先日の日曜日、武蔵小山駅からほど近い目黒体育館にあるエアライフル射撃場にて、東京都秋季大会エアピストル種目が行われました。全部の射座を使っても一度に撃てるのは6人だけ、しかもエアピストルだけじゃなくハンドライフルも同じ場所で行われるということで、全部で6射群、朝の9:00から夜の8:00までぶっ通しの強行スケジュールだったようです。審判の方々は本当にお疲れ様でした。
この秋季大会、9月の頭に長瀞で行われた結果と今回のものと、両方合わせて集計して順位を決めるというちょっと変わったやり方をしています。長瀞では久々に良い点数……ってほどじゃなく「めちゃくちゃ悪いってほどでもないスコア」を撃てまして、他のみなさんが撃沈続出だったため「これはトップ取れたか?」と思ったのですが、トップだったのはその日だけで、目黒での結果を合わせると結局3位。
「やっぱ、ここをホームグラウンドにしてる人達には勝てないよな、仕方ないけど」なんて思ってたら、トップは目黒所属じゃなく、なんと同じ葛飾ライフル所属の女性射手でした。地元有利とか全然関係ないじゃん!
住宅街にある小さな体育館内にある小さい射場で、東京都秋季大会のピストル種目が行われました。ちょっと独特の射場なので、普段からこの射場で練習してる人が有利になるのは分かっていましたが、優勝したのは目黒所属の人ではありませんでした。
都の大会でのピストル種目では男女関係なく同じルールで撃って一緒に集計するので、こういうふうに女性射手にトップを取られるってことは珍しくありません。ライフル種目も男女合同だった時には、表彰台が全員女性だったなんてこともあったくらいです。
ところが、ピストル種目の正式なルールでは、「男性は60発競技、女性は40発競技」という具合に種目が別になっています。大会によって40発だったり60発だったりする女性射手は大変だと思いますが、それ以前の問題として、女性は男性の2/3の弾数だけで勝敗を決められてしまうというのは本当に合理的なルールなのか?そもそもなんで40発なのか?という疑問が生じます。
[2023/2/9追記]この記事を書いた当時は男女で撃つ弾数に差がつけられていましたが、その後ルールが変わり、2018年ごろからは男女とも弾数の差がなくなっています。種目そのものは男女で分けられていますが、射撃スポーツにおいて「男女でルールが異なる」部分はほとんど無いといっていいと思います。[追記ここまで]
海外の射撃フリークが集まる掲示板で、ちょうどそのことが話題になっていましたので、簡単に抜粋して翻訳してみたいと思います。
- 女性蔑視というわけではないのですが。
トライアスロンやマラソンやウエイトリフティングのオリンピック競技では、男女で取り立てて大きなルールの差はありません。なのに、なんでエアピストルでは男性は60発、女性は40発という差があるのでしょうか? 私の個人的な考えですが、「本当のメンタルの強さ」は、40~60発目を撃つ時にこそ試されるんじゃないかと思います。 - テニスでも女性は3セットマッチ、男性は5セットマッチですが、それと同じ理由なんじゃないですかね?(オーストラリア)
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- 男性と女性のスコアが同条件で比較されることがない理由の一つは、女に負けるとプライドがズタズタになって激おこになっちゃうようなレベルが低い国があるからじゃないか……と、私は以前から思ってたんですが。(国籍不明)
- →>女に負けるのはイヤな人
そういうのはあるかもしれません。けれどそういう人も、(私のように)ローカルマッチでブレンダ・シルヴァの隣で撃つハメになったりすれば考えも変わるんじゃないでしょうか。時々ルビー・フォックスまで来たりすることもあったり。(アリゾナ州・スコッツデール)
ルビー・フォックス(Ruby Fox):かつてUSA代表だったことのあるピストル射手。1984ロス五輪で銀メダル(25mピストル)。写真は1984年のもので、現在は71歳のおばあちゃんのハズ……まだ現役で試合に出てたりするのか!すげえ!
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- →>女に負けるのはイヤな人
真実が含まれてますね。
競技会の細かい結果が残っているのなら、「最初の40発」に限って男性と女性のスコアを比較してみると面白い結果になることでしょう。(カナダ・モントリーオール、ケベック)
- 本当の理由は何かってことをハッキリさせようとするなら、数十年前、あるいはそれ以上に昔の話まで遡る必要があるはずです。
IOCあるいはUITは、男女の競技は別々であるべきだと考え、それらを分離したのだと思います。男性と女性が同じコースを撃つ状況を作らないために女性しか参加できない競技を作ったのです。1972年にIOCは300m競技を削除し、空気銃や女子競技でそれらを置き換えました。その結果、女性が競技で使用するライフルやピストル競技は異なるものとなり、競技のルールも異なるものとなりました。(国籍不明) - →>IOCあるいはUITは、男女の競技は別々であるべきだと考え、それらを分離した
私は、性別によって種目が分かれたのはIOCによるものではなく、それぞれのスポーツを運営している組織によるものだと思います。なぜなら、いくつかのオリンピック種目は男性・女性で種目もルールも基本的に同じだからです。
例えば陸上競技に使うトラックは、男性と女性で全く同じです。
とはいえ、多くの競技で性別によって種目を別々にするのには、それなりに理由があります。
男女の違いは、スポーツにどれだけ影響があるのか?(ワシントン・ポストの記事)
>しかし、スポーツは「工夫の極み」でもあります。そのルールは合意によって形成されており、意味のないものは一つもありません。(カナダ・モントリーオール、ケベック)
- オリンピックの歴史を遡ってみましょう。男女が一緒に同じ競技に参加した歴史的なイベントがありました。1992年バルセロナでのクレー射撃です。男どもはケツをムチでしばかれることになり、IOCは男子競技と女子競技を分離するための多くの理由を挙げ、その二つを分離しました。(国籍不明)
- マーガレット・マードック(アメリカ)は、1976年のオリンピックにおいて50mライフルで銀メダルを獲得しています。当時は、女性が競技で活躍するという可能性が全く考慮されておらず、ルールについても何の記載もありませんでした。彼女は金メダル(ラニー・バッシャム、同じくアメリカ)と同じスコアでしたが、タイブレークのルールにより金メダルは獲得できませんでした。ラニー・バッシャムは同点決勝を行うことを要求しましたが、それは認められませんでした。表彰式では、ラニー・バッシャムは表彰台の最上段にマーガレットを招きました。
同じ競技で競合する女性を排除するためにルールが変更されたのは、その後すぐのことでした。(アメリカ・マサチューセッツ州)
- 男が「恥をかきたくない」ってのが理由でしょうね。経験上、男女が同時期に射撃を始めて同程度の時間練習した場合、6割くらいの確率で女性のほうが先に上達します。(ウィスコンシン州)
- 男性と女性の能力を比較する際に、考慮しなければならない要素があります。
私の手元に、ここ数ヶ月の間に開催された3回のオープン競技におけるエアピストルのスコアがあります。
まず私は、「Aグレード」と「Bグレード」のスコアのみに注目しました。このカテゴリーの射手はハイレベルですし、スコアも安定しているからです。次に私は、有意に低い点数を排除しました。明らかにその日はたまたま調子が悪かったからだと思われるからです。
その結果はこのようなものになりました。
●平均スコア
男性(25名):最初の4シリーズの平均…8.66、6シリーズの平均…8.67
女性(16名):4シリーズの平均…8.49
●シリーズ最高スコア
16名の男性射手は、4~5シリーズ目にその日のシリーズ最高スコアを出している
7名の女性射手は、2シリーズ目にその日のシリーズ最高スコアを出している
●シリーズ最低スコア
13名の男性射手は1~2シリーズ目に最低スコアを出している
8名の女性射手は1シリーズ目に最低スコアを出している
この結果から分かることは、40発目を過ぎてからの射撃がそれまでとどう変わるかということです。多くの女性は1シリーズ目に最も低いスコアを記録したことから、彼女達が60発マッチを撃てばそのスコアは男性とそれほど変わらないものになるのではないかと思われます。特にメンタル面がより重要な局面になれば、女性はより優位性を持ちスコアも上がるのではないでしょうか。
みなさんのクラブでも男女混合の60発マッチを行って、どんな結果になるか試してみて下さい。(国籍不明ですがなんとなくオーストラリアっぽい?) - →>みなさんのクラブでも男女混合の60発マッチを行って
やってますとも! ブレンダ・シルヴァにケツを蹴り上げられるのもしょちゅうです。(アリゾナ州・スコッツデール)
「女性は射撃が上手い」というのは、世界的に見てもだいたい共通認識といって構わないようですね。
もちろんワールドカップやオリンピックのような極限まで高いレベルになると絶対的な体力差というのがスコアに影響するのでしょう、男女のスコアには明確な差が生じます(男性のほうが高くなる)が、ローカルマッチのレベル(例えば、冒頭に書いた都大会など)では男女はほぼ同等、むしろ女性のほうがちょっと上になることが多いくらいです。
さすがに、「女に負けるのはプライドが許さないから、ルールを変えて種目を男女別々にしたに違いない」なんてのはちょっとどうかなと思いますが……。男ってそこまで情けない生き物じゃないよね?