特にどこかの軍隊とか特殊部隊に採用されたという話があるわけでもないのに、ケルテックKSGは妙に人気があるので戸惑うことも度々です。映画とかFPS系のゲームに登場して活躍したのが理由とのことです。
普通のショットガンだと一本しかない銃身下のマガジンチューブが2本あるのに加えて、給弾位置がグリップよりも後ろにあるいわゆる「ブルパップ式」になっているため、全長が66cm程度と物凄く短いのに、装弾数が12発(チャンバー装填も含めればプラス1)と反則気味に多いという、狩猟にも使えなければクレー射撃にも使えない、完全にホームディフェンスに特化した物騒な銃です。
ケルテック(Kel-Tec)というのは、ひとことで言うと、変な銃メーカーです。最初に日本のメディアで紹介されたのは、1990年台の半ば、月刊Gunに掲載されたP-11という小型オートじゃないかと思います。9mmを撃つ7連発のオートなのに重量は400gそこそこしかない、というのに驚きました。32ACPを撃つP-32に至ってはたった186gと、書き間違いじゃないかと思ってライターに確認してしまったほどの超絶小型軽量モデルです。
実銃に触ったことも、一応あります。ショットショーにて、発売になったばかりのSU-16という折りたたみ式ライフルをいじらせてもらいました。軍用ライフルであるM16とかM4カービンとかと同じ5.56mm弾を撃つライフル(マガジンも共用)だというのに、ほとんどがプラスチックで、重さも1kgと少しと羽のように軽く、金属製のハンドガンと同程度の重さしかありません。ストックの展開や折りたたみも、どこかスイッチを押してロックを外してとか頭の良い方法ではなく、力を入れておもいっきり引っ張っると接合部が「バキン!」と音を立てて外れて、力を入れておもいっきり押し込むと「バキン!」と音を立ててハマるという、本当に大丈夫なのかコレ、こんなので5.56mm撃って命は無事で済むのかと不安になる作りでした。
余談ですがケルテックのブースも他の大手メーカーとは全然雰囲気が違いました。綺麗な外人のお姉さんやスーツをバッチリ着込んだお兄さんではなく、なんかそこらへんの公民館で井戸端会議してそうなおばさんが数人、椅子に座ってのんびりと話をしてるだけ。前述のストックの展開についても、私がロック解除スイッチはどこだと見回してたら、椅子に座ったまま「ちがうのよ~お兄さん、もっと力を入れて、ほらぐいーっとぐいーっと!」って感じで声かけてきて、そのとおりに力を入れて「バキン!」と音立てて開いてビックリしてたら大笑いされたりとか、なんか「銃器メーカー」というイメージとはずいぶんとかけ離れた感じのところでした。
だから、そんなところが作ったウルトラショートなショットガンが、タクティカル系が好きな方々に人気と聞いた時にはちょっと戸惑いを覚えたものです。確かに短くて装弾数が多くてかっこ良いかもしれないけれど、実用性はどれだけあるのか? 本当にタクティカル用途に適しているのならどこかしら採用しているはずじゃないか、そういう話がないってことは、なにか欠陥めいたものがあるのではないか?
見た目が凄くタクティカルっぽいのは確かです。短いパイプを3本束ねたような真っ直ぐな本体に、グリップ&トリガーだけが下に突き出しているスタイルは、従来のショットガンとはまるで雰囲気が違います。これで装弾数がフルサイズのショットガンを大きく凌駕するというのですから、中二病マインドにビンビンと響くのは、ある意味で当然といったところでしょう。
では次ページから、いよいよ東京マルイのガスショットガン「ケルテックKSG」について、詳しいところを見ていきたいと思います。
通常は一本だけしかない、銃身下のマガジンチューブが2本あるのがケルテックKSGの特長だ。マルイのKSGではマガジンチューブ部分にも発射機構が詰め込まれているので、実際に「マガジンチューブ」としては機能しない。弾が入るのは、片側の最後部に1つ(これは実際に弾を撃つ薬室として機能)、その反対側の最後部に2つ(こちらは予備弾倉として使用)の3発のみとなる。
「おそらく、世界初のエアガンとしてのモデルアップではないか」と広報さんが胸を張るマルイのKSGだが、モデルとなった実銃が持つ「給弾を、左右のマガジンチューブから任意で切り替えることができる」といった最大の特長は全く再現されておらず、片方のマガジンチューブは単なる予備弾倉入れとしてしか使われていない点はちょっと残念だ。見た目、スタイルは抜群に格好良くいかにもタクティカルな雰囲気満点だが、中身は従来のガスショットガンM870と大きくは変わらないわけで、使いドコロはけっこう限定されてしまいそうな気がする。
東京マルイのガスショットガン「KSG」は、近日発売予定(価格は未定)。