Categories: 実銃射撃

国体リハーサル in 岩手

来年の国体開催地となる岩手。いきなりぶっつけ本番で全国規模の大会を開けってのも無理な話なので、開催年の1年前にリハーサル大会を開くのが恒例になっている。リハーサルなので本番の国体に出場する凄い人たちの他にも、私みたいな有象無象の社会人射手にも広く門戸が開かれている。そのため大会の正式名称は「全日本社会人ライフル射撃競技選手権大会 兼 第71回国体ライフル射撃競技リハーサル大会」という、やたらと長ったらしいものになる。このエントリーの表題では「国体リハーサル」と書いてるけれど、実際には参加者のほとんどはこの大会のことを「社会人」と呼ぶ。
 

会場となるのは、岩手の中でも最北端、ほとんど青森と秋田との境目あたりにある八幡平というところ。2年前の春に廃校になった中学校の施設を利用している。ずいぶんと歴史を感じさせる立派な校舎だった。なんでもスキーでは名門らしく、卒業生の中にはオリンピック金メダリストまでいるのだとか。
射撃場は仮設のプレハブだが、中に入ってみれば立派なものだ。射座から標的方向を見たところ。国内で開催される射撃大会の中では最もグレードが高い「国体」を開ける場所ということで、最新式の電子標的、最新ルールに則った高さ・広さの机が設置してある。
こちらは選手控室 兼 表彰式会場。学校だったらアリーナとか体育館とかあるんじゃないかと思ったら、なんでも体育館は耐震検査で危険であるとされて学校が廃校になる以前から既に使用禁止になっていたとのこと(盛岡タイムスの記事)。あたりを見渡しても見当たらないということは、おそらくもう取り壊された後なのだろう。他に前述のとおり射撃場や銃器検査会場などが仮設のプレハブ設備となっている。なお、校舎の中には大会に関連する事務を行う部屋とトイレがある。

多くの県では、参加者は県ごとにグループとなっていて、現地までの足だとか宿だとか参加プログラムの配布だとか参加賞となる粗品の配布だとかを一括して行うことが前提となっているのだけれど、東京都は射撃人口が多いこともあって私みたいな「ぼっち参加者」が珍しくない。まあ、現地までの足なんか自前でなんとかなるし、宿だってテキトーなところに泊まるか、いざとなれば道の駅で車中泊すれば済む話。ちょっと困ったこととしては、参加プログラムとか粗品だとかを受け取れないという事態が起きることだ(結局、未だに受け取ってない)。

まあ、粗品なんかはどうでもいいのだが、誰が代表者なのかがどうもはっきりしていないために大会進行上必要となるいくつかのことが東京都だけすっ飛ばされるなんてことも起こるのは、もしかしたら本当はけっこうマズイことなのかもしれない。例えば前日に行われる監督者会議、東京都からは監督は参加していない(というか監督って誰なんだろう)ので欠席だったらしい。「スキーだったら、これ東京の選手全員出場できなくなるんだけれどねー」とか受付のところにいたスタッフのオジサンに言われたりした。なんでスキー?とその時は思ったのだけれど、この地域がスキーではとにかく名門で凄い選手も大勢いるってことを後で知って納得。あの受付のところにいたオジサン、実はスキーの凄い選手だったりするのかも。全国大会とか、もしかしたら世界大会への参加経験も豊富だったりするのかもしれない。

世界レベルでのトップシューターの一人、松田知幸選手。ワールドカップで金メダルを量産、世界選手権でも10mと50mピストルの両方で優勝するなんて偉業を成し遂げたこともある。オリンピックでメダルを取れてないのが射撃界の謎。

せっかくなのでトップ選手のフォームとか使用銃なんかを見ていこう……と思ったら、上位選手の多くは私と同じ第一射群だったため写真を撮れず。でも松田知幸選手と、広島の森川清司選手は第2射群だったので存分にチェックできた。この日のために望遠レンズも手に入れたから、前みたいに広角で撮ってトリミングした写真とは一味違うよー!
 

松田選手の射撃フォーム。足の位置は標的に対してほぼストレート。若干後傾して胸を引っ込めるみたいにして背中を少しだけ丸め、アゴは少し上げ気味。左手はジャージの上着じゃなくてパンツの方のポケットに入れているけれど、ポケットの位置は通常の位置よりかなり前に来ているように見える。ジャージのサイズは、見た感じずいぶんダブダブだ。使用銃はモリーニCM162Eの新型の「TITAN」。もっとも、新型といっても発売になったのは2011年頃だからけっこう経ってはいるのだけれど。
このモリーニTITAN、シースジャパンさんの話では、素材と色が変わっただけで構造にはなんの違いもないが、シリンダーを支える本体部分の基部に弱点があり、銃を下ろすときに机に叩きつけるようにすると、その衝撃でエアルートにクラックが入ってしまう欠点があるとのこと。銃番号が入っている部分の破損なので、単純に新しい部品に交換すればOKというわけじゃなく、同じ銃番号の部品を発注して壊れた部品を送って送り返してもらう、という非常に手間がかかる話になり、何ヶ月もかかってしまうのだとか。
こちらは、本戦1位通過の森川清司選手。広島県警の機動隊所属なのだとか。名前で検索して出てきた記事には、銃は右手で持ち、照準するのは左目で行う変則フォームで頑張っているなんて話が書いてある。後ろから見てるだけだと射撃メガネのレンズ位置とか見えないんで気が付かなかったけれど、確かにグリップのパテ盛りとか見るとそれっぽい……?
森川選手の銃はステイヤーLP10E。2009年に「エレクトリック・トリガーなのに、グリップの3D角度調整ができる」ということで華々しく登場したのだけれど、やたらと故障が多いということで悪評が先に立ってしまった銃だ。今は改善され、トラブルはほとんど起きなくなっている……と、やはりシースジャパンさんに聞いた。グリップの手のひらが当たる部分に大量にパテ盛りしてあるのは、おそらく効き目を右から左に変更するにあたって、フォームをできるだけ変えないままで銃の角度を右方向にシフトする必要があったからではないかと思う。

国体リハーサルといったら、楽しみの一つが物販スペース。特に「来年の国体のグッズ」が先行発売されるのが恒例になっていて、マスコットキャラがプリントされたTシャツとかタオルとかピンバッチとかが手に入る絶好の機会となっていたのだが……。

なんと、国体グッズの物販はゼロ! これは予想外!
 

国体グッズ販売ブースの変わりというか、本来ここらへんで売ってるだろうと思われる場所は飲み物・食べ物の無料ふるまいゾーンになっていた。
見た目はぜんざい以外の何者にも見えないのだけれど、「へっちょこだんご」という南部地方の郷土料理なのだとか。ググって出てきた情報によると「たかきび粉、もちあわ粉、いなきび粉をそれぞれ丸めて中央をへこませただんごを、煮立った小豆汁に入れた雑穀料理」とか書いてあるが、そんな凝ったもんには見えないのだが……?
他には銃砲店の出張販売ブース。ライフルショップエニスシースジャパンの2つのブースが出展されていた。特価品販売もあるのだけれど、「めぼしいものは先日の国体でだいたい全部売れちゃったからねえ」なんて話も。

いちおう私の結果は、本戦542で12位。なんか全体的に妙に点数は低く、550点台後半を撃ててればファイナルに残れるという、「あれ、それって普通に撃ててればイケるんじゃね?」というレベルだった。もしソレができてれば松田選手と並んでファイナルを撃つという、なかなか人に自慢できる体験ができてただけに、不甲斐ない結果だったのが残念。

とはいえ、ここしばらく悩まされていた「撃つに撃てない病」をなんとかしようと、「10発をまとめて撃つ」「狙うようで狙わない、狙わないようで狙う」練習を1週間ばかり繰り返したおかげで、狙って狙って狙えなくて下ろすの繰り返し地獄からはなんとか脱出できた。たまにでる飛ばしがなんとかなれば、(この大会ですら)上位を狙える点数が撃てそうなんだけれどな……。

池上ヒロシ

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池上ヒロシ

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