ボウリングを中心とした総合アミューズメント施設、ラウンドワン。全国各地にでっかい看板がのっかったでっかいビルが立ち並んでいるので、知らないって人はいないんじゃないかと思う。ラウンドワンの中でも特に大きな施設には、「スポッチャ」という様々なスポーツの体験ができるエリアが設けられているところがある。テニスや卓球やバドミントンといった一般的な屋内競技から、ポケバイやカーリングやアーチェリー、はてはロデオや釣り堀なんていう普通はありそうにないものまでいろいろ揃っていて、そんなに高くない入場料金だけですべての施設が遊び放題になるというものだ。
その中に、「ガンシューティング」というのが混じっているという話は以前から聞いていたのだが、公式サイトの紹介ページには小さい写真が一つ載っているだけで、いったいどういうものなのかが皆目わからない。自分で確かめに行こうにも、家族連れやカップルといったリア充だらけの中に一人で鉄砲撃ちにいくだけなんてのはいくらなんでもハードルが高すぎる。どうしたもんだろう……なんて話をしていたら、弟が家族を連れて実際に行ってきて、ついでにいろいろと写真を撮ってきてくれた。リア充な弟家族に感謝しつつ、謎だった「スポッチャ・ガンシューティング」について詳しいレポートをお送りする。
これがシューティングレンジの外観。距離は最大で10mある。近くには子供を放り込んでおいて勝手に遊ばせることができる檻とか、ごく短い距離でボウリングの真似事ができる子供向けの体験施設みたいなのが並んでいる。
周囲は網で囲われていて、人一人が頭を差し込める程度の範囲だけ開けられている。網の中には、銃と移動式の的枠、的枠に取り付けるためのペーパーターゲット、そしてターゲットを操作するためのタッチパネルが設置されている。
レンジの中は基本的に暗いが、ターゲットだけは明るく照らされるようになっている。周囲は跳弾防止のための布が垂らされており、撃った弾は的の下に貯まるような仕組みになっている。
ライフルは凄く見慣れた形……というかこれ、アレじゃん!
これが使用する銃。凄く見慣れたボルトアクションライフルの形をしている。フォアエンドの下にはなにやら妙なパーツが固定されていて、そこから生えたホースが台の中へと続いている。
大勢の子どもたちの遠慮なしの酷使の末、完全に塗装が剥げて銀色になったレシーバーには……ASGKの文字が!
ボルトハンドル周りやセフティの形状、あと反対側にあるので写真には写っていないがバレル横のHOP調節レバーを見ると一目瞭然、これは東京マルイのVSR-10がベースになっている。間違いない。
スリングスイベルピボットには鎖が繋げられているけれど、何度も付け直した跡がある。そりゃまあ、エアガンのことなんか詳しくない子どもたちが容赦無しに引っ張ったりするんだろうから負担は大きいだろうなあ……。
その鎖と、太いホースが1本、細いホースが2本、合計3本のホースが銃から生えていて、台の中に続いている。
ターゲットは紙。自分でセットする。意外にアナログ。
レンジの中に、ターゲットペーパーが積み上げられている。これを一枚取って、自分で枠にセットする。
ターゲットペーパーの上には穴が2つ。的枠の上部にもフックが二つある。
ターゲットの距離セットは、レンジの中にあるタッチパネルで行う。1ゲームで撃てるのは12発のみだが、前述のとおり「スポッチャ」は入場料を払えば全ての施設が使い放題になるので事実上は無制限だ。……もっとも、後ろに並んでるのに一人で占領して延々と撃ち続けるなんてのはマナー違反ではあるが。
的枠にターゲットを引っ掛けたら、タッチパネルのスタートボタンを押す。そうするとターゲットまでの距離を3種類から選べる。「初級」が6m、「中級」が8m、「上級」が10mとなっている。
レンジの上が電動レールになっていて、タッチパネルで指定した距離までガーッとターゲットを自動で運んでいってくれる。
ボルト操作もマグチェンジも必要なし。引き金引くだけで無限に撃てる!?
いよいよ射撃! といってもやることは、「引き金を引く」だけだ。ボルトアクションライフルの形はしているが、ボルトは完全固定されていて押しても引いてもビクともしない。引き金を引けばセミオートで何発でも連続してバスバスバスバスと撃てる。台の下に続いているホースから、エアとBB弾が自動で供給されているようだ。初速はけっこうあって、撃ってからほぼ間髪を入れずに10m先のターゲットに着弾する。
ボルトハンドルは完全固定だが、なぜかセフティレバーはちゃんと動く。しかも後ろに倒す(セフティ・オン)にするとトリガーが固定されるという機能もライブのまま。
オリジナルのVSR-10では両面テープで固定されているだけのフロントサイトだが、これだけガシガシあちこちに当てられて傷だらけになっているのに取れていないということは、多分強力な接着剤かなにかでガッチリ固定してあるんじゃないかと思う。
リアサイトは、VSR-10オリジナルのままっぽい。
上から見たところ。使い古され方が凄い。ちょっと他では見たことがないビンテージ仕上げ(笑)になっている……。マルイVSR-10の金属塗装って、剥げることがあるんだね……。
鎖もホースも短いので、銃はほとんど台から持ち上げることはできない。なので、撃つときはどうしてもこんな感じのポーズになってしまう。
年齢制限はないので、子供でもOK
台との接続部分を別角度から。おそらく、この太いホースがBB弾の供給、細い2本のホースのうち1本がBB弾発射のためのパワーソースで、もう1本がセミオート作動のパワーソースになっているんじゃないかと思うのだが、どうだろうか?
2つのレンジを仕切っている看板。コルトM1911A1を構える女の人がシルエットになっているが、実際に撃てるのはライフルのみで拳銃は置いてない。ってことは看板に偽りあり!?
注意書きはこれだけ。銃の使用方法だとかゴーグル着用だとか人に向けるなみたいな警告文だとかそんなのは全然なし。まあ、物理的に人に向けたりできない構造にはなっているし、跳弾なんか万に一つもないような作りになっているので心配はほぼないのだけれど。
「セミオートのボルトアクションライフル」という、ちょっと妙なシロモノではあるにせよ、子供向けではないちゃんとしたフルサイズのライフルを10mレンジで撃てるというのは、けっこう魅力的なんじゃないだろうか。
「エアガンを撃つとなると、条例とか年齢制限とかそこらへんは大丈夫?」というのが気になるが、少なくても場内表示には一切の年齢制限めいた規制は見当たらなかった。想像だが、銃から鎖やホースが伸びていて台に繋がっていて、その台から供給されるエアやBB弾がなければ弾が撃てない、つまり「持ち運びができない巨大な台+銃の形をした発射機」が一体となっているということで、これはエアガンではなく別のものだという解釈になっているのではないかと思う。
※「それが銃なのか、そうでないのか」を判断する基準に、可搬性というのはそれなりに重要な要素になっている。
たった12発、それも台からほとんど持ち上げることができないライフルで中腰になって撃つしかないという悪条件ではあるが、ほとんどひっきりなしに子どもたちがレンジの中に入り銃を手に取り的を撃っていたとのこと。休日の午後ということもあるけれど、「男の子はほぼ確実にここには来て撃ってるように見えた」との話……ただ、一人で何度も撃ったり、仲間同士でスコアの比較をして競い合ったりとかそういうのは見かけなかったそうだ。
ベース銃はマルイVSR-10なのは確かだが、自動でエアとBB弾が供給されてセミオートで無限に撃てるシステムなんてものは、少なくても日本製では聞いたことがない。だが、銃の古ぼけ具合からいってかなりの酷使がされていそうなのに、全く故障しそうな気配もなくしっかりと動くこの信頼性は、言っちゃわるいが中国製や韓国製とは思えない……完璧に私個人の身勝手な想像なんだけれど、これって台湾製のシステムなんじゃないだろうか。あのひとたちエアガンに関しては採算度外視に近い凄いもの作ることがあるから……。
スタッフがつきっきりじゃなくても大丈夫なほどに安全性が高く、しかも無茶な使い方をしても壊れない信頼性の高さ。これは、よくイベントで「エアガン体験射撃レンジ」の仕切りを任されたりする身からすると夢のようなシステムである。なんといっても一番面倒な弾込めとガスチャージを完全に機械任せにしておけるというのは大きい。エアガンイベントでの定番アイテムにしてもいいくらいだと思う。