とりあえずネットで入場券は買ってあったのだけれど、予想以上に会期が短く「今日行かなければ、もう行けない」という状況にまで追いつめられたので、平日ではあるけれど(酷く無茶な納期の仕事を締め切り前に納品するという離れ業を実現した直後だったこともあり)、上野まで「蒼樹うめ展」を見に行ってきた。
 

上野の森美術館ってどこかと思ったら、上野公園に入ってから左方向、野球場の横の細い道をずーっと抜けてった先なのね。こっち方面に来るのって初めてだわ。

秋の上野公園は、銀杏の匂いでいっぱい。「銀杏」をそのまま英語にすると「シルバー・アプリコット」。蒼樹うめさんが主催してる同人サークルの名前も「アプリコット+」。これを狙ったのか!? まさか、こんなウンコめいた匂いをイメージされたサークル名のはずがあるものか。

前にもどこかで書いたことがあったと思うけれど、私は昔、自作の「ひだまりスケッチ」の同人誌を、おそらく蒼樹うめさん本人にお買い上げになっていただいたことがある。

アニメの一期が放映終了したころだったと思うが、都立産業貿易センターで開催されたイベント(「らき☆すた」と合同だったと思った)に自宅プリンターで作ったコピー誌ならぬプリントアウト誌を持って参加した。ファンジンというよりは、「アニメの元ネタ解説本」に近いシロモノではあったのだけれど。やけにその場に似合わない小柄な女性がその本を見て、「あ、あの、これ、ひだまりの本、ですか……?」と聞いてきたので、はいそうですと返答したところ、一冊購入して頂けた。

さて、このイベント、後から、「どうやら、作者本人が来ていたらしいぞ!」と話題になった。誰もが描けるらくがきボードみたいなものが設置されていたのだが、その中にどうみてもホンモノとしか思えない絵が混じっていたというのだ。

そのときは、あー、そんなこともあるのねーとしか思わなかった。この2つが結びついたのはそれからさらに後になってから。「ひだまりスケッチ」のDVDを購入し、オーディオコメンタリーを再生したときのことだ。オーディオコメンタリーとは何かってことをいちおう説明すると、副音声に、出演声優やら、たまに監督とかが出てきてグダ話をしてる様子が収録されているというもの。そこに、作者である蒼樹うめさんが出演声優に混じって登場した。……正確にはアニメ作中で、「作者の自画像」とされている小動物の声を当てていたので、ご自身も「出演声優」ではあるのだが。

「あ、あの、蒼樹、うめです……」

あ!!! この声、聞き覚えがある! あの時、本を買ってくれた小柄な女性だ、間違いない!

作り声であった小動物声では分からなかったけれど、こうやって素の声を聞けばもう間違いようがない。たしかにあのときの女性だ。自分が描いてきたマンガが人気作になって、アニメになってさらに人気が出て、ついにはオンリーイベントなんかが開かれるようになったと聞いて、自分自身でそのイベントに足を運び、そこで頒布されていた「ひだまり本」をとにかく全部購入したのに違いない。

なんていい人なんだ……!

それ以来、私はもうずっと、蒼樹うめ先生のファンである。

展覧会の内容は、基本的には代表作である「ひだまりスケッチ」と「まどか☆マギカ」関連の絵がほとんどである。デジタルで描かれているので展示されているほとんどはいわゆる「原画」ではなく、高品質出力されたものだ。

とはいえそれだけではなく、小学生の図工や学生のころに描いたデッサン、細かくビッシリと余計なことまで書き込まれたアイデアノート、ラフ原画や珍しい肉筆原画(アナログ絵、って呼ばれ方してましたが)などの展示もある。他作品の版権絵やお酒のラベルなんかも最後の方に少しだけ展示されていた。

アニメ企画展示らしいものといえば、作中に登場するアパートの部屋を再現した一角があったりするのだが……。印象としては、「随分と広いな!」ってものだった。玄関入ってすぐ右がキッチン、左がトイレとお風呂、奥はそのままワンルームなのだが、8畳ワンルームってのは「高校生の下宿」としてはかなりの広めだよね?

上記の代表作二作で主演した声優さん二人と蒼樹うめ先生本人によるガイド音声も聴き応えがある。ふつうこういったガイド音声って、一作品につき長くてもせいぜい数十秒~1分程度なのだけれど、しゃべるしゃべるしゃべる、ほとんど3~5分くらいしゃべりっぱなしである。皆さんそれを聞き終わるまでその場を動かないので、入り口近くからもう人が滞留しまくりである。

客層がけっこう幅広かったのも印象的だ。私みたいな「オタクっぽい男」が一番多いといえば多いのだけれど、女性や親子連れ、いかにも業界人っぽい風貌のオジサンとかもちらほら。平日の午後ということもあって特に並ばずに中に入ることはできたのだけれど、上記の理由もあって中は「押し合いへし合い」にかろうじてならないで済んでるくらいの人混みではあった。土日なんかはかなりキツいことになるそうで、まあ、イベントとしては「大盛況で大成功」って言っていいんじゃないかと。

とまあ、そんなこんなでけっこう楽しんできた。グッズ販売スペースはまるで同人誌即売会の1サークル分みたいな、ショボい机で売り子さんが並んで注文受けて梱包してお金と引き換えに渡すといった具合のもの。展覧会の物販スペースって、なんていうかこう、もっと買わせる気満々の広くて明るくてオシャレなスペースだったりするものじゃないのか……? でも売れ行きは上々どころの騒ぎじゃなくて、基本的には「図録以外は、まず買えない」に近い状態だったりする。

この図録、高いだけあって印刷の質もいいし掲載されている対談やインタビューなんかも内容が濃い。しばらくはコレを読んで眺めるだけで楽しめそうだ。とりあえず、明日から岩手まで(ピストルの試合で)遠征なのだけれど、宿泊先で寝る前の時間を潰すのに良さそうなんで持っていくつもり。

池上ヒロシ

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