「いやー、どうも口径が12.7mmを超えると途端に知識が乏しくなってしまって」と、ミリタリー関連を専門にしてる人達と呑んだ時に発言して周りを失笑させたことはありませんか? 私はあります。別にキッチリと数字で分けて好き嫌いを決めてるわけじゃないんですが、戦車とか航空機とか艦船とかには昔からそれほど興味が無く、「個人が手に持って運用できる範囲の小火器」にばかり興味が惹かれてました。12.7mm(50口径)ってのはその境目としておおむね妥当と思われる数字として出したわけです。
過去に遡れば、12.7mmをオーバーしてはいるけれどかろうじて「個人携行火器」の範囲に入る銃があります。戦車という武器が戦争の舞台に登場して間もなく、まだ装甲がそれほど頑丈でなかった時代に、「超大口径のライフルを使って戦車の行動を止められないだろうか」というコンセプトで作られた、対戦車ライフル(Anti Tank Rifle)というカテゴリーの武器です。
イギリスのボーイズ対戦車ライフル(Boys Anti Tank Rifle)もその一つ。口径は.551インチ(13.9mm)、全長は小柄な人の身長に近い1,575mmもあり、重量にいたっては16kgと、銃器として許容できる限界に近いスペックを持ちます。
下の映像は、そのボーイズ対戦車ライフルの扱い方をアニメと映像で紹介したもの。第二次大戦の初め、ディズニースタジオは軍に接収され教育や士気向上のための短編を数多く作っていたそうで、そのなかの一つだそうです。
フィルムが作られたのは1942年とのことですが、その時期にこれだけ動くフルカラーのアニメを作る技術力も凄ければ、「敵」であるドイツ軍を抽象化しつつもワルモノっぽく描くセンスや、「死」を直接は描かないギリギリのやり口など、ディズニーの本気が窺える作品になっています。
さて、先日シカゴレジメンタルスという無稼働実銃を扱っているお店を訪れたところ、ショールームの片隅にこのボーイズ対戦車ライフルの無稼働実銃が展示してありました。もちろん売り物です。
「Boys MkⅠに、MkⅡのハモニカ型マズルブレーキを装着したカスタム」というのは、つい先日までTV放送されていたアニメに登場していたりします(作中にはそんなセリフは出てきませんが、DVDを購入すると付いてくるCDの中で解説されています)。こういうレアな存在ってのはそうそう被るものじゃありませんから、もしかしたらこのシカゴレジメンタルスに展示してある銃こそが、そのアニメを作画する際に参考にされたものなのかもしれません。
※BD BOXを見返してたら、EDテロップに「協力:シカゴレジメンタルス」の文字があることに気づきました。(2012年4月4日追記)
一時期バイオハザードが流行った時に、その中に登場するストック付きVP70に人気があつまり、当時は非常に貴重な存在になっていたかつてMGCがごく僅かだけ発売したモデルガンが物凄い高値を呼んだという話を聞いたことがあります。また同じく先日ヒットしたTVアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の中で人気キャラが使用したギブソンSGスペシャルというギターがありますが、同時期にそのアニメのことなんか全然知らないオーナーが「単なる中古品だし、数万円付けば御の字」なつもりでオークションに出品したところ、ちょうど色も劇中に登場したものと全く同じホワイトだったこともあって数十万円という超高値になってしまい、出品者を大いにビビらせたなんて事件もありました(もともとギブソンSGスペシャルのホワイトは日本では限定カラーだったこともあり、レアな存在ではあったそうな)。
ではこのシカゴレジメンタルスのBoysはどうでしょう。とりあえず現状ではまだ売れてないようです。限定1丁、多分泣いても笑ってもこの1丁だけ、これが売れたらおそらくもう次の機会は無いという「レア度」でいったら超激レア製品だけに、あっさり売れてしまいそうな気もするのですが……。