韓国の人に学ぶピストル射撃の基礎その1「姿勢」【海外の反応】

先日、Twitterにリンクを貼ったところ意外に反響が大きかった、ASC(ASIAN SHOOTING CONFEDERATION)提供の「基礎から学ぶピストル射撃」動画について、私のショボいヒアリング能力で聞き取れた範囲で内容の簡単な紹介と、一般的な「ピストル教本」とのちょっとした違いについて解説していきたいと思います。

動画は、Part.1~7まで全部で7つ公開されています。Part.1はイントロダクションなので、実質的に教本的な内容があるのはPart.2からの6つになります。

まずはPart.2の「姿勢」からはじめましょう。

Part.2 姿勢(Position)

※画像は全て動画内より引用

「外的姿勢」と「内的姿勢」がある
まず「外的姿勢」を決めるための準備としてスタンスを決める
身体に無理に力を入れないリラックスしたスタンス
スタンスは基本的に一度決めたら変えてはいけない
「全てのショットで同じスタンス」を取ることは非常に重要
 

身体のどこかに力が入った状態で射撃に入らないように、まず銃を持たずにスタンスだけ決めて、力の入りそうなところを少し動かしたり揺すったりして緊張を解き、自然な状態で銃を持つ手が標的方向を向くように調整する。射撃開始前のルーチンとして、こういった手順を取る人はトップシューターを見渡してもかなり多い。

足幅は肩幅と同じくらい、ボディ(胸)は僅かにターゲット方向に向く形
肩や両足は、照準線に対して0~15度の範囲
身体の重量は、左右の足・つま先とかかとにそれぞれ均等にかかるようにする
 

ところでいきなり本題から外れてしまいますが、動画内でJin Jong-ohが履いているこのシューズ、射撃用品としては全く見たことがない、かなり変わった形をしています。なんなんだろうコレと思い、特徴的な三本線から「これはあのメーカーだろう」と当たりを付けて探してみたところ……
案の定、adidasの製品でした。しかし射撃用シューズではなく、なんとウエイトリフティング用のシューズとのこと(画像はadidas公式サイトのキャプチャー)。日本でもAmazonで並行輸入品が販売されています。お値段は業者によって前後しますが約4~9万円と、けっこうなものです。

肩・腕・ピストルは一直線に並ぶようにする。そして照準する目がそのラインの延長上に来るようにする
銃を構えていない方の手は、パンツやジャケットのポケットに入れるか、ベルトに乗せる
これは、使っていない方の腕を安定させることで身体のバランスを取りやすくするための措置である
バランスを取ることは、非常に重要である

頭部は、左右の目が水平になるように保つ
極端に頭を後傾させたり前傾させたりすることは、目に緊張を強いることになる(ので良くない)
 

ここで唐突にモデルが変わります。Jin Jong-oh選手の構え方は、頭がかなり右に傾いた「基本からは外れた」ものなので、お手本としてはちょっとふさわしくないからだと思われます。トップシューターの中には、明らかに教本的には良くない撃ち方をしている人が時々いますが、これもその一つの例ですね。教本は参考になりますが、「教本=絶対」と盲信しちゃうのもあまり良くないってことです。

リラックスして、身体のどこも緊張していない姿勢を保つ。
そして毎回同じ姿勢・身体の脱力を実現するようにする
銃の重量に対応するため、上半身を僅かに後傾させる
銃を持つ腕の肘は真っ直ぐにする――別の言い方をするならば、「肘は、ロックされていなければならない」
上半身はリラックスし、真っ直ぐに保つ
 

ちょっとここ、わかりづらいですが、「上半身は後傾させるが、湾曲はさせない(のけぞるのではない)」って意味じゃないかと思います。

自然に構えたときにターゲットに向かって真っ直ぐ銃が向いているのかどうかを確かめるためには、目を閉じた状態で銃を左右に軽く振ってから、再び目を開けてみる。そして「銃がターゲットに向いている」と思ったときに目を開ける
その時に銃がターゲットを向いていない場合は、足の位置を動かしてポジションを調整することによってターゲットの方を向くようにする
 

目を閉じて銃を軽く左右に振ってから、「今、照準がぴったり合ってる」と思ったところで目を開けて、ずれているようならスタンスを変更する……これは自然狙点を見つけ出すためのお約束です。ピストル射撃関連の教本には必ずといっていいほど出てくる基本のやり方です。真似して損はないと思います。

全身が写る鏡を使用して、自らの射撃姿勢を比較し、より安定した姿勢を探すことができる
その状態でドライファイアをすることによって、撃発時に銃口が動いていないかどうかチェックできる
 

でっかい鏡を使っての姿勢のチェック。これは射撃に限った話じゃなく、「姿勢」が重要となるスポーツだったらほぼ例外なしに、最も重要な練習の一貫として位置付けられているんじゃないかと思います。体育館みたいなところだと、壁に大きな鏡が最初から備え付けになっているところも多いんじゃないでしょうか。

6回ある講義のうち1回分が丸まる「姿勢」だけで終わってしまい、弾を撃つどころか引き金を引くことすらさせてもらえません。そのくらい、ちゃんとした姿勢から撃つってことは大事なことなのです。言い換えると、ちゃんとしてない姿勢から無理して撃つクセが身についちゃうと治すのに手間がかかる、つまり「上達への遠回りな道を敢えて選ぶ」ことになっちゃうわけです。

けれど、例えば「ピストル射撃体験会」みたいなのを開いたときに来て頂けたお客さんに対して同じことをしたら、きっと怒って帰っちゃって第二回目以降には来てくれなくなっちゃうんじゃないかって心配になります。楽しさと正しさってのは両立しないことが多い、これは何においても同じなのかもしれません。


これまで書いた射撃入門記事や、受講した射撃講習会・メンタルトレーニング講座で得た知識などをまとめて、「ピストル射撃入門」としてKDP(Amazonの電子書籍)として販売しています。

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池上ヒロシ

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