韓国の人に学ぶピストル射撃の基礎 その4「照準」【海外の反応】

ASC(ASIAN SHOOTING CONFEDERATION)提供の「基礎から学ぶピストル射撃」動画について、私のショボいヒアリング能力で聞き取れた範囲で内容の簡単な紹介と、一般的な「ピストル教本」とのちょっとした違いについて解説していきたいと思います。

第4回は「照準」です。サイトと標的を目で見た時に、どういうふうに重ねあわせるのかといった話です。姿勢だ呼吸だグリップの握り方だと、「銃を撃つ」こととはあんまり関係なさそうな話を延々と続けてきましたが、4回めになってようやく射撃っぽい話になってきました。長い道のりでした。

スコープなどの光学照準器を使わないオープンサイトでの照準では、遠くにあるターゲットと近くにあるサイトの2つを同時に見る必要があります。人間の眼は、遠くにあるものと近くにあるものの両方に同時にピントを合わせることはできません。ターゲットにピントを合わせればサイトはぼやけますし、サイトにピントをあわせればターゲットはぼやけます。これは物理的にそうなるものなのだからどうしようもありません。

ただ、ピントが合っているように見える範囲を広げることはできます。絞りをキツくする、つまり小さい穴を通して見るようにすることで、近くから遠くまである程度の範囲でクッキリと見えるようになります。被写界深度とか焦点深度って呼びます。それを射撃用品に応用したのがアイリスシャッターです。メガネのレンズに取り付ける可変絞りを手元で調整することで、サイトにピントを合わせたままでもターゲットがある程度はっきりと見えるようにすることができます。
 

射撃メガネの右目側についている黒い円盤状のパーツがアイリスシャッターです。普通はレンズの外側に付けるものらしいんですが、私はなんとなく内側(目に近い側)に付けるのが習慣になっています。写真の左が絞りを開放したところ、右が絞ったところです。

アイリスシャッターは、少なくても私の感覚だとピストル射撃においては必需品です。これがないと最初の数発ならともかく、何十発も続けて撃つなんてとても無理です(眼がかすんでしまって)。Youtubeで公開されている国際試合の様子を見ても、多くの国のトップシューターがアイリスシャッターを着用しているのを見ることができます。

「多くの国」と書きましたが、例外があります。中国と韓国の選手は、アイリスシャッターを使いません。それどころか、射撃メガネすら使いません。裸眼か、かけていても普通のメガネです。専用メガネを使わないから成績が悪いのかっていうと全くそんなことはなく、むしろ逆で物凄く成績は良いです。中韓は射撃の世界ではれっきとした「強豪国」の一角なのです。紹介している動画にでてくるJin Jong-ohなんかは、10mピストルと50mピストルの両方で世界記録保持者だったりします。

ターゲットがぼやけて見えるより、クッキリ見えるほうが良いに決まってます。なんで中韓の選手は射撃メガネやアイリスシャッターを使わないのでしょうか? 今回の「照準」、そして次回の「トリガーの引き方」の動画を見ると、その理由が少し見えてくるような気がします。

Part.5 照準(Aiming)

※以下、画像は全て上記動画内より引用

照準は、「サイト・アライメント」と「サイト・ピクチャー」によって構成されている
サイト・アライメントとは、リアサイトと、リアサイトを通して見たフロントサイトの組み合わせのことである
サイト・アライメントは、フロントサイトの左右にあるリアサイトとの隙間が均等に揃っていること、そしてフロント&リアサイトの上辺が水平に揃っていることの2つの要素によって成り立つ
サイト・アライメントは、ピストル射撃において最も重要な技術である
サイト・アライメントは、真っ白なターゲット(白的)を狙うことによってトレーニングする
サイト・ピクチャーは、完全に中心に揃っていることで始めて満足される
まずサイト・アライメントを作り、照準エリアにおいてバランスが保たれるようにする
ターゲットの黒丸はぼやけて、サイト・アライメントはクッキリと見えるよう、最大限に集中しなさい
これが、正しいサイト・ピクチャーである
 

動画内で「これぞ、目指すべき正しいサイト・ピクチャーである」と示されている映像。「サイト・アライメント」、つまり前後サイトの位置関係と、「サイト・ピクチャー」前後サイトに加えてターゲットを含めた位置関係を区別しているところがミソですね。

「照準エリア」とは、標的の5~7点の範囲のことである
照準がこのエリアにあるとき、サイト・アライメントとターゲットはちょうど分かれて見えるようになり、より精密な照準ができる
眼は、1つまたは3つのオブジェクトに対してフォーカスをシャープに合わせることが可能である
これは、「デプス・オブ・フォーカス」と呼ばれる
 

デプス・オブ・フォーカス、つまり焦点深度(被写界深度)について図示している部分。ここまで書いておいて、アイリスシャッターなどを使って絞りを通して見ることによってピントが合う範囲を広げることができる、という点については全く言及がありません。サイトにピントを合わせることでターゲットがぼやけるのは当然のこととして、その上でどう撃つかって考え方をしているように見えます。

身体が正しいバランスを取ることと、銃が照準エリアに入るのを眼によって確認することは同時進行で行われる
射手が標的を見る(標的にフォーカスを合わせる)のは、正しいスタンスにより銃が正しく標的方向を向いていることを確認する場合に行われるが、照準時にはフォーカスはサイト・アライメントに固定されなければならない

特別なシューティンググラスは、照準に使わない方の眼をカバーする目隠し板を備えている
左右の遮光板は、眩しい照明や、気を散らす周囲の動きを遮る働きがある
 

「特別なシューティンググラス」として提示されたのが、なんか普通の色付きサングラスにクリップ式の目隠し板を取り付けたものだったりします。一般に日本(や世界)で射撃専用のメガネとして販売されている、レンズの位置や角度を調節可能なものは全く使われていないようです。

ここで出てくる、「照準エリア(Aiming Area)」って言葉が、後々とても重要な意味合いを持ってきます。「照準エリア」というのは、動画では「標的の5~7点の範囲」と言っていますが、そのままだとなんのことやらって感じだと思います。図示するとこんな感じです。
 

エアピストルのターゲットは、7点までが黒色、6点から外側が白色になっています。「5~7点の範囲にある照準エリア」というのは、ちょうど黒と白の境目あたり(図でオレンジでマークを付けたあたり)のことを言っているわけです。

実際には、10m先にあるターゲットの、こんな細い線なんか見えません。というかそもそも電子標的の場合は点数を分ける線そのものがターゲットには書かれていません(黒い穴が、白い四角板の中心に空いているだけです)。「標的の5~7点の範囲」というのは、「黒丸の真下、少し隙間があくかあかないかってあたり」って考え方でいいんじゃないかと思います。


これまで書いた射撃入門記事や、受講した射撃講習会・メンタルトレーニング講座で得た知識などをまとめて、「ピストル射撃入門」としてKDP(Amazonの電子書籍)として販売しています。

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池上ヒロシ

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