製品スペック
ノーベルアームズ PIN POINT VD21
1×33mm バリアブルドットビルトインマウント
価格:¥8,900-(税込¥9,345-)
倍率:1倍
全長:82mm
重量:115g
ノーベルアームズは、世界的にも評価が高かった日本の光学機器メーカー「ハッコー」が企業活動を停止した後、製造部門のみが独立するかたちで誕生したメーカーだ。だからメーカーとしての歴史はそれほど長いわけではないが光学機器製造の技術やノウハウについては、有象無象の「軍用サイトに似た形のパチモノ」を売ってるようなメーカーとは一線を画している。ノーベルアームズ製のスコープは、実銃でライフル射撃を行っているような人達にとっても、価格が数十倍もするような本格的なスコープ(シュミット&ベンダーとかリューポルドとか)と真面目に購入する際に比較対象として検討されるくらいのクオリティを持っている。
「スコープ」という道具はけっこう歴史が長く、どういった形でどういったレンズを使ってどういう寸法で組み合わせれば、どんな性能が発揮されるのかがだいたい分かっている世界なので、値段の差はレンズのコーティングとか、ボディの表面仕上げだとか、レティクル調整部分に使われている部品の精度だとか、そこらへんに現れる程度で、ぶっちゃけエアガンで使う範囲においては1000円とか2000円とかで売ってる激安のスコープと、数万円~数十万円するような本格的なスコープとでは致命的な性能の差といえるほどのものはない。とりあえず銃に固定して、目標を狙うと拡大されて見えて、ウインデージ・エレベーションノブを回すと一定の間隔でレティクルが動く、という最低限の機能は(よほど運が悪くないかぎり)備えている。
だがドットサイトとなると話が違う。それほど歴史が長いわけでもなく、また形も様々なので、「こういった形で作っておけばとりあえず問題ない」という定番めいたものが確立されていないのだ。キッチリと設計して試作を繰り返して納得のいく性能を持った製品を完成させるメーカーの製品ならもちろん問題ないが、問題はそうやって作られた製品を「真似」して作るところ。光学的な設計についての専門知識がないメーカーが適当に形だけでっち上げたようなドットサイトだと、サイトとしての最低限の機能すら備えていないものが珍しくない。具体的には「ドットがいくら調節しても中央に行かない」、「そもそも調整機能が付いていない、付いているように見えて全く機能しない」、「断線していてドットが点灯しない」、「ドットが擬似的に投影されている距離が極端に近くて照準機器としての役に立たない」といった事例だ。「スコープに比べてドットサイトは、安物買いの銭失いになるリスクがかなり高い製品なのだ。
ノーベルアームズ製のドットサイトも、いわゆる「軍でも採用されている本格派ドットサイト」のデザインを真似たものが多いのは事実。メーカー名をはっきり書くと、「Aimpointのパチモノ」と言ってしまってもきっと誰も怒らないと思われるデザインの製品が並んでいる。しかしそこは経験のある光学機器メーカーだけあって、単に形を真似ただけのものでは決して無い。比較的安価に手に入る割にはしっかりと照準機器としての機能を備えており、仕上げの良さや精度の高さについては、値段が数倍もするようなサイトと比べても決して引けを取らない。
驚いたことにノーベルアームズはAimpointの日本国内正規代理店でもある。パチモノを作っているメーカーと正規代理店契約を結ぶ、なんてことは普通に考えたらありえないことだ。Aimpoint的にはノーベルアームズが作っている「自社製品に似た形のドットサイト」を、形を真似たパチモノではなく、玩具銃向けということで価格を下げた廉価版であるというような解釈をしたのだろうか。「本家Aimpointも認めた安心の品質」みたいなコピーを付けて売りだしてもいいんじゃないか、なんてことを外野の無責任な立場では思ってしまったりする。
そういう政治的なことはさておき、ノーベルアームズ製のドットサイト自体について見ていこう。製品ラインナップは大きく分けて4種類ある。Aimpoint製品に「似た」形をしている「COMBATシリーズ」と、ACOGなどの軍用サイトに似ている「SURE HITシリーズ」、超コンパクトサイズの「TINY DOT」、そして今回賞品として提供していただいたVD21を含む「PIN POINTシリーズ」だ。
PIN POINTシリーズの特徴は、ドットの大きさ、あるいは形を変更する機能を備えていることだ。ドットの大きさを変更できるのが「VD21」、形を変更できるのが「MR02」。ターゲットの大きさや形に合わせてドットを変更するなんていう機能は、例えば撃ち合いをしていていつどこからどんなターゲットが現れるか分からないような状況では使い道がない。あらかじめどんな距離で、どんな形・大きさをしたターゲットを撃つのかが分かっている状況、具体的には競技射撃の世界において初めて役に立つ機能と言えるだろう。
「ドットの明るさを調節するダイヤル」と、「ドットの大きさを調節するダイヤル」の2種類があるという点が、この製品を購入したユーザーを戸惑わせることとなる例が多いようだ。マニュアルは英語のものが付属するが、VDとMR共通のものなのでそこらへんの説明はざっくりと削られている。
精密な射撃をしたければドットは小さければ小さいほどいいのか? 必ずしもそうとは限らない。極小の、文字通り「点」にしか見えないドットをターゲットの中心に合わせるより、ある程度の大きさがあるドットを中心に置いて、円形のターゲットと同心円状になるように合わせたほうが狙いやすい場合もあるだろう。スピード系のシューティングなどで、一瞬でも早くドットを見つけ出したい場合なども、ある程度の大きさがあったほうが使い勝手はいいはずだ。一方で、ドットがターゲットよりも大きく見えてしまい、ターゲットを覆い隠してしまうようだと、これはもうどうしようもない。全く狙えない。遠くにある小さい円形をしていないターゲット、具体的にはAPSカップにおけるシルエット競技などでは、針で突いたように小さいドットのありがたみは非常に大きくなる。
だがそれも、投影されているドットがきれいな円形をしていることが第一条件だ。縦長に滲んでいたり、複数に分裂していたりするようでは精密な照準もなにもあったものではない。上の写真を見ればわかるとおり、VD21のドットはどの設定にしても見事な円形をしている。カメラのピントが合っていなくてピンボケして丸く見えているわけではない。フォーカスをマニュアルに設定して最もドットの形がクッキリする位置で撮影している。乱反射によるゴーストみたいなものが少し写っているが、これは肉眼で見てもまったく判別が付かないので、おそらくカメラのレンズの中で発生しているものなのではないかと思われる。
このフタの開け閉めは少々厄介だ。なんといっても回転するダイヤルの上にネジでフタがしてあるわけだから、普通に回そうとするとフタが開くより前にダイヤルそのものが回ってしまう。ダイヤルを指で固定しつつ、フタだけを回転させる必要があり、それなりに器用さが必要になる。まあ、ここは何度も開け閉めするような場所でもないのでそれほど問題にはならないだろう。
最初に書いたとおり、このドットサイトは4月3日の赤羽ピンポイントシューティングにて賞品として提供します。