射撃競技中に音楽を流すのってさー【海外の反応】

「アメリカの射撃大会に行ってきたんだって?」と、先日久々に会った友人にいきなり言われて面食らいました。なにをどう勘違いしたのかとしばらく会話を重ねたところ、Twitterに書いた「NT選考会に参加しました」というフレーズを、「NY射撃会に参加しました」と空目して、「そーかニューヨークまで射撃大会に参加しに行ったのかすげーなー」という豪快な勘違いをしていたということが判明しました。まあ、一般の方にはNTといってもなかなか馴染みがないですから、唐突に「NT選考会」とか言われても別のものだと思われてしまうのも仕方ないかも。

※仮に読み間違いされなかったとしても「ガンダムのアレ?」って思われるのがオチですし。

NT選考会の1日め、準備時間の様子。大音響で流れるハードロックに、百戦錬磨の参加者の皆さんも戸惑いを隠せない様子。

ここで言うNTというのは「ナショナルチーム」のこと、つまりは国の強化選手を選ぶ大会ってことです。NT選考会を含むいくつかの大会で決まるランキングで上位5名に入ると晴れてNT入りとなり、強化費が貰えるとか、強化選手しか使えない特別な施設が使えるようになるとか、トップレベルの合宿に参加できるとか、海外遠征に行けるようになるとかいろいろと特典があるわけです。

私なんかがそんなのの選考会に参加するのは恐れ多いことだと思ってたんですが、「そんなことないよー」とのピストル仲間の声に励まされて初参加してみたのが先日の話。結果はトップ5どころか全然下の方だったわけですが、なかなか有意義な体験ができました。

特に驚いたのが、Twitterでも再三書いてた「準備時間から競技時間までエンドレスで音楽が流れっぱなし」というヤツです。ISSF(世界の射撃競技の総元締め)が推奨している大会運営方法ということです。ファイナルでハデな音楽が流れてDJめいた解説が入るのは知ってましたが、最初っから最後まで流しっぱなしにするのまで推奨されているとは知りませんでした……。

選曲が妙に古く、60年代後半~70年代半ばにかけてのハードロックばっかり流れるという、現在40代~50代くらいの人たちが青春時代を過ごしていた頃に「どストライク」な感じ。これって世代間ギャップというか射撃への集中の妨げ具合でハンデが生じたりするだろうと文句を付けたくなるレベルのマニアックな選曲だったこともあり、Twitterではそのことばっかり書いてましたが、そもそもの問題として「射撃競技中に音楽流すってのは、どうなの?」ってのがあります。

世界各国から射撃競技をしている人が書き込んだり読んだりしている射撃BBS「TargetTalk」でも、競技中に流す音楽についてのスレッドが立ち上げられて、みなさんそりゃもう熱く語ってましたので、簡単に抜粋して意訳してみました。

ISSFミュージック

引用元:TargetTalk “ISSF Music”


  • Youtubeで10mエアピストルの大会動画を見ているのですが、なんですかあの音楽! 酷いですね!
    あんなのが流れてると、もう動画を見て楽しむどころの騒ぎじゃありません。ピストル射撃はもう十分「ハード」じゃないですか。音楽なんか無くても。
    ISSFにメールしましたよ――「エアピストル射撃で競技中に音楽を流すというのは、率直に言って、不合理です。冗談じゃありません。動画に付けられてるコメントを見て下さい。あなた方が行うべきことはただひとつ、それをやめることです」ってね。
    皆さんはどう思いますか?(アンガス・スコットランド)

    →完全に同意です。
    まだ「Who Stole the Kishika」を流すほうがマシです。(スコッツデール・アリゾナ州)

    Who Stole the Kishika(訳者注:多分、何かジョークあるいは皮肉で書いているんだとは思うんだけれど笑いどころが分かりません)

     
    →>Who Stole the Kishika
    (笑)「ハバ・ナギラ」を流して欲しいな。そうすりゃ俺なんか100点続出間違いなしだ。(国籍不明)
     

    ハバ・ナギラ(訳者注:ユダヤ教の結婚式で流れる曲ってことだけれど……)

     
    →全く完全に同意見です。
    あの音楽には憎しみすら感じます。非常に迷惑です。
    Youtubeを見る時は耳栓が欠かせません。(国籍不明)
     
    >耳栓が欠かせません
    あのー、ボリュームを絞れば良いだけなんじゃw(国籍不明)
     
    >ボリュームを絞れば
    そうすると解説者の言ってることまで聞こえなくなっちゃうじゃないですか。(国籍不明)

 

  • 競技中の音楽は、子どもたちが騒がしくはしゃぎまくるような応援に繋がるんじゃないかと危惧しています。私にとってそれは恐怖であり、決して歓迎できない、低能な連中によってもたらされる混乱でしかありません。私が思うに、BGMの義務付けなんていう馬鹿げたルールは、夢見がちな目をした「なんとかフィルム」とか「なんとかクラフト」とか呼ばれてる連中に法外な報酬を払って考えだしてもらったアイデアなんでしょう。
    このスレッドが十分に伸びたら、誰かISSFチャンネルに教えてあげて下さい。(メイン州オウルズヘッド)

 

  • 音楽は迷惑だって意見には同意します。競技中は、解説者の話が聞こえるようにしておくべきです。優秀な解説者による素早いリアクションは、全てを変えます。上手く噛み合って、実に良いファイナル中継となった例があります。

    2016 European Championship 10m, Gyor, Hungary – Air Pistol Men Final(訳者注:音楽は流れてないけれど、これはこれでうるせーw)

    このビデオには音楽はありません。良い解説者のみがいます。もし音楽が流れていたら全てが台無しになっていたことでしょう。(国籍不明)

  • いやもうマジ勘弁。
    音楽ねー……。
    ラップなんか聞いてるとテンション上がるのは確かだけれど、そんなのファイナルで流すわけにもいかんでしょう。けれど、もし観客たちが(サッカーの試合みたいに)エアホーンや鳴り物を使いだしたらどうします? スローペースの拍手くらいだったらまだ我慢できますけれどね……。(イギリス・シュロップシャー州)

 

  • この流れで発言するのは勇気がいるのですが……。
    全ての国際的なトップシューター達は、ドイツプレミアリーグのエアライフル・エアピストルマッチに出場することを熱望していると思います。それらの試合は、ワールドカップ・ファイナルなんかよりも遥かに騒がしいものです。多くのシューターはそれらのサウンドは「励みになる」「より集中できる」と言っています。
    ファイナル中に音楽を流す、合理的な理由なんてものは存在しません――メディア(観客ではなく)がそれを要求しているということを除けば。しかし、IOCの推奨に従う限り、このスポーツが「イベント」となるために、それ(ファイナル中の音楽)は導入されました。もしファイナリストが本当にそれが嫌なら、彼らは音楽の停止について正式にISSFと交渉を行うべきです。
    ファイナルに出場する機会などない我々のような人間の言うことは、それがどれだけ有意義な意見であっても、誰も聞いてくれません。私たちはかつてのような、「静かで、観客のいない試合」を取り戻すことができます――射撃が五輪競技から外れた後に。そのことは、国によるスポンサードを大幅に減らすことに繋がるでしょう。(ドイツ・ウルム&アルンスベルク)

    →もし五輪から射撃競技が排除されたら、失うのは国からの補助金だけで済むとは思えません。多くの国が、草の根レベルでの射撃競技に至るまで存続の危機に陥るんじゃないでしょうか。射撃銃を作るメーカーの存続すら怪しくなります。(イギリス・ライスリップ)

    →私は、上のイギリスの人にのみ、同意します。狂った男がアントワープで起こした乱射事件で3人が死傷したことをきっかけに、私達の国の銃規制法は大きく変更されました。もし射撃がオリンピックスポーツでなかったならば、ベルギーの銃規制はイギリスよりも厳しいものになっていたかもしれません。(ベルギー)

    →ドイツの人は、「ブンデスリーガはまるで猿の家のようだ」と言われていることをお忘れのようです。試合どころか周りを見ることすらなく、ただ叫んで喚いて飛び跳ねているだけの観客を見てれば、「なるほど確かにこれは猿の家だ」としか思えません。youtubeを見ればその様子は山程見ることができますが、見るに堪えないものです。まさにクソです。
    観客動員数は多いので、人気だということはわかります。他国で同レベルのものは存在しません。
    ドイツ人の誰もが「自分のチーム」を持っていて、他のチームと競い合っているブンデスリーガのような、そんな存在が私にもあると嬉しいと思います。しかし私は国際的な射撃競技をそういった環境の元で行いたいとは思いません。「Nestruev」や「Costa」や「Korakaki」や「Ukrainians」、あるいはその他の有名シューターを、地元チームを応援するがごとく熱狂的に応援したとして、それはやってる側は楽しいかもしれないけれど、見てるこちらにとってはそうではありません。
    観客は、飛び跳ねたりするべきではありません。「教育のない酔っぱらい」や「社会の爪弾き者」は、射撃スポーツからは遠ざけておいたほうが良いでしょう。そういう連中はサッカーを見ていれば良いんです。テニスを良い参考例とするべきです。(国籍不明)

    →仮に、音楽がイベントの一部であるというのなら、ドイツの方の主張には同意できるかもしれません。しかし、音楽を流すとしても例えば保留音のようなものであるべきですし、コメンテーターの発言中は停止するべきです。初めて射撃スポーツの大会を見た人が、「この流れている音楽は素晴らしい、選手のパフォーマンスを上げているね!」と言ったとしたら、それは射撃スポーツにとって誇らしいことでしょうか? むしろ、恥ずかしくてバツの悪いことなんじゃないでしょうか。(スコットランド・アンガス)

 

  • ひとつハッキリさせておきたいのですが、私も皆さんと同じように、競技中に流れる音楽というのは好きではありません。ドイツのワールドカップでは、イントロでだけ「Hells Bells」が流れるのが恒例です(少なくても昨年までは確かにそうでした)。コメンテーターの発言中は音楽は停止していました。
    Groucho Marxは言いました――「私は、『私のような人間を受け入れるクラブ』のメンバーになりたいとは思わない」。あなた方のうちどれだけの人が、ISSFのファイナルまで残れるというのですか?(ドイツ・ウルム&アルンスベルク

    >あなた方のうちどれだけの人が、ISSFのファイナルに残れるというのか
    悪いけど、それは問題ではないのです。「音楽は、射撃大会を、見て楽しいものにするのか?」ということが問題なのです。
    私の知る限り、その問いに対する答えは「そんなことはない」あるいは「全くない」のどちらかです。ISSFは、ターゲットを外しているということです。(ベルギー)

 

  • リオで行われたワールドカップの音楽、あれはまさに最悪でした。前の解説者はどうしたんでしょう? 私は彼女こそ最高の解説者だと思います、少なくても今のライブストリームやYoutubeビデオの新しい解説者よりはるかに良かった。(オーストラリア・シドニー)

    →ヒラリーさんのことですか? 彼女には絶望しました! 私は、彼女は「on the highest step of the podium(表彰台の最も高いステップ)」というフレーズを発するたびにボーナスをもらっていたんじゃないかと推測します(訳者注:つまり、耳タコになるくらいそのフレーズを連発してたんでウンザリしたって意味なんでしょう。イギリス人ってなんでこう婉曲表現が好きかなあ)。今の「Shak(SP?)」氏は、まあ良い感じです。
    ラルフ・ロドリゲスよ戻ってきてくれ!(イギリス・サマセット州)

 

  • 私の意見ですが、アスリートが射撃を行っている時に、騒がしくしたり、拍手をしたり、歓声を上げたり、エアホーンを鳴らしたりすることは許されるべきではありません。なぜなら、それは彼らの気を逸らしてしまうことになり、良いパフォーマンスを発揮できなくなってしまいます。
    それは、「スポーツ」という名前が付いた、額に飾られた絵みたいなもんです――要するに、ただのゴミです。
    実際に自分が射撃をやっていない人が、射撃をしているところを見ただけでは、誤ったアイデアを導き出してしまうのは自明です。彼らは、トップレベルの射撃には高度な集中が必要なのだということを理解することができるだけの技術スキルすらもっていないのです。
    すでに他の方が例として挙げていますが、私が見たいのは観客がテニス、ゴルフ、スヌーカーと同じように振る舞うファイナルです。フーリガンみたいな観客ばかりの決勝戦よりも、ずっと射撃スポーツのイメージ向上にプラスになるはずです。(ポルトガル・リスボン)

「terrible(酷い)」「hate(ひどく嫌う)」「ghastly(身の毛のよだつほど恐ろしい」「unwelcome(歓迎できない)」「low-IQ distraction(低能な連中の気まぐれ)」「uneducated drinkers(教育のない酔っぱらい)」「scum of society(社会の爪弾き者)」「annoying(迷惑な)」「Don’t get me started(マジ勘弁)」「rubbish(ゴミ、屑、がらくた)」「crap(クソ、排便、たわごと)」と、罵詈雑言の嵐です。「私は、その意見には賛同できない」という意志を表明する際に使える英語表現の見本市のようです。

特に、サッカーに対するディスり具合はちょっと凄いものが(笑)。マイナースポーツやってると、やっぱ積もり積もったアレコレがあるのかもしれませんね。世界どこでも同じようなもんなのかしら。

嫌うとか容認するとかに関係なく、「実際にそういう形で世界大会が開かれているなら、世界で戦うためには対応しないとならない」ってのは大前提になるわけで、NT選考会で流れた大音響のハードロックはその一環ってことなんでしょう。「あれ、すげー良かったよ!」なんて思ってる人は参加者の中にはただの一人もいなかっただろうと断言できますが、それでもソレに慣れないとならないってのが、世界で戦って勝つことを期待される国の代表選手(ないしはそれを目指す選手)に課せられた使命ってことになるわけですね。

池上ヒロシ

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