このカスタムガンの名前は「ブリザード」。東京マルイ製のハイキャパ4.3をベースに、タニオ・コバのタクティカルグリップとフリーダムアートのアキュコンプに換装。タニオ・コバ製の高精度バレルやフリーダムアート製のカスタムパーツを使って、主にインドアフィールドでのサバイバルゲームにおいてその真価を発揮するコンバットハンドガンとして作られたものになっている。
そこでタニオ・コバが発売したのが、マルイのハイキャパ互換のタクティカルグリップだ。マガジンハウジングとしての機能はそのままに、断面をノーマルの四角に近い形から円柱に近い形へと変更。チェッカリングのデザインなども大幅に作り直し、握り心地はノーマルのグリップとは雲泥の差となっている。
マガジンキャッチ(マガジンを抜くときに押すボタン)は、背が低くてエッジが効いたデザインのカスタム品に交換されている。これはフリーダムアート製のショートマグキャッチだ。トリガーは指に当たる面が一直線となったストレートトリガー(フリーダムアート製)。またこれは実射性能には一切関係ないがドレスアップパーツとして、グリップスクリュウが六芒星が刻印されたシルバーのものに交換されている(ドレスアップグリップスクリュウ:フリーダムアート製)。
グリップが交換されていることと同じくらいに、この「ブリザード」の最も大きなカスタムポイントとなっているのがアキュコンプだ。ノーマルの金属製レールをさらに前方まで延長し、その先端にコンペンセイターの形をしたパーツをネジ留めして固定する。同時にバレルもノーマルよりも若干長いものに交換して、その先端をコンペンセイターで支えることによって、「ブローバックガスガンなのに、バレルは完全に固定されている」という状態を作り出すことを目的としたものだ。ガスブローバックのカスタムの中でも、かなりアキュラシー(命中精度)向上に傾倒したカスタムと言えるだろう。
レールの色はシルバーでコンペンセイターの色はブラックになっている上に、コンペンセイターの断面形状がハイキャパのスライド形状と全く同じになるように仕上げられているため、スライドが閉じている(前進している)状態ではコンペンセイターが付いているということは一見すると分からないくらいの違和感の無さを実現している。
フロントサイトはスライド側に取り付けられている。照準精度をアップさせることを目的として、フロントサイトをコンペンセイター側に取り付けることでサイトレディウス(前後サイトの距離)を伸ばしたバージョンもあるが、それだと「リアサイトはスライド、フロントサイトはコンペンセイター」という形になってしまい、前後のサイトが別々のパーツに取り付けられてしまう形になる。パーツの噛み合い精度が十分に高ければ問題ないが、ガタが少しでもあると前後サイトの位置関係が撃つたびに変わってしまい、かえって精度を低下させてしまうことにもなりかねない。スライドにもともと付けられていたサイトの取り付け溝をどう処理するかという問題も出てくる。フロントサイトをノーマルと同様にスライド側に固定することには、それなりにメリットが多いということだ。
リアサイトはノーマルのゴツゴツしたデザインとはかなり印象を異にする、曲線主体の形状となっている。一般に「ウイルソンタイプ」とか呼ばれている形のサイトだ。このリアサイトもフリーダムアート製。パーツ単体で購入しただけではホワイトドットはくぼみが付いているだけで色が入っていないが、コンプリートカスタムである「ブリザード」ではホワイト入れもキッチリと行われている。
精度向上カスタムの「必殺技」であるアキュコンプが組み込まれていること、精密射撃に向いたストレートトリガーが付いていることなどからも、このカスタムガンは「インドアフィールドでのサバイバルゲーム用」という名目で作られてはいるが、そのなかでもかなり「狙ったところに確実に弾を当てる」ということを強く意識して作られているものだということが分かる。
ここらへんのカスタムは、メリットも大きいがリスクもまた大きいカスタムだ。特にトリガーのカスタムは確実に銃の寿命を縮める。カスタムして組み立てた直後は、キレが良く軽いトリガーに感動しても、それで撃ちこんでいくうちにある日突然、フルオートになって止まらなくなってしまったり…というトラブルに見舞われることになる。「精密射撃用」ではなく「ゲーム用」というコンセプトで作られたカスタムガンに、そういったリスクの高いカスタムは不要ということなのだろう。
「ブリザード」に組み込まれているバレルは、タニオ・コバ製のツイストバレル。ノーマルのハイキャパ4.3よりも若干長く、ハイキャパ5.1と同等のサイズになっている。バレル延長効果の他、バレル内壁に刻まれた溝によりBB弾が安定して加速し、余計な回転がつかないという利点がある。
ツイストバレルの溝はBB弾に回転を与えるためのものではなく、与えないためのものだ。バルブから吹き出してくる高圧のガスに押されてBB弾はバレル内で加速するが、その時にバレル内壁に刻まれた溝からBB弾を追い越すような形となって高圧ガスが前方に抜けて、BB弾を単に後ろから押すだけでなく周囲全体のガスの流れで加速する形となる。
エアガンによって、ツイストバレルにより命中精度が向上する場合、しない場合があることは以前実験によって確認したことがある。バレル長によるものなのか、それとももっと別の理由(エアの吹出しタイミングや強さなど)によるものなのかは不明だ。ハイキャパにおいては自分の経験では6インチバレル程度の長さになってくるとかなり顕著に良い効果が出ることが確認できている。4.3のバレルを5.1に交換し、さらにツイストバレルとしたことによる命中精度向上効果は十分に期待できると言えるだろう。
前編はここまで。後編では、分解および実射しての性能チェックをお送りする。実は、分解してみたら気になった場所があったので、軽く手を入れてみた。このカスタムガンに限らずノーマルのハイキャパ、ハイキャパ以外のガスブローバック全般にも使える簡単な精度UPカスタムだ。