APSカップも本大会が終わって、みなさん少し気が抜けたりしてるところかもしれません。もしかしたらその逆で、「来年こそは!」と闘志を燃やして練習に励んでいる方もいらっしゃるかもしれませんが……。実銃の場合はそこそこ重要な大会が年に数回は行われるので、APSカップみたいに「本大会が終わったら次の目標は1年先」なんてことにはならないのですが、それでも大きな目標としていた大会が終わってしばらくの間は、気が抜けて射撃場から足が遠のいちゃったりしがちなものです。
そうでなくても、仕事が忙しくなるとか生活環境の変化などで、どうしても射撃場に行きづらくなる時期が生じてしまうということはあるでしょう。久々に撃ったのに前よりも格段に上手くなってるなんてことはありえませんが、せめて「ヘタになってない」状態でブランク明けを迎えたいものです。そのためには、短い時間でもできる自宅練習がキモになります。
海外の射撃専門掲示板でも、「しばらく射撃場に行けなくなる。けれどヘタになりたくない。良い自宅練習の方法を教えて下さい」というスレッドが立ち上げられていまして、役に立つアドバイス、役に立つんだか立たないんだかわからないアドバイスと玉石混交でいろんなコメントが書き込まれていました。今回はいつもと違い、役に立ちそうなコメントだけ抽出するのではなく、ジョーク交じり・半分ふざけたような回答も交えて翻訳して紹介してみたいと思います。
引用元:No access to shooting range for next 6 months. What to do? (TargetTalk)
→ワークアウト(※フィジカルトレーニングのこと)。上半身と体幹、それに加えて有酸素運動。筋力とコンディショニング。
6ヶ月後には、きっと見違える身体を手に入れていることでしょう。(国籍不明)
→>2m先に1cmの黒丸
そうですね、空撃ち練習ってのは悪くないです。ワードかなにか使って直径12mmの黒丸を印刷して使うといいでしょう(2mの距離から見るとちょうどエアピストルのターゲットと同じ大きさになります)。(アメリカ)
→壁に縮小ターゲットを貼って練習する場合、高さにも注意しましょう。シューティングレンジでの「見た目の高さ」と合わせるために、レンジでターゲットを狙った時のフロントサイトの(床からの)高さを計測しておくことを忘れないで下さい。(リスボン)
→ドライファイア。ビールを飲む。(スコッツデールアリゾナ州)
→ドライファイア。スポーツ心理学についての本を読む。ラニー・バッシャムの「勝つことの秘訣」を読むか、テープを買って聞くかするといいでしょう。
→>ドライファイア。ビールを飲む。
以前、私も彼から同じこのアドバイスを受け、良い結果を出しました。
ただ、このことだけには気をつけて下さい――酒飲むと確実に今まで築きあげたシューティング・スキルの多くを一時的に失います。けどそんなの知ったこっちゃねえ!(サンタフェ・アルゼンチン)
→>酒飲むと確実に今まで築きあげたシューティング・スキルの多くを一時的に失います
いやいやいや、違う、そうじゃなくて、まず最初にドライファイアして、それからビールを飲むのです!(リスボン・ポルトガル)
→>まず最初にドライファイア
OK。まずドライファイア。そしてビールを飲む。そしてドライファイア――おや?(サンタフェ・アルゼンチン)
→>おや?
その場合、「2回目のドライファイア」から得るものは少なくなってしまうかもしれませんが、とにかくそんなの知ったこっちゃねえ!(リスボン・ポルトガル)
→ポルトガルとアルゼンチンと、そして私から素晴らしいアドバイスの数々ですね!(スコッツデールアリゾナ州)
→ロシア人は言います。「ウォッカのないビールは金の無駄」と。(アメリカ)
→(ジョークも混じってますが)多くの人が言及しているとおり、ドライファイア(空撃ち練習)は技術の維持にはもってこいです。このサイトにもドライファイア・トレーニングについて書かれたコラムがありますので読んでみてください。(ニュージーランド)
Dry Fire Training
ドライファイア(空撃ち練習)の重要さが熱く語られていますね。
先日のAPSカップ本大会で展示されていた「これまでに作られた、様々なAPSシリーズ」の中に、空撃ち練習専用のAPS-3が一つ入っていたのに気づいた方もいらっしゃると思います。シリンダーの下にあるはずのチャージングレバーがなく、シリンダーに見えるものはタダの筒になっているものです。銃の上部にあるコッキングレバーを操作し、構えて引き金を引くことでシアが切れて「カチン」と音を立ててストライカーが前進する、ただそれだけのものです。
小中学生や高校生の中から、「ピストル射撃の才能を持ってそうな有望な子」を選び出して特別な練習ができる環境を与える「MPA=メダルポテンシャルアスリート」という制度が数年前に始まりましたが、そのMPAに選ばれた子の練習用として作られたものなんだとか。シアは特別仕様のステンレス製のものが使われていて、その値段だけでも普通のAPS-3が余裕で定価で買えてしまうくらいのお金がかかっている、なんて話を京都ライフルの方から伝え聞いたりしました(ちょっと情報元がアヤシゲなので信ぴょう性には欠けるのですけれど)。
銃規制が厳しい日本でも射撃スポーツを振興するためにできることは、けっこうたくさんあります。仕事が忙しかったり、部屋が狭かったりして十分に満足できる練習環境を確保できなくても、工夫次第でそれなりに有意義な練習方法はあります。いろいろと制限があっても、創意工夫で有効な練習方法を見つけたり作り出したりして、結果につなげていく、それもまた射撃スポーツの面白さの一つなのかもしれませんね。