標的をリンクで繋げば、その時点の暫定順位をリアルタイムに表示するばかりでなく、「今、誰が、どこを撃ったか」まで表示することができるのが電子標的です。地味だ地味だ言われている射撃競技を、ちょっとだけ「見てて面白いスポーツ」にしてくれましたが、「なんか嫌だ」って人も少なからずいたりします。

全国各地の射撃場で少しずつ普及が進んでいる電子標的。ターゲットを通過した瞬間の弾の軌道を、音波や光を使って測定することで、これまでの「穴の開いた標的紙を審判が見て点数を決定」というやりかたに比べて集計や結果発表に要する時間を大幅に短縮することに成功しました。

とはいえ、実際に撃った場所の証拠が、紙に開いた穴としてこれ以上ないほどに明確に残る紙的に比べると「なんとなく信用ならない」と感じる人は少なくないようです。先日アップした「海外の反応」シリーズの、フリーピストルが無くなるかどうかって話がされていたスレッドの中にも、電子標的についてちょっとした議論が巻き起こっていましたので、簡単に抜粋して紹介したいと思います。

電子標的の功罪について

引用元:TargetTalk


  • 電子スコアボードが導入されて以来、観客はこれまで見たことがないレベルにまで増えました。射撃競技は、サッカーやボクシングのような「観戦スポーツ」ではないことは承知していますが、それでも電子機器はささやなかがらではあるものの後押しはしてくれました。(ベルギー)

 

  • →正直いって、ペーパーターゲットのほうがずっと良かった。太陽の下ではしばしば、弾が飛んで行って的に穴を開けるのを見ることができた。

    それが今じゃ、撃ってるのは黒いトイレットペーパーときたもんだ。電子標的は、ありとあらゆることを、昔よりずっとずっとずっとずっと悪くしている。(国籍不明・多分オーストラリア)

    「黒いトイレットペーパー」というのがこれ。音波式の電子標的は弾が標的面を通過する時に出す「紙に穴が開いた音」をセンサーで拾って軌道を計算するので、穴を開けるための黒い紙を上から下に順繰りに送り出す仕組みが必要になるのです。確かにトイレットペーパーに見えますが、多分、尻拭きにはゴワゴワすぎて使えないんじゃないかと思います。
    →興味深い映像へのリンクありがとうございます。しかしそれを見て思うことは、紙的では今のファイナルのように観客が1発ごとに順位の入れ替わりを見たりすることはできない、ということです。
    ラピッドファイアでは、ジャッジがターゲットのところまで行ってスコアを決定しました。特に勝敗が微妙なときはなかなかにサスペンスを感じるひとときでしたが、フリーピストルで50m先のターゲットとなると、ジャッジが集計を終えるまでけっこうな時間を待たなければなりませんでした。
    人によって好き嫌いはあるとは思いますが、電子標的は一般の人々にとっての射撃競技を以前よりずっと「近い」ものにしてくれたと思います。(ベルギー)

    →ベルギーの人の意見に完全同意します。
    私はスコットランドで行われている全ての10m/50m射撃競技にて電子標的の運営をしているチームの一員です。私が知る限り、競技者や観客の中に「紙的の方が電子標的より良かった」なんて言ってる人は一人もいません。(スコットランド)

    →それは、聞く相手を間違えてるだけだろ。自分たちが参加したり見たりするイベントに使用するターゲットとして、電子標的か紙的か、正しい選択ができなかった人間なんだからさ。
    俺がイベントを主催するなら、全ての電子標的を破壊して紙的に戻すね。観客は全てのショットが紙に穴を開けるのをしっかり見ることができる。何の費用も必要ない、観客がいったん家に戻って双眼鏡を持ってくれば済むだけの話だ。
    電子標的じゃあ、安っぽい3色の画面に表示されるクソみたいなドットで描かれた十字線しか見えない。それとも黒トイレットペーパーに開く穴でも見てろってのか?(国籍不明・多分オーストラリア)

    →ファイナルを紙的でやってごらんなさい。20発撃つのに予選の60発より時間がかかりますよ。これが、私が電子標的のほうが良いと考える理由です。(国籍不明)

 

  • 電子標的について賛成の人、反対の人、いろいろいるんですね。私の意見です。
    私が所属するクラブに電子標的が設置されてからの話です。試合の時には、クラブハウスの人たちはモニター画面に釘付けになっていました。そしてその後、大勢の人(若い人も年取った人も)がエアピストル射撃に興味を持つ結果となりました。好きか嫌いかは人によって違うかもしれませんが、そのどちらであるかに関わらず電子標的は射撃をより魅力的なものに変えるのは確かです。
    着弾点が円ではなく十字線で表示されるのは、円にしようとするとISSFの機器認証をまた最初っから受けないとならないという面倒な問題があるからです。公式戦では「古い」ソフトウェアしか使えないのもそこらへんが理由でしょう。……このスレには、そこらへんのことについての専門家がいるんで詳しいことを書いてくれるかも?
    トラップやスキートでは、観客はターゲットが割れるのを見たほぼ直後にリザルトを見ることができます。プラクティカル・ピストル競技で、フォーリング・ターゲットが倒れるのと同じです。これが、人々がその競技を見てくれる理由です。
    ま、紙的だろうと電子標的だろうと関係なしに、射撃を楽しみましょう!(ベルギー)
    長瀞射場にある電子標的のモニター画面ですが……こちらは「十字線」じゃなく弾痕が円で表示されてますね。そういえばW杯の中継画面なんかだと十字線で表示されてる映像を見た記憶が……。

    →はい、「そこらへんのことについての専門家」です……が、すみません、何も言うことができません。ただ言えることは、SIUSは2020までのジュニアカップ、ワールドカップ、ファールドカップファイナル、世界選手権での契約を結んでいるということだけです。(イギリス)


なんか、やけに電子標的に対するヘイトが溜まってる人が一人いますね……。「弾が的に当たって穴が開くのが見えないからダメ」ってのはちょっとどうなんでしょうねえ。「飛んで行く途中の弾が見える」ってのにヤケにこだわってますけれどそれってそんなに大事?

「ファイナルを紙的でやると大変」ってのは確かにその通りです。今はやらなくなりましたが数年前までは東京都選手権でソレやってましたし、石巻で開催されてる全日本選手権でも紙的を回収しては発表、回収しては発表という形でファイナルやってました。宮城ライフル射撃場には今年から電子標的が入るので、あの人海戦術で乗り切った紙的ファイナルも今年が最後になるとのことですが。

池上ヒロシ

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池上ヒロシ

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