第26回 APSカップ(2016)

朝、競技開始前のレンジを見つめながら集中力を高めるトップシューター二人の姿。

7月16日~17日の2日間、東京・浅草にある産業貿易センター台東館4Fにて、第26回となるAPSカップが開催されました。1992年に第1回が開催された頃には、「1発ずつポチポチと撃つような、こんな地味なシューティングマッチがエアガンの世界で流行るとは思えない」なんてことを言われることもありましたが、この四半世紀近くの積み重ねで、すっかり「日本で手軽に行える競技射撃」の1ジャンルとして確立した感があります。

特に最近は、マック堺さんがYoutubeでAPSカップを紹介する動画を多数UPしてくれているおかげで、銃雑誌とか全く読まない、エアガンの使いみちといったらサバゲしか知らなかったような人たちにも、エアガンを使って本気でスポーツ射撃に取り組んでる人がこんなにたくさんいるんだってことが知られるようになってきたようです。
 

オープンサイト部門・フリーサイト部門の両方が終わった後、それぞれの優勝者に加えて公式記録会での最高得点記録保持者、合計4人で行われるグランドチャンピオン戦。大勢のギャラリーや撮影カメラを背負ってのプレート競技はプレッシャーが凄く、普段はほぼ満射当然の猛者たちも3枚・4枚と外していく。

いろいろな事情があって、APSカップで使用できるエアガンは「公式認定銃」とされる一部の製品に制限されています。もっとも、たとえそんな制限がなくても、APSルールで勝敗を競う範囲においては認定銃以外を使っても全く太刀打ちできないレベルに達してはいるのですが。その公式認定銃のうち最も使用者が多いAPS-3については、メーカーにより生産され出荷され、問屋ないしは小売店に入荷するないなや、「右から左へ」に近い勢いで売れていくそうです。定価はほぼ3万円、実売価格でも2万円台後半を下回ることはめったにない、エアガンとしてはかなり高額な部類に入る製品なのにもかかわらずです。

「絶対、こんなの盛り上がるはずがない」なんて言われていたAPSカップが、ここにきてじわじわとブームになりかかっている、そういう空気を感じます。

試射レンジの様子。大勢の参加人数がいても、1日で全ての競技を終えるために、APSカップでは試射に使える時間は大幅に制限されてしまっている。3つの競技が始まる前に数分間の試射時間があるだけ。一つ一つの競技直前は「銃を構える」ことが一度だけ行えるが、弾を撃つのはおろかトリガーに指をかけることすら許されていない。

APSカップで使用するエアガンはいわゆる「18禁エアガン」に分類されますが、十分な安全対策が行われており、認定された指導員が常駐している公式大会の会場においては、例外として18歳未満の子供でもエアガンを手にしたり撃ったりすることが認められています。

そのため、会場には小さいお子さんの姿を何人か見かけます。基本的には親御さんがAPSをやっていて、自分の息子や娘を連れて来ているという形なのですが、中には親よりもハイスコアを出してしまうお子さんなんかもいたりするのが、年齢・体力・道具にかけたお金がスコアに直結しない射撃競技の面白さの一つでもあります。
 

ブルズアイレンジにて、娘の射撃を撮影するお父さんと、「BB弾の補充をしろ」と必死になって身振り手振りで伝えようとしているお母さん。この両親、実は2人とも実銃射撃の世界では国体出場および入賞経験ありの一流シューターである。実銃射撃では競技中は「声を出してのコーチングは厳禁」というルールがあり、それが骨の髄まで染みこんでるのか、こういう光景となった次第。

基本的には精密射撃系に分類されるAPSカップですが、制限時間は極端に短く、ブルズアイ競技・シルエット競技では「5発2分」、プレート競技に至っては「1発3秒を15回」という、精密射撃というよりはスピード系シューティングに近いルールになっています。

特に、「銃を下ろした状態から、ブザーが鳴って3秒以内にターゲットを撃つ」という、他とは大きく違った撃ち方を要求されるプレート競技では、一般的な精密射撃での撃ち方とは大きく異なる射撃スタイルを要求されます。どちらかというと近代五種におけるシューティングに近いものがあるかもしれません。
 

「正確さは二の次にして、素早く構えて3秒以内に撃つ」のが最重要課題となるプレート競技。普段の撃ち方と同じ感覚でいると、確実にタイムオーバーをしてしまう。

「普段と違う撃ち方」の最たるものとしては、シルエット競技もなかなかのものです。スタンディングでは銃を両手で持つことが許されているため多くの参加者は両手撃ちをしますが、「いつもどおり」に片手撃ちしてもルール違反にはなりません。しかしプローンではそういうわけにはいかず、全く独自の構え方・撃ち方を編み出す必要があります。「いっそ、伏せずに立ったまま撃ってもOKってことにしてほしい」とどれだけ思ったことでしょうか。
 

撃つ時の姿勢に最も自由度が高いシルエット競技。トップシューターの多くは最も遠い「10m」のターゲットから撃ち始め、ほぼ確実にそれを撃ち落とす。

私自身は、今回のAPSカップはスコアが振るわず残念な結果になりましたが、嬉しいこともありました。「あきゅらぼ」で主催している「ひたすらブルズアイ」や「ひたすらシルエット」にいつも参加して頂いている方が、それぞれ「ブルズアイ」と「シルエット」で満射を達成したことです。

ブルズアイ満射のオクさん。シルエット満射のヤマナカ社長。

おめでとうございます。

もちろんご本人のたゆまぬ努力、とくにヤマナカ社長の日々の猛練習っぷりはtwitterやyoutubeのチャンネルをご覧の方にはよく知られていると思います。それでもそれに加えて、「ひたすらシリーズ」の存在も、ちょっとだけ助けになったんじゃないかと思っても、多分許されるんじゃないかと思います。

「ひたすらシルエット」&「ひたすらブルズアイ」、次回は8月最初の日曜日である7日に赤羽フロンティア・本店ビル2Fシューティングレンジで開催です。シルエット満射男であるヤマナカ社長のありがたいお言葉を聞きたい方は是非!

池上ヒロシ

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