【静岡ホビーショー】M40A5(東京マルイ)

12日から、静岡ツインメッセで静岡ホビーショーが開催されています。模型メーカーによる見本市としては国内最大のものの一つで、東京マルイが毎年ここで「衝撃の新製品」のお披露目を行うことから、エアガン好きとしては見逃せないイベントの一つになっています。

今年の「初登場の新製品」は、ガスショットガンのケルテックKSGと、エアコッキングライフルのM40A5でした。まずは久々のスナイパーライフル新作となるM40A5から見ていきましょう。
 

フル装備でM40を構えているマネキンがブース前に設置してありました。
東京マルイの、エアコッキング式スナイパーライフルとしては第3段になるM40A5。スコープ、マウントリング、バイポッドは別売りです。

M40ライフルは、アメリカ海兵隊がレミントンM700をベースに独自の改良を施したスナイパーライフルです。歴史を紐解くとベトナム戦争時代まで遡りますが、いくたびもの改良を経て現在は「第5世代目改修モデル」というような意味での「A5」が付いた名前になっています。

M700からの最も大きな変更点は、湿気などで変形したり割れたりしやすい木製ストックからグラスファイバー製のストックに変更したことですが、それ以外にもバレルやトリガー、マガジンなど改造は多岐にわたっています。スコープやバイポッドも、予算が厳しいと言われている海兵隊なりに「求めうる最高級のもの」が取り付けられています。

東京マルイのエアコッキングM40A5はスコープやマウントリング、バイポッドは付属しませんが、各部が調整可能なストック、スコープの前方にナイトビジョンを直列に並べて取り付けるためのマウントベース、サイレンサーの取り付けに対応した新規格のフラッシュハイダーなどはきっちりと再現されています。

エアコッキング式スナイパーライフルの第1弾だったVSR-10シリーズは、細かい部分は違うものの基本的にはレミントンM700をベースとしたデザインとなっていました。ということは、M40A5はVSR-10の細部変更モデルにすぎないのでしょうか? いや、そんなことはありません。見た目の共通点といったらせいぜいボルトハンドルの先っぽくらいで、外観も中身もほぼ全て新しいモデルになっています。

次ページからは、細かい部分を見ていきましょう。

ボルト&ボルトハンドル

ボルトハンドル部分のアップ。ボルトハンドルの先端部分(手でつかむところ)の形はVSR-10に似ている(というか、デザインモチーフになった元の銃が同じ)だけれど、それ以外の場所、機関部もボルトもセフティレバーも「まるで別物」になっている。タテマエ上は「モデルとなった実銃は存在しない架空銃」だったVSR-10と違い、こちらはメディアに登場することも多いアメリカ海兵隊のM40A5がモデルだ。
スコープは、展示品では東京マルイ製の「プロスコープズーム」が搭載されていた(別売り)。海兵隊のM40を再現するなら、シュミット&ベンダーの3~12倍可変スコープを取り付けたいけれど、実物はちょっと手が届く値段ではないよね……。

ボルトハンドルにはちょっとおもしろい仕掛けがある。ボルトを引いた状態では、ハンドルを下げることができないようになっているのだ。

エアコッキング式ボルトアクションライフルの操作方法は、「ボルトハンドルを上げる」「ボルトを後ろに引く」「ボルトハンドルを上げたまま、ボルトを前まで戻す」「ボルトハンドルを下ろす」という手順になるのだけれど、この「ボルトハンドルを上げたまま戻す」。というのが、エアコッキング式ボルトアクションライフルの操作にあまり慣れていない人だとなかなかできなくて、つい「ボルトハンドルを下ろしてからボルトを前に押しこむ」という手順になりがちである。

そうすると何が起こるか……。セフティレバーがブチ折れるのである。レンタル銃として長い間使ってきた私のVSR-10は、早々にレバーが折られてしまい、その後も何度も折れた痕をボルトハンドルで擦られ、セフティレバーは綺麗に磨かれてすっかり跡形がなくなってしまっている。

そういったトラブルを防止するために、M40A5ではボルトを一番前まで戻さないかぎりハンドルを下げることができないような仕組みが追加されている。
 

メカニズム自体は単純なもので、矢印で示したところにある突起が、ボルトハンドルを一番前まで戻すと本体に押されて引っ込み、ハンドルが下がらないようにしているロックを解除するというものだ。

気になったのは、結果的に操作しにくくなってたりしないだろうかということ。「慣れない人が焦って操作してセフティレバーを折る」という事故は防げるかもしれないけれど、「ボルトを引いた、ハンドルを下げたい、下がらないあれ、あれ、ガチャガチャ、バキッ」というような事故の原因になっちゃったりしないだろうか……。

実際に、今回のホビーショーでデモンストレーションを行っていた「デカ広報」氏ですら、ボルトを前まで戻してハンドルを下げようとしたときに、一番前まで戻っていなくてハンドルが下がらなくて、何度かガチャガチャとボルトを動かしてしまう様子を見ることがあった。それが試作品であるがゆえの不具合でしかなく、製品版ではすっかり解消されていることを願いたい。

なお、M40A5はVSR-10やL96に比べて、「コッキングストロークが大幅に短くなっている」という特長がある。エアコッキング式のボルトアクションライフルだと、実銃よりも大幅にストロークが長くなってしまう傾向があり、短くなったということは実銃に近づけたという意味なのかと思ったのだが、どうやら実銃のそれに比べてもさらに短いストロークとのこと。操作性の向上を優先したということなのだろう。

コッキングストロークの短縮は、歯車の組み合わせとか難しいことをしているのではなく単純にバネを強く短いものに変更しただけとの話だ。「長い距離をゆっくり押し出す」のではなく「短い距離を一気に押し出す」形のシリンダー&ピストンに変更されたということになる。命中精度のことを考えた場合、そのどちらが有効なのかは人によって言うことが変わり、はっきりとした定説がないのが現状。実際に撃ってみてグルーピングを確かめてみないことには、「コッキングストロークの短縮が命中精度に及ぼす影響」については確かなことは何も言えない。

コッキングインジケーター

銃が撃てる状態になっているか、コッキングされていなくて撃てないのかが、外から見るだけですぐにわかるインジケーターが追加された。
 

左がコッキングされている状態(撃てる状態)、右がされていない状態(撃てない状態)。

ストック

ホンモノのM40A5と同様、チークピースの上下やバットプレートの長さなどが調節可能なストックが装着されている。色はブラックとODの2色があり、同時発売となる予定とのこと。
 

工具なしでチークピースの上下位置を調節できる。チークピースの上部前方には、ボルトハンドルが当たらないようにするための切り欠きがある。
バットプレートの厚みは、スペーサーの数や組み合わせを変えることで調節ができる。厚みがあるスペーサーが2枚、薄いスペーサーが2枚付属していて、写真はその全てを装着した状態。
ストック後部の左右と下部、そしてストック前部の左右に設けられた穴は、QDタイプのスリングスイベルピボットを取り付けるためのマウントとのこと。対応している製品を東京マルイ純正で出す予定はいまのところは無いけれど、市場で出回っている汎用品はだいたい問題なく付くとの話だ。
ストック前部。取り付けてあるハリスタイプのバイポッドは、爆音VSRに付属していたもの(別売り)。
こちらは、東京マルイ純正のタクティカルバイポッド(別売り)が取り付けられたもの。展示品には全て何らかのバイポッドが取り付けられていたので(製品カタログの写真まで徹底的に!)、これを外すとどうなっているのかが不明だが、見る限り普通にスリングスイベルピボットが1個固定されている状態だと思われる。
ストック前部の上に取り付けてある短いマウントレール(ダイカスト製)は、ナイトビジョンなどをスコープ前方に並べて装着するためのものとしてM40A5から標準装備となったものが再現されているのだが、現時点では東京マルイではここに取り付けられる何か有効なオプション品というものがないので、展示品の全てがここには何も取り付けられていない状態になっていた。
独特の形をしたフラッシュハイダー。実銃では専用サイレンサーの取り付けに対応するためのもの。エアガンでは従来どおり取付基部がM14逆ネジになっていて、市販品のサイレンサーを無加工で取り付けることができる。なお、インナーバレルがどこらへんまで来ているか(長さがどのくらいか)は現在調整中なので答えられないとのことだった。

給弾機構は、VSRともL96とも違う独自のもの

振り返れば今から7年前の2009年夏に、エアコッキング式スナイパーライフルの第2弾として登場したL96。その大きなセールスポイントの一つが、「実銃どおりのマガジン位置」というものだった。

通常、エアコッキングだと機構的な制約があって、バレルに弾を装填するポイントが実銃よりもずっと前方になってしまうため、エアガンとしての機構を優先するとマガジン位置が(実銃に比べて)前になってしまうものだが、L96では、コッキング時にマガジンから拾い上げたBB弾を、長いレールを走らせて給弾位置まで移動させるというやりかたで、「実銃どおりのマガジン位置」を実現していた。

しかしそれは、装填操作をデリケートなものにする(あまり早く操作するとBB弾がレールの途中でひっかかったり傷ついたりする)という問題と、ボルトハンドルを外したいというだけの簡単な分解でも極めて面倒な手順が必要になるという問題の2つの欠点につながってしまっていた。

M40A5では、L96が持っていた問題は解消した上で、実銃どおりのマガジン位置を実現している。具体的な仕組みについては、現在「BBロード・システム」という名前で「特許出願中」とのことで詳しくは教えてもらえなかったが、それほどアクロバティックなことをしているわけではなく、「知ってしまえば、単純で簡単なやり方ですよ」とのことだった。メカニズムにおいて、「単純で簡単であること」というのはそれだけで大きなメリットだ。
 

どんな給弾機構を持っているのかを類推するために、まずはマガジンを見ていこう。マガジンは、プレス成型された金属板で覆われており、手に持つとズッシリとした感触がある。装弾数は未定だが、「30から35発程度)とのことだ。
給弾口が、通常のマガジンのように上ではなく前方に向いているのが特長的だ。おそらくここからパイプ状の糾弾ルートに向けてBB弾を押し出すやり方なのではないかと思うが、大昔のエアコキハンドガンのように、「マガジンを抜いても、銃の中にある給弾パイプ内に何発ものBB弾が残ってしまう」ようなやりかただとは思えない。もう一味、なにか工夫があるのではないかと思うのだが……。

引き金は、1stステージの重さや2ndステージの引きしろ(キレの良さ)を調整できる新機構を搭載しているとのこと。VSR-10も、市販されているエアガンとしてはかなり繊細なトリガープル調整機能がついていたが、それをさらに上回るものになるらしいので注目である。

東京マルイ製のエアコッキング式ボルトアクションスナイパーライフル第3弾、「M40A5」は、2016年の夏に発売予定だ(価格未定)。

池上ヒロシ

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