アキュコンプシステムは、前方に長く伸ばしたレールの先端にコンペンセイター(の形をしたパーツ)を固定し、そのコンペンセイターを使ってバレル先端を支えることで精度UPを狙ったカスタムパーツだ。ガスブローバックの精度UPカスタムとしては、必殺技というか究極というか、ある意味では「反則」に近いようなカスタムでもある。実銃と同様にショートリコイルしてバレルが動くことが利点であり魅力とされているガスブローバックに対して、バレルを固定してしまうというのはせっかくの魅力をスポイルしてなりふり構わず精度UPを図ろうとする卑怯な手段なのではないか? と考える人も、いろいろ話を聞いてみると少なからずいるようだ。
だが、実は現在販売されているガスブローバックハンドガンの多くは、ノーマルの状態でもインナーバレルは固定されている。いくつかアウターバレルと一緒に動く形になっている製品もあるが、基本は「インナーバレルの根本はフレームに固定、アウターだけが動く」という形になっている。フリーダムアートのアキュコンプシステムは、そのインナーバレルを根本だけではなく先端でも固定してやろう、という考えで作られたパーツであり、アウターバレルはアキュコンプシステム組み込み後でも実銃どおりにショートリコイル動作をしてくれるのだ。
コンペンセイターはレールの下側から1本の六角ボルトで固定されている。通常分解するためには、このボルトを2mmの六角レンチ(アーレンキー)を使って外してやる必要がある。「分解に工具が必要になる」というのは、工具なしで簡単にスライドを外すことができたノーマルと比べて、明らかに不便になった部分である。構造上、これは仕方のないことだ。ハイキャパは、その構造上ホップ調整はスライドを外さないかぎり行えないようになっているため、頻繁にHOP調整を行うような使い方をする場合は、2mmの六角レンチを常に持ち歩かなければならない。
インナーバレルはコンペンセイターの前端ギリギリのところまである形になっている。コンペンセイター先端の内側にはネジが切られており、別売りの「VP70用サイレンサーアダプター」を使うことでサイレンサーなどのマズルアタッチメントを取り付けることができる。「VP70用サイレンサーアダプター」は14mm正ネジ、逆ネジの2種類があり、各1470円(税抜)だ。
もしガスブローバックのハンドガンをお持ちなら、一度この形で組み立ててみてインナーバレルがどういう形でフレームに固定されているのかを確認してみることをオススメする。「スライドやバレルががしょがしょ動くガスブローバックで精密射撃なんて…」という気持ちが、「これだけしっかりバレルが固定されてるんなら、やりようによってはもっと良く当たるように出来るんじゃないだろうか…」って気持ちに変わってくるかもしれない。
「インナーバレル根本部分の固定」というのは、精度アップのカスタムではけっこう見逃されがちな部分である。銃を構えて狙うときに、揺れる(ように見える)のは銃の先端だ。その先端をガッチリと固定してやればきっと良く当たるようになるだろう…という発想は自然なことだ。だが、先端と根本と二箇所でバレルを支えている以上、その両方を固定しなければ求めている精度UPは実現できない。
やりかたにはいろいろある。一番確実なのが、フレームに穴をあけてタップでネジを切り、トリガーガード内側からイモネジをねじ込んでバレルを下側から押し上げ、固定してしまう方法。だがこれは外観に影響がある(穴をあけてしまう)こと、通常分解のたびにネジを外さないとならないことなど、いろいろとユーザー側に負担を強いるカスタムだ。自分で使うならともかく、誰かに進呈することが決まっている銃に対して行うカスタムとしては、ちょっと敷居が高い。
自分だけで使うなら問題ないが他人に渡すとなるとちょっと…という方法としては、木工用ボンドを使うやりかたがある。インナーバレルとフレームの接合面に木工用ボンドを盛って、その状態で組み立てて、ボンドが固まるまで放置する。固まってしまえば、インナーバレルとフレームの間のガタは完璧に解消されているというわけだ。分解するときは、力を入れて引っ張ってやればペリッと剥がれる。再び組み立てるときには固まったボンドを丁寧に取り除き、再びボンドを盛ってから組み立てればいい。実に簡単で確実。実銃のボルトアクションライフルで言うところの「ベディング」に近い考え方だ。だがこれも、「ホップ調整のたびにボンドが固まるまで数時間待たないとならない」なんていう、とてもじゃないが実用性に欠けるエアガンになってしまう。
フレームの、インナーバレルと接合する部分を脱脂した上でアルミテープを重ね張りしていく。貼りすぎると組み立てられなくなるので、一枚貼っては組み立て、貼っては組み立ての繰り返しでちょうどいい具合になるところを探していく。結果的には2枚貼ったあたりが一番バランスが良さそうなので、それで行くことにした。左写真はテープを貼った状態。もともとが銀色なのでテープを貼ったことがイマイチ分かりづらいかも。
この加工は、アキュコンプシステムを組み込んだハイキャパだけではなく、ほとんどのガスブローバックに対して行うことが可能だ。バレル先端はフリーの状態でも、根本の部分をガッチリと固定してやれば、確実に精度がアップする。通常分解や組み立ての時に少し神経を使う必要が出てくる(インナーバレルの根本が、キチンとフレームの正しい場所に入るように気を使わなければならない)ことと、ガバメント系の場合はスライドストップの動きが少し渋くなるので、ホールドオープンしづらくなってしまうことには注意が必要だ。
なお、ハイキャパのマガジンとマルゼンSGM-BBは相性が悪く、マガジン内で止まってしまい上まで登ってこない状態になりやすい。一発ずつチャンバーにBB弾が送られていることを確認しながら撃たなければならないため、連続して撃つシューティングマッチなどでは使えない。自分の経験だとSⅡS弾はマルイのエアガンとの相性が良いことが多かったので、今回はそれでテストを行った。
全体的に、祖点よりも上側に着弾する傾向がある。HOP調整などである程度の対応はできるが、このカスタムガンは前後サイトともに固定されておりサイト調整はできないので、射手の側が着弾位置に応じて狙う場所を変更してやる必要がある。そういえば、精度UPを目的とするパーツが数多く組み込まれているせいですっかり忘れていたが、このカスタムの基本的なコンセプトは「インドアフィールドでのサバイバルゲームで使うハンドガン」というものだった。それなら大仰なボーマーサイトよりもウイルソンタイプの固定サイトのほうが適しているのは確かだ。