左利きの人は、日常で使う道具から趣味の用品に至るまでいろいろなところで不便を感じることが多いと聞きます。特に右用と左用で完全に形が違うスポーツ用品では、選択肢は少なくなり価格も高くなるため、「左利きである」というだけでスポーツを始める前から大きなハンデを背負ってしまうような状態なのだとか。
ただ、価格が高くても選択肢が少なくても、「選ぶことができる製品」が存在しているというだけで、選択肢そのものが存在しない状況よりずっとマシです。APS-3の左利き用グリップは、「選択肢が存在していないに近い状態」が長らく続いています。マルゼン純正部品としてはいちおうカタログには載っているのですが、Amazonや楽天やエアガンショップのWebサイトを見て回っても、そんなものは掲載されていないか、掲載されていたとしても「品切れ・入荷待ち」になっているかのどちらかです。ホビーショップフロンティアではオリジナル商品として、サムレスト部分を付け替えることで左右両対応するアイデア商品がラインナップにありますが、それもこの記事を書いている時点では品切れ中です。
そんなレア製品である「左用グリップ」ですが、2017年GWの「ひたすらシリーズ」連続開催週間用として、マルゼンさんより協賛品のご提供をいただきました。今週末(5/7)に新宿MMSにて初開催される「ひたすらブルズアイ」で参加賞品になります。抽選で、番号を呼ばれた方から順番に「自分が欲しい賞品」を選んで持っていく形になっていますので、誰でも目玉賞品をゲットできる可能性がありますよ!
さて、賞品として旅立ってしまう前に、とりあえず写真撮影とノーマルグリップとの比較をしてみたいと思います。
一見すると「ノーマルグリップの樹脂をそのまま木にしたもの」に見える木製グリップですが、見比べてみるとかなりの部分が独自デザインになっていることがわかります。
さて、ここでピストル射撃競技において、「グリップと手の接触部分で、最も重要な箇所」とはどこでしょうか? この質問が「銃と手の接触」なら回答は迷うことなく「トリガーと人差し指」になるのですが、そうではありません。トリガーフィンガー以外の、手のひら全体とグリップとの接触についての話です。
答えは、「中指の上面と、グリップ前面の前に張り出した部分」との接触です。この部分が、「ワイドで、フラットで、安定した」接触をしていることがまずグリップフィッティングにおける大前提であり目標となり、それを実現するために他の部分、たとえば親指と人差し指の間の水かき部分とグリップとの接触面だとか、ヒールレストと「たなごころ」との接触面だとか、その反対側、いわゆるビーバーテイル部分と手の接触だとか、それを調整するという順番になります。
その「最も重要」になる中指上面とグリップが接触する部分の形が、ウッドグリップとノーマルグリップでは大きく違っています。
指の前方に回り込む形をしているノーマルグリップのほうが、より積極的に「中指上面とグリップ」との接触を強固にしようとしている感じがありますが、実際に接触面積を比べてみるとウッドグリップのほうが前方への張り出しが大きいぶん、「ワイドで、フラットな」接触という感触をより強く受けます。
またこの部分の形状の違いは、「人差し指と中指の間に入る突起」の形状の違いにも影響を及ぼしています。ノーマルグリップでは前方に向けてカーブを描いて大きく垂れ下がる形ですが、ウッドグリップでは比較的水平に近い形で前方に伸びています。「人差し指は、グリップとは一切接触をしない」のが競技ピストル用グリップの鉄則です。一見するとノーマルグリップのほうが「人差し指を避ける」形になっているように見えますが、実際に握ってみると大きな余裕があるのはむしろウッドグリップのほうだということがわかります。ノーマルグリップは「前方が垂れ下がっている」というより、実は「後方がせり上がっている」に近い形状をしており、そのせり上がった後方の部分が人差し指の脇に触れてしまいがちな欠点があります。
「ピストル射撃において親指に求められる役割」というのが、ここ数年で少し変化しているようです。以前は、親指を意識して前方に伸ばし、積極的にサムレストに押し付けて銃に力を加えて安定させる、というような使い方をしている人が多く、それを「良い撃ち方」として薦める人も多かったのですが、今は違います。手のひらが銃のグリップに対して加える力は、銃身方向に沿って「前方から」と「後方から」の2種類をメインとして構成され、基本的には左右からは全く力を加えないというのが良いグリップの握り方として推奨されています。
その推奨されるグリップの握り方をすると、親指は力を抜いて前方に伸ばしたり、それだと力が入ってしまう場合はいっそのこと曲げてしまってサムレストから外したりすることになります。世界大会などを見るとそういう撃ち方がどんどん目立ってきています。そうなると、大柄で力を加えやすいサムレストというのは、むしろジャマになってしまうわけです。
ウッドグリップが「ツルツルの状態」であることについて、マルゼン公式サイトに残っているパーツカタログには「てのひらに吸い付くようなスムース表面処理」なんてことが書いてありますが、とてもそうとは思えません。正直言ってこれは「表面処理の手抜き」、少し言葉を選んで書くと「ユーザーが手を入れて仕上げることを考え、敢えて未完成のままにしてある」ものだと思います。
実際、LE2015に付属する「アナトミカル・グリップ」では、小さい穴が無数に開けられた滑り止め加工が施されています。このツルツル仕上げのグリップは、購入したあとにユーザーが自分の手に合うように加工を行って、しかるのちに滑り止めの表面処理をして完成するというものだと考えるのが、一番理にかなった考え方じゃないかと思います。
※さすがに見学だけの方には参加賞品はありません