手のひらにぴったり吸い付くような銃を持たされて、たった5m先とはいえ指先ほどの大きさしかない小さな的に向けて撃とうとしたときに、誰もが真っ先に思うことは、「銃が止まらない」ということじゃないだろうか。台の上とかに乗せればピタリと止まっても、立って、さらに片手だけで銃を支えてる状態ではふらふらしてとても止まらない。なんとかこれを押さえ込んで止めないと! そして止まったら、すかさずトリガーを引いて撃たないと! そういう感覚になってしまうのも仕方ないかもしれない。
しかし、それは間違い、少なくても良い成績を出そうとするのならば遠回りなやり方だ。
銃は、止まらないものと考えるほうが良い。どんなに上級者であっても照準がピッタリと止まって微動だにしない、なんて状態にはならない。実際、世の中にはレーザーなどを使った射撃解析装置というものがある。銃に取り付けて(あるいは銃そのものがシステムになっていて)、照準を始めてからトリガーを引いて、さらにその後のコンマ数秒間、照準がターゲットのどの部分に合っていたのかをデータとして記録することが出来る機械なのだけれど、そのデータを見ればわかるが上級者であっても照準はある程度の範囲で常に動いているものだ。範囲はもちろん初心者と比べればかなり小さいものではあるが。
銃は止まらない。止まらない物を止めようとすれば、そこには当然ムリが生じる。良いことはなにもない。
「銃を止めよう」という気持ちはまずアタマの外に追い出そう。じゃあ、何をしようとすれば良いのか? ピストル射撃で重要になるのは、「トリガー」と「照準」の2つだ。この2つにひたすら集中する。そして満足のいくトリガーの引き方を、正しい照準をしている状態で行うこと、それが重要だ。
銃が止まらないのに正しい照準なんて…と思われるかもしれない。が、止まらなくて良いのだ。前後のサイトを正しい形に揃えておいて、トリガーをキレイに引ければ、そのときに照準が合っていた場所が少々10点のど真ん中から外れた場所にあっても、弾はだいたい中心近くに飛んでいく。「銃を止めよう止めよう」と「頑張って」しまい、ヘンなトリガーの引き方をして大きく外してしまうより100倍マシだ。
それに、正しい照準と正しいトリガーが出来るようになれば、あとは自然と少しずつ姿勢は安定して銃の動きも小さくなっていく。それは頑張らなくても勝手に小さくなっていく。「小さくしよう」としなくても構わない。けれど照準とトリガーについては、どんなに射撃の経験を積んでも「頑張る」ことをしないとスグに意識が外れていい加減なものになってしまう。だから重要なのだ。