 

まず、スロット穴の上のヘリだけを少し削り、そこに「スチール・ルブ(摩擦)・ストリップ」をハメ込むというものです。具体的にどのくらい削るのか、ストリップというのがどういう形状をしているものなのかはわからないので左図は想像で描いたものです。


もっと単純……というか作業工程的にはこっちが大掛かりになりますが特別なパーツを必要としない方法です。まずスロット穴を全体的に広げます。そしてピンに、真鍮製のチューブ・ローラーを被せるというものです。左右方向の抜け対策は、ローディングレバーで側面を覆う形になるので必要ありません。ほんとうに「被せるだけ」でOKです。このくらいのサイズの真鍮パイプだったらそれほど入手困難ってことはないはずですから、上のやりかたよりは少しはハードルが低いんじゃないでしょうか。


それほど精密さが必要な加工というわけではないので、「わざわざスイスのモリーニ社まで送って修理してもらうので数ヶ月待ち」みたいなことをせずとも、日本国内で同じ加工をすることはそれほど難しくないと思います。ただいくら簡単だとはいってもフライス盤が必須になるので、さすがに自宅でちょちょいと加工してしまうのは無理です……どうしよう、前々から思ってたけれどやっぱりフライス盤は買ったほうがいいんだろうか……。

とりあえず、ボルトとストライカーの潤滑をやりなおしてスムーズに後退できるようにするだけで、ローディングレバーの操作はずいぶんと楽になります。今後、頻繁に分解して潤滑しなおすことであと数年は余裕で保たせることはできそうですが、上図で説明されているような「抜本的な対策」をしておきたい気持ちもフツフツと湧いてきています……。

参考:TargetTalk(Morini air pistol problem)
http://targettalk.org/viewtopic.php?f=4&t=17105

池上ヒロシ

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池上ヒロシ

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