選択の余地なし? 中国製の弾を試す

前回前々回、奥戸射撃場で(ひとりさびしく)行ったテストで、なんか妙に良い結果が出たのが理由というわけでもないのだろうけれど、ライフルショップエニスにてH&NフィナーレマッチのAP弾が在庫切れになってしまった。次回入荷は全くめどがたたずとのこと。RWS R10もAP弾は在庫僅少となっており、AR弾に至ってはH&N、RWS共に品切れになってしまうという非常事態。

そのため、「チャンヤン(QIAN YUAN)」という中国メーカー製の弾が緊急値下げされた。エアライフル用と思われる重めの弾だけの入荷なのだが、撃とうと思えばAPでも撃てる。RWSのAP弾も在庫切れになってしまったらコレを撃つしか無いわけで、せっかくなのでまた弾と銃の相性テストを行ってみた。
 

「チャンヤン(QIANYUAN)」製の空気銃弾。エニスに入荷していたのは、この「直径4.49mm/重量0.53g」の弾だけだった。エアピストル用の弾が0.45~0.49gなのに比べると、ずいぶんと重い。
銃を万力固定した状態で10発を撃ってみた結果。まあ、とりたてて気になるほど大きく広がってるわけでもないので、このテストだけを見れば問題ないのだけれど、なにせ弾が重いので初速が遅い……。これについては後述。

手持ちのフィナーレマッチ4.50と、在庫僅少のRWS R10マッチ3種類をテストしてみたところ。チャンヤン製と比べてもそれほどたいして大きな違いはない。

10発分の初速を計測してみたもの。重い弾は遅く、軽い弾は早くなるという当たり前の結果になっているが、同じ重さであるRWSの3種類では「直径が大きい弾の方が初速が上がる」という傾向があることがわかる。初速の安定性については、H&Nは比較的安定していてRWSやチャンヤン弾は少しバラけ気味になっているような印象を受けるが、差はわずかなものでこれといった明確な結論は出しにくい。

 

スペックどおりの重量だとしたらパワー(ジュール値)がどの程度になるのかも計算してみた。チャンヤン弾は初速は低いが、それは弾頭重量が重いゆえのものであって、パワーを比較するとH&NやRWSとだいたい同じくらいであることがわかる。

ピストル競技の場合、ライフルに比べるとどうしてもトリガーを引く瞬間の銃の安定性が劣るため、少しでも弾速が早くなるように軽い弾を使うというのが基本的な考え方になっている。弾が軽いことによるグルーピング性能の低下よりも、銃が揺れる前に弾を発射してしまうことによるメリットを優先するという考え方だ。

だとするならば、「同じ重さだったら、弾速は早ければ早いほどいい」ということになるのだろうけれど、それが正しいとするのならば、今回のテストから導かれる結論は「RWS R10の4.50mm弾が、私のAPには最も相性が良い」ってことになる。万力に固定して撃った場合のグルーピングはどれもたいして変わらないが、手に持って撃ったときの揺れの影響は、弾速が早い方が軽減されると思われるからだ。

今回のテストの主役であるチャンヤン弾については? 「品質には全く問題はなく、普通に使える。弾速が遅いことによるデメリットはあるかもしれないが、それはこの弾がエアライフル用の重いものだからであって、品質的な問題ではない」というのが結論になるだろうか。もしエアピストル用の軽い弾も作っているのならば、それも輸入してくれれば対等な立場での比較もできると思うのだが。

透明なプラスチック製のケースに入ったチャンヤン弾。ラベルは紙製のものがケースの中に入っているだけ。ケースは細い透明粘着テープで封してあるのだが、このテープが剥がそうとすると糊が残るわ途中で切れるわで実に剥がしづらい。テープを剥がしてしまうとケースにはロックする機構は無いので、なにか別のテープを使って止めておく必要があったりと、中身以外の部分での「品質の悪さ」は細かいところで感じる……ここらへんは「中国製」の面目躍如ってところだろうか。

ところで、このチャンヤン弾のパッケージ(といっても丸く切った紙がケースの中に入ってるだけだが)には、「Training Grade」とか、漢字で「訓練級」と書いてあるんじゃないかと思える箇所がある。普通に解釈するなら、これは練習用のグレードが低い弾だってことになる。ということは、試合用のグレードが高い高精度弾が他にあるはずなのでは?
 
チャンヤンのスイスでの公式ディーラーが作ったと思われるサイトには、赤い角箱に入った「Excellent」、黄緑色の角箱に入った「Standard」、そして透明プラスチック丸ケースに入った「Match」の3種類が製品リストに掲載されている。「Match」のパッケージは一見すると今回購入したのと同じに見えるけれど、「Training Grade」の文字が無いなど細かい部分に違いがある。
 

上記サイトにある「Match」の写真。これには書いていない「Training Grade(訓練級)」の文字がわざわざ追加してあるということは、エニスで販売されているのはマッチグレードよりも品質が落ちる練習用弾なんだって意味だと思えるのだけれど……。

チャンヤン弾のエニスでの販売価格は、RWSやH&Nの「マッチ弾」よりも高い1900円という価格がつけられている(500発入の缶・1個あたり)。これも、RWS/H&Nの品切れを受けての「緊急値下げ」をしての値段ということだから、元はもっと高かったということだろう。その値段で、マッチ弾ではなく練習用弾しか買えない、というのもなんとなく心情的に納得が行かないというか……。実際に撃ってみた結果が、「性能的にはRWSやH&Nのマッチ弾と遜色が無い」ってことが確認できている以上、文句を付けるなんてのは筋違いな話ではあるのだけれど。

池上ヒロシ

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