Categories: トイガン射撃

APS-3トリガーカスタムVer.2構想中

[3/27追記:カスタム依頼の受付を開始しました。APS-3トリガーカスタムVer.2特設ページを御覧ください]

トリガーの軸受をベアリングに交換してあります。実銃のエアピストルだとほぼ必須の仕様です。実は軸受の交換が目的というわけではなく、他のカスタムをした結果必要になったという順番です。詳しくは記事内で説明します。

先日いただいた「ひたすらブルズアイ」の会場でのご依頼で、「あきゅらぼAPS-3トリガーカスタム」は記念すべきカスタム受注10個目となりました。数としてはそれほど多いってわけじゃありませんが、商売とかそういうんじゃなく「キレが良い競技用トリガー」ってのがどんなものなのか少しでも多くの方に体感してもらいたいというのが動機みたいなものですので、少しずつでも広まっていただければそれで十分です。

このカスタム、もちろん自分が使うAPS-3にも施してありますが、実銃のエアピストルと比べると少しだけ不満点はありました。全体的に軽くなりすぎてしまって、しかしセカンド・ステージの重さは変わらないため、トリガーを引いている途中での銃がいまいち安定しないままセカンド・ステージに突入してしまい、トリガーを引く力によって銃が動くのが怖くなってトリガーが引けない、という状況にしばしば陥ってしまったのです。

黒丸のなかにとりあえず放り込めばOKというAPSブルズアイならなんとかなりますが、さらにその中の小さい10点(APSブルズアイでいうところのX圏)を狙って1点2点を争う「ひたすらブルズアイ」の終盤なんかで何度もそういう状況になりました。

セカンド・ステージが重いのではなく、これはファースト・ステージがセカンド・ステージに比べて軽すぎるのが問題なんだってことが、所持しているモリーニと撃ち比べてみると良くわかります。実銃射撃をやっていない方だとトリガーは単に軽ければ軽いほど良いと思ってしまうことも多いかと思いますが、実はファースト・ステージとセカンド・ステージのバランスもけっこう重要なのです。
 

ノーマルAPS-3のトリガープルはこんな感じです。シアCの働きにより、シアが切れる直前でトリガープルが急激に重くなります。擬似的にセカンド・ステージを再現しているわけです。
Cバネを外すことによってトリガープルは大幅に軽くなりますが、シアBは長い距離をズルズルと動くだけでシアが切れる直前というのが射手には分からない、つまり「いつ弾が出るのかわからない=キレの悪い」トリガープルになってしまいます。
「あきゅらぼカスタム」をすることで、シアが切れる直前までトリガーとシアBが接しない状態に調整することが可能になり、セカンド・ステージでトリガーが動く量が極めて小さい「キレの良いトリガー」に変わります。

「あきゅらぼカスタムトリガー」のキレは非常に良いのですが、ファースト・ステージ(トリガーが動いているだけの状態)ではバネの力が弱く、トリガーにかかる力もかなり小さいものになります。そこでシアBに当たり、シアBスプリングとシアB・A間の摩擦に打ち勝ってセカンド・ステージを引ききると弾が発射されるわけですが、ファースト・ステージの軽さに比べてセカンド・ステージの重さの比率が大きくなってしまうという現象がおきます。

なぜそれが問題になるのでしょうか? ファースト・ステージが小さいと、トリガを通して銃に加えている力も小さくなります。銃にほとんど力を加えていない状態から、セカンド・ステージで始めて大きな力を加える……完璧なトリガーの引き方をしていれば問題ないことですが、実際には普通の人間はそんなの無理なわけで、トリガーに加える力が大きく変化するとどうしても銃口が動き始めてしまう傾向があります。

ここで、さらにセカンド・ステージそのものを小さくしてしまえというのも一つの選択肢です。シアBの材質や形状を変更したり、シアBスプリングを弱いスプリングに交換したりという方法があります。トリガープルはさらに軽くなります……が、当然コストもかかります。なにより、実銃のエアピストルのトリガープルとは更にかけ離れたものになってしまいます。APSカップ専用でやるのならそれはそれでアリですが、エアピストルの練習用としてもAPS-3を使っている身としてはちょっと困るわけです。

そこで、トリガースプリングを強いものに変更して、ファースト・ステージを重くしてしまおうという発想が生まれます。トリガープルそのものは重くなりますが、ファースト・ステージが重くなった結果、相対的にセカンド・ステージが軽くなります。絶対的な重さは変化しませんが、比率が小さくなるという意味です。
 

トリガースプリング(ノーマルAPS-3だと樽型をしているスプリング)を強いものに変更して、ファースト・ステージを重くした「あきゅらぼカスタムVer.2」。トリガープルそのものは重くなりますが、セカンド・ステージが軽くなったように感じます。
それは、ファースト・ステージとセカンド・ステージの比率によるものです。Ver.1ではファースト・ステージが極端に軽くなるため、「ほとんどトリガーに力を入れてないところから強い力を加えて発射」という感覚だったのが、Ver.2では「ある程度力を加えたところから少しだけ力を強くして発射」という感覚に変わります。
「トリガースプリングを強くする」と言っても、スプリングそのものを交換したわけじゃありません。ノーマルのスプリングよりも太いスプリングを購入して、適当な長さに切ってノーマルスプリングに被せ、二重構造のスプリングにするという方法です。特注スプリングじゃないので値段も高くありません……がこの長さのものが4本入ってましたんで余りまくりです。
3巻き分くらいを切って装着したところです。ここはスペースに余裕があるんでこういうムチャができます。自分はこのくらいがちょうどいいのですが、「もっとファースト・ステージが軽いほうがいい」「もっと重いほうがいい」という要望には、追加するスプリングの長さを変更することで対応できます。……さすがに外部調整式にするのは難しいです。

トリガースプリングを強くしてファースト・ステージを重くすることで、相対的にセカンド・ステージが軽くなり(軽くなったように感じるようになり)、プレッシャーがかかる局面での撃発から不安定さを大きく減らすことができました。しかしそうすることで、思いもよらない方向での弊害が新しく生じてしまいました。ファースト・ステージを引く時の感触が少しぎこちなくなってしまったのです。

スプリングを強くしたことによりトリガー軸にかかる垂直抗力が大きくなり、トリガー軸そのものの摩擦がより強くなってしまったのがその原因です。元々入っていたそれほど強くないトリガースプリングのときには全く気になりませんでしたが、強いトリガースプリングにすると、トリガーを動かし始めるときだけ大きな力が必要で、動き始めると少し弱くなる……という現象を体感できるようになってしまいました。中学や高校の物理で習った方は覚えているでしょうか?「静摩擦>動摩擦」という物理法則によって起きる現象です。

軸の摩擦係数を少なくするためには、ベアリング軸受を入れるのが王道です。実際、実銃のエアピストルではトリガー軸だけでなくシア類の軸受もほとんどがベアリング軸受に交換してあります。APS-3のトリガー軸の直径は3mm、ハウジングの厚さは2mm。そんな小さいベアリング軸受なんてあるのかしらと思いましたが、探すとけっこう作られてるんですねえ。
 

というわけで、冒頭にアップした「トリガーの軸受をベアリングに交換した写真」に繋がるわけです。効果は当然素晴らしいものがありまして、ファースト・ステージの引き味が別物のように変わりました。「ギギギギッ」から「スーッ」に変わる感じです。もちろんセカンド・ステージも迷いなく引けるようになりました。

「Ver.2」なんて名前をつけたところからおわかりいただけるかと思いますが、このタイプのトリガーカスタムも、以前のVer.1と同様に依頼製作を始める予定ではあります。しかしノーマルパーツに若干の加工を行うだけで終わるVer.2と違って、バネやベアリング軸受が必要になる点。そしてベアリング軸受の組み込み加工に必要になる精度が意外に高く、さすがに「どこのご家庭でもできる簡単な加工」ではなくなってしまったことから、お値段もVer.1ほどはお安くはできないというのが実情です。

値段はともかくとして、需要がどのくらいあるかが、まったく見当が付きません。自分の脳内では、「こりゃ、とんでもなく画期的だ! このカスタムさえすれば他のトリガーカスタム系のパーツは必要ないぜ!」くらいな勢いで大絶賛なんですが、他のAPSシューターの皆さんにも同じように思っていただけるかどうかは分かりません……。

実際、このカスタム加工、頼めるようになったなら頼んでみたいという方はどのくらいいらっしゃいますでしょうか? Twitterでアンケート機能があるみたいなので、そこで投票を募ってみたいと思います。もちろんこのエントリーのコメント欄でも構いません。ぜひご意見お聞かせ下さい。

池上ヒロシ

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