世界大会で金メダルを量産している松田知幸選手。オリンピックでのメダルこそ取れていませんが、2010年シドニーW杯での史上初となる2冠(10m・50mピストル)を始め、数々の輝かしい実績は、紛れも無く「世界トップレベルのピストル射手」としての評価につながっています。実際に、海外の射撃スポーツ関連のBBSなどで名前を見ることも少なくありません。
すこし前ですが、「Target Talk」という掲示板に「日本製の、オリンピック射撃用ターゲットピストルは無いのですか?」というトピックが立てられていまして、日本にそこそこ詳しい人、あまり詳しくない人も交えて興味深いやり取りが繰り広げられていました。松田選手の名前もちらっと登場します。簡単に抜粋して意訳してみたいと思います。
- 日本製の、ハイエンドな精密射撃用エアピストル(ステイヤーLP10と同等のもの)は何でしょうか? もしそういう製品が無いというのなら、その理由を教えて下さい。
- Wikiを見て下さい、日本では、金属製の弾を撃つ銃は例え空気銃でも「ファイヤーアームズ」とみなされ厳しい規制があるんですよ。
- 日本では、エアソフトレプリカは凄くたくさんの種類が作られていて販売されていますが、ペレットガン(金属弾を撃つ空気銃)はほとんど作られていません。それはおそらく、日本の法律が武器の製造や所持に対して極めて厳しい制限を課しているからだと思います。400fpsを超える初速で0.4g以上の鉛弾を撃つ10m競技用エアピストルを所持することは、日本では罰金や懲役の対象になってしまいます。そのため、10m競技用エアピストルのマーケットというもの自体が日本には存在しないのです。
- トモユキ・マツダがこんなことを言っていました。「私はプロのスポーツ選手ではなく、あくまでポリスオフィサーです。日本にはプロの射撃選手はいません(※)。もしプロのスポーツ選手になろうと思っていたら警察に就職はしなかったでしょうが、私がピストル射手になれたのは警察官になったからでもあります」
※この発言は2012年ロンドン五輪の時のインタビューが元ネタですが、現在の日本は少し事情が違ってきています。ロンドン五輪の反省をもとに、JOCは「アスナビ」というアスリートと企業をマッチングする就職支援制度を発足しました。何人かの射撃選手がALSOKや飛鳥交通といった企業所属となり、事実上のプロ選手として競技に取り組める環境が整えられつつあります。
- そういえば、ある著名な銃器評論家がこんなことを書いていました。「数多くの、極めて高品質なライフルやショットガンが日本で作られているということは忘れてはいけません。『メイド・イン・ジャパン』というセンテンスは、『高品質』という言葉と同じ意味で使われているのです」
- 私は日本に住んでいたことがあります。仕事の関係で、今でも年に数ヶ月くらいは日本に戻ります。その経験で言います。
日本人は、ガンキチガイ(GUN MAD)です。彼らは銃を愛しています。およそアメリカでは見ることができないレベルの、超絶美麗な銃器専門のグラフィックマガジンが何種類も定期刊行されています。日本で合法な銃として販売されているエアソフトは極めて精密かつ正確なホンモノのレプリカですから、もしそれらをアメリカに持って帰ろうもんなら確実に税関で没収されます。
聞いた話ですが、日本製エアソフトを使って普段からトレーニングしている沖縄駐留の海兵隊員は、アメリカに帰ってきてすぐにコンベンショナルピストルの競技で「ありえないハイスコア」を出すのだそうです。私は次に日本に行った時には、なんとかしてそのエアソフトを手に入れたいと思っています。
- 日本では銃規制が厳しいので、競技用のエアピストルやエアライフルは作られていないということはよく分かりました。では、なぜ中国人の射手は中国製のハイエンド競技用銃を使えるのでしょうか? 中国も銃規制は厳しいはずですが、「EMEI」という競技銃メーカーがありますよね?
参考URL:EMEI PRODUCTS
http://www.emfirearms.com/production/5/
- EMEIのライフルやピストルは、「中国製のワルサー」です。ワルサー社が発表したニュースに、EMEIの関係者とワルサー社長が握手している写真が掲載されていたことがあります。
- EMEIのスモールボアは、ワルサーではなくアンシュッツ2013のコピーであるように見えます。完全なコピーってわけじゃありませんが。
- EMEIの「5.6mm Slow-fire Pistol」と称する50mピストルですが、これなんかどう見てもモリーニCM84Eですね! もちろん、オリジナルと比べるとちょっとした違いはあります。トルクスネジのかわりにマイナスネジが使われているところ、電源スイッチとテストボタンの位置が逆になっていること、銃身が艶有りではなく艶消しのリン酸処理になっていること、トリガーの形といった部分です。
TargetTalkより一部を抜粋して翻訳
なんか、後半はすっかり別の話になっちゃってますね……