「日本よりも銃規制が厳しいところ」として例に出されることが多い国がシンガポールです。聞いた話だからどこまで本当なのかはわかりませんが、日本ならば誰でも普通に買ったり撃ったりできる玩具のエアガンですら実銃あるいはそれに準じるものとして扱われるため、なんの気なしに玩具銃を預入荷物に入れたまま入国しようとした人が「銃の密輸を企んだ」と見なされてとんでもない目にあう、なんてこともあるとか。
そんなシンガポールですが、民間人の銃所持が完全に禁止されているのかというと流石にそういうわけではないらしく、クレー射撃やライフル射撃ができる総合射撃場がちゃんと存在しているようです。立派なWebサイトまであります。世界各国の銃規制について網羅するデータが掲載されているGunpolicy.orgによると、銃所持が認められる条件としては日本と同じ「スポーツ用途」があり、さらにそれに加えて「セルフ・プロテクション(自衛)」なんて日本じゃ考えられない用途での所持が認められているとのこと。政府高官とかお金持ちとか、そういう人に限って認められる銃所持特権みたいのがあるのかもしれません。
そういう物騒な話ではなく、普通に、日本と同じように、スポーツとしてライフル射撃やクレー射撃をやっている人というのは、どのくらいいるのでしょうか? エアガン(玩具銃)での体験すらできないとなると、きっとものすごいレアな存在なんじゃなかろうかという予想はつくのですが…。
世界中の射撃フリークが集まるインターネット掲示板「TargetTalk」に、そのシンガポールからの書き込みがあり、謎のベールに包まれていたシンガポールの射撃事情を少しだけうかがい知ることができたので、その部分だけ抜粋して紹介してみたいと思います。
引用元:Best Triggers for Air Pistol” target=”_blank”>Best Triggers for Air Pistol
この続きは、「エアピストルにおける理想のトリガーとはどんなものなのか」ってことについて、そりゃもう専門的にもほどがある、ほとんどの人はドン引きでついていけないレベルの話が繰り広げられました。最初の質問者であるシンガポールの人は完全に置いてけぼりになり、そのままフェードアウトです。
その内容はその内容で非常に興味深いもので、例えば「クリスプでドライなトリガー」、いわゆるキレの良いトリガーこそが精密射撃においては理想のトリガーなのだというのが一般的だが、世の中にはそうではなく、「ソフトなローリング・トリガー」、一言で言うとキレがすごく悪いトリガーを好む人というのもいて、一定の需要があるのだという話は、けっこう目からウロコでした。そこらへんは、いずれまとめて紹介したいと覆います。
シンガポールの射撃事情に話を戻しましょう。予想どおり、射撃をスポーツとしてやってる人が極めて少ないというのは事実だったようです。「スモールボア射撃をしているのは全国で15人かそこらしかいない」なんてのは、さすが日本より銃規制が厳しい国って感じですね。ここでいう「スモールボア射撃」というのがライフルを含めてのものなのか、ピストル射撃に限定しての話なのかは分かりませんが、厳しい厳しい言われてる日本でもスモールボアライフルを所持して日常的に射撃をしている人は数百人?千人?正確なところはわかりませんがそのくらいはいるはずです。ピストル射撃に限定した数字となると…シンガポールと似たり寄ったり、下手するともっと少ないかもしれません。
銃砲店には在庫ってもんが存在してなくて、競技銃を買おうと思ったときには注文して取り寄せてもらわないとならない、ってのも日本に良く似ています。日本でも、ほとんどの銃砲店は狩猟やクレー射撃がメインですから、そういうところで競技銃を購入しようと思ったら同じような状況になることでしょう。とはいえ、全国でたった数カ所とはいえ、ライフル射撃やピストル射撃の競技銃を専門で扱ってる銃砲店が存在しているというだけでも、私たちはずいぶんと恵まれているといえるのかもしれません。
ただ、シンガポールの競技射手が、あきらかに日本より恵まれている点というのが存在するということが、このトピックの書き込みを読むことでうかがい知ることができます。「射撃クラブに所属すると、クラブの銃を撃つことができる」という点です。このトピックの質問者さんの場合だと、LP2とLP10が、それもそれぞれ1丁ずつではなく何丁かずつ用意されていて、射撃クラブに入れば特別な手続きなしで撃てるようなのです。
日本では、自分で購入して自分で所持許可を取った自分の銃しか撃てませんから、同じことはできません。以前は「貸し銃」といって自分が所持しているわけではない銃を撃つことができる場所もあったのですが、数年前の銃刀法改正でそれも不可となり、数カ所あった貸し銃射撃場はすべて営業終了してしまいました。
正直なところ、「射撃クラブに所属している人に、クラブ備え付けの銃を、(多分コーチとかの監視のもとで)撃たせる」くらいだったら別に社会的危険性に影響があるわけでもなし治安が悪くなるわけでもなし、「そのくらい、いいんじゃないかなあ、日本でも許可してくれないかなあ」なんて思うのですが、なかなか叶わぬ夢ですね。「あのシンガポールですらOKなのに!」ってのは少しくらいは理由になったりしないかな? ならないよなあ…。